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劉皇国戦記  作者: リューク
第二部江南地方制圧戦
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政変②


 呂延将軍が帰って来た日、宰相松延はやたらと落ち着かないでいた。

 

 「もっとも最悪な事態になった。呂延が帰ってくるまでに決着をつけたかったのに……」

 彼のその眼には焦りにも似た色が見えていた。

 そして、彼は人生で最悪の一手を打つこととなった。


 「こうなったら、呂延が指揮権を得る前に李鐸を討伐してしまうぞ!全軍攻勢を開始しろ!」

 

 

 同時刻、李鐸邸では、呂延が皇帝に謁見していた。

 

 「呂延よ、宰相松延が反乱を起こした。誠に悲しい事ではあるが、討伐をしてほしい」

 

 「はっ!身命を賭してあたらせて頂きます」

 そういうと、呂延は兵の指揮をしていた守備隊長から軍の編成について確認に出て行った。

 

 「本当に、これで良かったのかな……」

 皇帝は誰も居ない部屋で一人そう呟いていた。

 これで宰相派が居なくなれば皇帝ですら李鐸に逆らえなくなってしまうのだ。

 だが、囚われの皇帝にはどうする事もできないのも事実であった。

 そんな事を考えていると、屋敷の外が騒がしくなってきた。

 恐らく呂延と松延の戦いが始まったのだろう。

 


 「なんとしても陛下を手に入れるのだ!邪魔する者は皆殺しにせよ!」

 そういって松延達は屋敷の周りを囲む軍に突撃を開始した。

 

 「逆賊松延達を根絶やしにしろ!攻めてくるものは誰あろう敵だ!囲んで殺せ!」

 数の上で有利に展開している宦官派の兵が囲み圧殺しようとしてくるのに対して、宰相派は密集しての一点突破の形を作っていた。

 この戦いはどこまでいっても皇帝の奪い合いである。

 どちらが最終的に皇帝を手にしているかで流れが変わるのでここでの攻防が全てと言って過言ではない。

 

 それを承知している両軍はどちらも一進一退の攻防を続けていたが、数に劣る宰相派が徐々に押されるようになってきた。

 

 「踏ん張れ!何としてもここを突破せねばならんのだ!」

 松延は必死の形相で全軍を叱咤して戦わせていたが、数の不利は覆す事が難しく、また指揮官も不足しているため各所で押し込まれて行く形になってしまっていた。

 

 「いいか!逆賊の鼠どもを一匹残らず包囲するのだ!右翼!もっと押し上げろ!相手はもう死に体なんだ!遠慮なんてするな!」

 そういって呂延が檄を飛ばすと、右翼が前進し始めた。

 この右翼の前進がきっかけとなり、宰相派の兵は総崩れとなり、ほぼ全ての兵が包囲される形となった。

 包囲を完成させた呂延は、宰相派に対して降伏勧告を行うのだった。

 

 「宰相派の全軍に次ぐ!貴様らは負けたのだ!大人しく縄に着け!降伏した者には陛下から寛大な処置が下ろう!」

 この勧告と完全に包囲されたことで、宰相派の兵が続々と敵に寝返り始めたのだ。

 

 「ええい!騙されるな!寛大な処置なぞありはしないのだぞ!全軍最後まで戦え!」

 そういって、顔を真っ青にして文官や武官達は怒鳴り散らしていたが、兵たちは彼らの制止を聞かず続々と投降するのだった。

 

 「これで全てか?では残ったものは全員処刑しろ!」

 この合図と共に、包囲していた全軍から矢が降り注ぎ、宰相派は全軍針鼠と化すのだった。

 

 それから宦官派による首実験が行われていたが、宰相の松延の首が無い事に気づいたのは、戦闘終了から5時間が経過したころだった。

 

 「なに!松延の首が上がっていないだと!どういうことだ!」

 

 「申し訳ございません。恐らく完全包囲される寸前に逃れた兵の中に松延が混ざっていたものと思われます」

 李鐸の怒鳴り声にも涼やかに謝辞を述べる呂延には、さしもの李鐸もそれ以上怒る事ができなかった。

 

 「松延めが逃げおおせてしまってはまた反乱を起こすぞ、どうするのだ?呂延将軍」

 

 「そこは、某が考える所ではございますまい。李鐸様にお任せいたします」

 呂延としては、逃げた鼠探しなど御免こうむると問題を李鐸に突き返したのだった。

 それを聞いて李鐸も忌々しい表情にはなったものの、このまま話すのも不味いので話題を変える事にした。

 

 「とりあえず、反乱は鎮圧できた。陛下から後ほど恩賞の沙汰があるだろうから一度着替えてこられよ」

 それを聞いた呂延は「ではお言葉に甘えて」と言って自宅にへと戻っていくのだった。

 

 「そろそろ、呂延とも手切れにせねばならんかな……」

 呂延が出て行ったあと、そう誰にともなく李鐸は呟くのだった。



 この一連の騒動が俺の元に届いたのは、江中城を攻略し終えてからだった。

 江中城は包囲と同時に内部反乱が起こって混乱し、そこに全軍で突撃して城を奪取したのだ。

 それを傍で見ていた関勝は、

 

「どこが、『反乱が起こって』ですか、『起こした』の間違いでしょうに」

と苦笑しながら俺に言ってきたのだった。

そんな関勝とのやり取りをしつつ、しっかりと城を押さえた俺は、江中城の守備や人員の配置をある程度纏め、王信将軍を城主に任命して守りを固める様に支持をした。

その後、昌への帰還準備をしていると、一人の兵が執務室に報告にやってきた。


「宗谷様、例の人物が話したいと言ってまいりましたがいかがいたしましょうか?」


「ん?あぁ、やっと話してくれる気になったか。わかった、今から行く」


そう答えると、兵は俺の前を歩き、地下牢まで案内してくれた。



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