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劉皇国戦記  作者: リューク
第三部海賊平定戦
42/78

戦いの行方

指定日を間違えて遅くなりました。

 

帝国暦268年11月

 この日の正午をもって、会戦とされていた戦いが銅鑼の音と共に開始された。

 まずは、相手との言葉合戦から始まり、矢合わせ、そして兵をぶつける。

 これが会戦における最初の謂わば作法の様なものだ。

 もちろん、両者ともに少しでも被害を相手に強いて有利に戦を勧めようと本気の戦いである。

 

 兵をぶつける段階になって、国忠は予め隠していた予備兵力に対して指示を送っていた。

 

 「これで、相手は混乱するだろう。それが奴らの最後だ」

 とは、国忠が傍仕えの武官に発した言葉だ。

この時、国忠は、開戦前に部隊を北に2千展開していた。

 その部隊は、待ち構えるべき場所に辿り着くと、準備を始めたのだった。

 その準備したものをどのタイミングで使うか、というのが先ほどの使者に預けた内容だ。

 

 一方その頃、準備を終えた国忠軍の予備隊は、現場待機で指示を待っていた。

 この一戦、自分たちが成功するかどうかで事態が変わると言っても過言では無い状況だった。

 彼らはじっと戦場を見つめ、敵が射程圏内に入るのを今か今かと手ぐすねを引いて待っていると、突然、国忠からの伝令が走り込んできた。

 

 「伝令!敵が本陣に接近!至急これを救援せよ!本陣を防衛せよ!」

 

 「なに!?本陣に敵だと!?ここを通らずにどうやって本陣をついたというのだ?」

 予備隊の隊長は、伝令の告げた事の意味が解らず聞き返していた。

 それもそのはずである、この南陵原野は鬱蒼とした丈の長い草が大量に生えており、大部隊が移動できる場所が限られているのだ。

 その中でも特に大きな通りに面した場所に伏していた予備隊は、敵がここを通らずにどうやって本陣に急襲を仕掛けたのかまったくもって検討が付かなかった。

 こうなっては、現場の判断で決める訳にもいかず、伝令の言葉を信じて本陣に戻るという選択肢しか彼らには無かったのだ。

 

 「何をやっとるか!?敵の策にまんまとかかって戻って来るとは何事か!?」

 

 「はっ!面目次第もございません」

 彼らが本陣に戻ると、本陣急襲というのが敵の虚報であった事がわかった。

 だからと言って今からまた兵を伏す場所を探すのも、準備をする事もできないので、仕方なく合流する事になってしまったのだ。

 

 一方、策を見破り、逆にこれを操ったのは、王洪その人であった。

 王洪は2千程の部隊が北に向かったという報告を聞くと同時に、敵がどのあたりに兵を伏するか検討をつけていた。

 そして、そこに国忠軍から以前かっぱらっていた鎧兜を3人の兵に着せて、偽の伝令に仕立て上げたのだ。

 

 「王洪様のお示しになられた場所で敵を発見し、ご指示通り撤退させました」

 

 「うむ、ご苦労、下がって休んでおれ」

 そういうと、報告に来た3人は一礼して出て行くのであった。

 

 「虚報ですか、よく兵の伏している場所がお分かりになられましたな?」

 

 「なに、この辺りの地理で知らぬ場所は、ほぼ無いと言って良いでしょう。特に兵を伏するのに使える場所は良く知っております」

 

 「なるほど、確かに地理に明るいと便利ですからね」

 俺がそう言うと、王洪は鷹揚に頷いた。

 そして、目の前に広がった地図を見ながら、作戦を話し始めたのだ。

 

 「これで進路上の伏兵は全て片付いたでしょう。後は進軍ルートですが、私が右翼を、中央を林冲殿が、左翼を関勝殿で挟み込むように突撃しましょう。そして、―――――」

 この戦の肝になるであろう部分の説明をもう一度確認すると、各自、自分の部隊へと散っていった。

 

 全軍に指示が通ると、部隊を率いて右左翼が進軍を始めた。

 ちなみに兵数は、右翼1万、左翼5千、中央1万という変則的な布陣だ。

中央を厚くしたのは、主に林冲を守るためだ。

彼はどうしても先頭で敵陣に突入したがるので、兵数を多くすることで少しでも守れるようにしたのだ。

左翼の人数が少ないのにも一応理由がある。

左翼が展開する場所は、この原野の動物たちの水飲み場として使われている湖がある。

そのせいで、足場がぬかるんでいるので、あまり多くの兵を送っても素早く展開できないのだ。

ちなみに、左翼は靴の裏から釘を刺して、スパイクの様な状態にしている。

これで多少の泥濘もどうにかしてくれるだろう。


さて、俺は櫓に登って、高みの見物と洒落込もうかな?

今回の戦は会戦になった時点でこちらの勝利はほぼ確実なので、俺は後ろでふんぞり返っていられるのだ。

なんで、確実かって?それは、始まってからのお楽しみだ。


そんな事を考えていると、早速左翼と右翼に動きがあった。

左翼はこちら5千に対して敵は7千で丘の様になっている場所に即席の柵を立てて、防戦している。

そこに対して、関勝率いる5千の部隊が突っ込んで行ったが、即席とは言え、高所にある柵だ、敵も上手く使いながら、こちらを寄せ付けない。

それに対して、関勝は力攻めを諦めて、包囲する形で展開し始めた。

この包囲する動きに対して、相手は、弓と予備兵を投入して、牽制して展開させない様にしている。

正に一進一退と言った形だ。

ただ、こうなると、我が軍の思う壺だ。

相手はこちらの展開する兵力を多目に見積もったせいで、2千の余剰が関勝によって引き付けられている。

これで中央や右翼は多少楽が出来るというものだ。


次に右翼側だが、中央の兵数から考えるに、右翼に回っているのは、1万程度と言ったところだろう。

なぜこんなに数がハッキリしないのかというと、敵は自陣近くで小規模部隊を複数展開し、伏兵戦術できたからだ。

さしずめ、十面埋伏の計と言ったところか、ただこの計略は正直もっと早い目に展開しておくべきだったと言える。

バレバレの伏兵は、各個撃破の対象にしかならない。


それを証明する様に、王洪は、伏兵出来そうな場所に近づくと、矢を射掛け、出てきた敵を槍で突くという至極真っ当な方法で伏兵を潰していった。

これを見た敵の指揮官は、不味いと思ったのか、部隊を集め始めたが、それが致命傷になった。逃げ惑う部隊を大々的に集めたのだ、指揮官の居場所が丸わかりとなってしまい、そこを王洪の率いる兵に数の暴力で圧殺してしまった。

右翼が完全に崩れたように見えたので、恐らく指揮官が打ち取られてしまったのだろう。

殆ど組織立って行動できる兵が居らず、蜘蛛の子を散らしたように逃げ惑っていた。

これで右翼はほぼ終了と言って良いだろう。

後は、中央を突破すれば、海賊の平定がほぼ完了する。


評価、感想、ブックマークよろしくお願いします。

そろそろストック尽きてきました。

更新が今週末~来週位で不定期になりそうです。

更新時間は17時に固定しますので、その時間上がってなかったら次の日とかになります。

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