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劉皇国戦記  作者: リューク
第一部 反乱
18/78

事後処理

一応第一部完結です。

次話から第二部です。


 「これより、昌城防衛の論功賞を行う」

 

 あの防衛戦から帰還して次の日、論功賞を行うために文武の官僚の前で開催の挨拶をした。

 

 「今回の戦功第一位は、張児将軍である」


「報奨として今回率いた新兵2千の指揮権と戦利品から好きな物2点を選び半数を授けるものとする」

俺がそういうと、張児将軍は俺の前で跪いて拝礼した。


「次に戦功第二位は、関勝である。」


「関勝には、褒美として戦利品から1点を選び半数を授けるものとする」

関勝も一歩前に出て張児将軍の少し後ろで拝礼した。


その後も今回の戦いでの戦功第五位まで発表し、褒美を取らせた。

なお、戦功の無かった文官にも明日と明後日で交互に休む事を許可する旨を発した。

 

 「では、これで論功賞を終わる。続いて、この場で今後の方針を発表したいと思う」

 俺がそういうと、式典の厳かな雰囲気とは打って変わって、全員がギラついた目で俺を見てきた。

 

 「今後の目標は、江南省の制圧である。この昌の他にある凌、江中、摂南の三城の攻略を進めていきたい。誰ぞこれに意見のある者は居るか?」

 俺の発言を聞き、文武の官僚が今後の方針を議論し始めた中、一人の人物が手を挙げていた。

 

 「ん?郭仁何か意見があるのか?」

 手を挙げていたのは郭仁という文官だった。

 彼は文官の中でも優秀な人間の一人で、特に文章を作る事に才能があった。

 

 「はっ!此度の三城攻略の前に今一度、降伏勧告を文章で通達しては如何でしょうか?応じるならそれでよし、応じないなら武力を持って攻めるのが宜しいかと存じ上げます。」

 なるほど、拒否したら堂々と攻めろという事か、それなら確かに周囲の反感も少なくなる。

 

 「よし!郭仁の言や良しとする。すぐに降伏勧告文を作成し、送れる様に手配いたせ」

 

 「ははぁ!」

 

 「他に意見のある者は居るか!?」

 郭仁の案に全員が賛成したのか、誰も手を挙げないのを見て俺は対外政策を決定した。

 

 「では、三城については郭仁の案を中心に動くこととする。武官は兵の募兵と調練をしっかりと行う様に、文官は劉徽を中心として遠征に必要な武器、兵糧の調達をいつでもできる様に準備せよ!」

 

 「次に内政についてである。今後の方針は、食料の増産を目標に掲げたい。特にこの昌の街は、商売は盛んだが、稲作が必要最低限しかないので、とてもではないが兵糧が足りない!そこで私からの案だが、屯田制を採用したいと考えている」

 俺の発言に文武の官僚たちは顔を見合わせていた。

 その様子を俺が不思議そうに眺めていると、劉徽が耳打ちしてきた。

 

 「兄さん、屯田制とは何ですか?聞いたことのない制度ですので皆困っています」

 どうやら屯田制という制度はこの国には無いらしい。

 そら無いものを理解しろと言っても無理があるので、制度の仕組みを教える事にした。

 

 「屯田制とは、簡単に言うと兵が田んぼを耕すのだ。いくら調練中の兵と言えど一日中訓練等しても意味はあまりない。そんな事をするくらいなら、午前と午後で調練と田んぼや畑仕事とわけてしてしまうのだよ。そうすれば兵は自給自足できるから兵糧の負担が少なくなる」

 俺がそこまで説明すると文武の官僚は納得したのか頷いていた。

 その中から一人の文官が手を挙げて発言をしてきた。

 

 「そこから税を取ればこちらも潤うのではないでしょうか?」

 税を取る事が仕事なのでこの文官の発想は理解できる。

 

 「いや、税は極力取らないようにすべきだ」

 が、俺はあえて否定した。

 

 「それはなぜでございますか?」

 

 「今後彼らには専属の兵士になってもらおうと考えている。我々の兵力は少ない、現状のままではどうやっても太刀打ちできないだろう。だが、兵の練度だけでも上げて維持できれば、多少の数の差を跳ね返す事ができる。ただ、その為には過剰に兵役を負担してもらわねばならない、だから彼らには税を免除もしくは他よりも遥かに低くするのだよ」

 そこまで言うと、発言してきた文官も納得したのか引き下がった。

 

 「後、この屯田制以外にも新しい農法を試したいと考えている。まずはどこかで実験をしたいので、農地を借り上げて欲しい。農地の所有者には、実験で損失が出た場合には税の免除もしくは食料の提供を行う事、成功した場合は、例年通りの税で上がった分はその農家に与える事を約束してほしい。この条件で手を挙げる農家からより大きい土地を持っている者を選んで行うよう手配してほしい。詳細は農地が決まり次第追って伝える。以上を持って解散とする」

 そういうと、文武の官僚はすぐさま自分の仕事に取り掛かった。

 

 これで、現状打てる手は打った。後はどうなるかは、三城の動向によるところだろう。

 

 三城から降伏勧告文の返答が着たのは、それから1週間後の事だった。

 

 「三城全てが降伏拒否したか……」

 尹魁から手渡された書面にはそれぞれの太守、城代からの降伏拒否の文章が届いていた。

 確かに現状の戦力では城攻めは厳しい。

 

 「致し方ありますまい、こちらは反逆者で戦力も何もない状態ですから相手も様子を見るでしょう」

 

 「できれば双方に無駄な血の流れない解決になってほしかったが、仕方が無いか……」

 戦力的には厳しいものの、城攻め自体はどうにでもなるし、手に入る。

 ただ、血を流したくなかったのが一番の理由だ。

 今回の事で双方に血が流れてしまえば恐らく青巾党や帝国の介入を許してしまう。

 そうなったら血で血を洗う泥沼の戦場が出来上がってしまうし、そんな戦いをしては戦力的にも勢力的にも弱小のわが国では詰んでしまう。

 できたら、武力制圧はしたくなかったが、致し方ないか……。


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