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劉皇国戦記  作者: リューク
第二部江南地方制圧戦
21/78

奇襲


 凌城を制圧した俺たちは、城内の補修と市民の安全確保に奔走した。

 その過程で、何人かの兵が略奪や強姦等をしたという話があったので、事の真相を調べさせてもいた。

 

 「はぁ……、間違い無いのだな」

 俺は報告書を読んでため息が出てしまった。

 今回略奪や強姦をした者は全部で100人いた。

 3千中の100人である。

 かなりの割合で居る事が分かってしまいため息が出てしまったのだ。

 古今、兵が動けば無用な人間の死や不幸を招くと言われているが、ちょっと多すぎる。

 せいぜい10~50人の範囲ですむだろうと予想していただけに辛いものがある。

 

 「仕方が無い、軍規を乱したのだ。全員処刑して持ち出した財産については返却を襲われた娘には賠償金を多めに支払う様に取り計らってくれ」

 俺はそういって、今回降伏してきた文官に命令するのと同時に逮捕委任状を渡した。

 文官は委任状を受け取りながら、やや躊躇いがちに聞いてきた。

 

 「本当に処刑でよろしいのでしょうか?この場合、普通ですと特に沙汰無しで終わりなのでは?」

 

 「確かにこれまでならそれで通じただろうが、我が軍は違う。略奪や強姦をする者には厳罰を与え、忠勤に励む者には褒美を与えなければならない。これを守らなければ我らは野盗と同じだ」

 俺がそういうのを聞いて、文官は一礼して出て行った。

 

 その日の午後、逮捕された全員が街の広間に集められた。

 その場で俺が罪状を読み上げ、食べ物を少し盗った等の軽犯罪については罰金刑か禁固刑を、強姦、略奪等の重犯罪にはその場で処刑を言い渡した。

 

 「我々に協力して頂いた凌の街の市民の皆さん、この度はまことに申し訳なかった。今回事件を起こした者の処遇は今さっき見て頂いたとおりである。今後この様な事は一切させぬよう厳正に対処し、皆さんの協力に報いる事を約束します。なお今回被害に遭われた方々には、こちらから通常よりも多い目の賠償をさせて頂きたい。この賠償と処罰を持って今回の事を許して頂けるとありがたい」

 

 俺がそういうと、ガヤガヤと一瞬騒がしくなったが、処置に対する歓迎の声が響いた。

 これでどうにか市民は敵に回さなくて済んだ。

 後は残った兵士への恩賞をはずんでやれば文句は出ないだろう。

 

 制圧してから3日後、諸々の引継ぎ、や配置を終え、凌城で募兵した兵を編入して約4千に膨らんだ軍を指揮して次の目標に出発した。

 次の目標は、摂南城である。

 摂南は東部地域につながる地域で、ここを押さえておかないと、青巾党の侵入を阻むことができない。

 流石に現状で2勢力を相手に戦争は難しいので、拠点を押さえて相手の侵入を阻止する方法をとるしかない。

 そう言った意味で、ここは重要な拠点の一つと言えるのだ。

 

 摂南城までは、約4日の道のりだった。

 到着したのが夕方だったので、城から1キロほど離れた場所で野営をする事にした。

 

 城攻めを始めたのは翌日の朝からだった。前回と同じように弓を一斉射してから少し引いて様子を見たものの、白煙も黒煙も出てこなかった。

 

 「まずいな、攻城戦をしないといけないか……」

 

 「兄貴、兵も合計4千になったんだから摂南城くらいならどうとでもなるんじゃないのか?」

 俺が悩んでいると関勝が能天気に声をかけてきた。

 

 「確かに兵は増えて4千だし、摂南城は要衝であるものの、小城だから落とせなくはないんだ。だけど、その為に兵を失っていては意味が無いし、攻囲するにも数が足りない。どうにか被害を減らしたいものだが手が無いんだよ」

 俺がそこまで言うと、関勝が自信あり気な顔で見てきた。

 

 「兄貴、そんな時は俺に任せてくれ。幸い明日は新月の夜だ。俺が手勢を率いて裏の崖を駆け下りて奇襲をかけるよ。兄貴は敵が混乱したらその隙に攻めてきてくれ」

 

 「しかし、それはあまりに危険じゃないか?」

 

 「何言ってんだよ!危険を冒さなければ相手の意表はつけないだろ?いつも兄貴が言ってることじゃないか」

 いや、確かにそう言ったが、あの崖どう見ても角度が60度を超えているぞ。

 俺が止めようとしたが、関勝がどうしてもというので、危険を感じたら中止するという条件で許可をした。

 

 「それじゃ、今晩のうちに出発します」

 そういって関勝は、天幕から出て古参の兵を連れて出発した。

 

 「さて、精一杯援護してやるか」

 

 次の日の朝、早朝から俺たちは攻勢をかけていた。

 できる限りこちらに目を向けさせないと意味が無い。

 

 「宗谷様!本当にこのまま攻勢を続けて良いのですか?」

 そう言いながら苦虫を噛み潰した表情で王信将軍が司令部に入ってきた。

 

 「仕方あるまい、こちらの間者の策が失敗したのだ。関勝を援護するためにも攻勢をかけ続けるしかあるまい」

 昨夜の事は張児将軍と王信将軍には話してあり、この攻勢が必要である事を理解してもらっている。

 ただ、早朝から昼に差し掛かる今の段階で全体の2割が死傷している。

 一般的に言われている壊滅まで残り1割を切っている状態だ。

 それでも攻勢を止めるわけにはいかない。

 そろそろ城から火の手が上がってもいいのだが、と思っていると伝令が走りこんできた。


 「報告します!敵後方で火災が発生したのか黒煙がまって混乱しています」

 その報告に俺と両将軍が立ち上がって命令を下した。

 

 「全軍衝車を前面に出して門を打ち破れ!この戦は勝利したぞ!」

 こうして、全体の2割以上を死傷させたものの、どうにか摂南城を攻略する事ができた。

 

 


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