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劉皇国戦記  作者: リューク
第一部 反乱
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夜襲②

次の話で第一部完結です。



 周りから火の手が上がるのを確認したのち、俺たちは野営陣地に侵入した道を逆走していた。

 外に出れば火の手を合図に1千の夜襲部隊が来る。

 俺たちは必死に走って出口を目指した。

 途中俺たちの行く手を阻む敵兵が出てきたが、関勝の鉄棍の一振りで屠っていく。

 散発的な戦闘ならどうにかなると考えていると、先行している兵が叫んだ。

 

 「出入り口に敵集団!数多数!」

 その報を聞いて心臓が飛び跳ねた。

 ここまで上手くいっていたのに、あと少しという所で敵に踏ん張られてしまった。

 俺がどうしようか悩んでいると関勝が叫んできた。

 

 「兄貴!ここは俺を先頭に突っ込まさせてください!血路を開きます!」

 そういってきたが目の前には明らかにこちらの倍以上の集団が居た。

 流石に無理だと言おうと関勝を見たが、関勝はニヤリと笑いかけてきたのだ。

 俺はその表情を見るや関勝に命令を下していた。

 

 「関勝の案を採用する!突っ切れ!」

 俺の命令が聞こえるや否や関勝は飛び出し、敵に突っ込んで行ったのだ。

 俺たちは必死に後に続いて走った。

 走っている最中に関勝に目をやると信じられない光景が広がっていた。

 先頭に居る関勝を殺そうと右から、左から敵が襲ってきたが、関勝は右から来る攻撃を鉄棍で抑え、左の敵を蹴り飛ばした。

 そして、足を着地させるのと同時に抑えていた鉄棍を跳ね上げるのと同時に相手の顔を吹き飛ばしたのだ。

 顔を吹き飛ばすのに少し体が泳いだところに左から相手が襲い掛かってきたが、鉄棍を背中でくるりと回すと、左の敵の腹を突き破った。

 そこからは、上から来る敵には鉄棍で受け止め、鉄棍で強打し、足を狙ってくるものには狙われた足を上げて避けるのと同時に顔面に蹴りを入れ、槍で突いてくる相手には鉄棍を回転させて槍を弾き飛ばしながら一突き入れと縦横無尽に暴れまくっていた。

 

 そんな関勝の無双劇をただただ眺めながら走った俺は、ついに出口に着くことができた。

 出口に着くと関勝が足を止め、叫んだ。

 

 「俺が殿を務めます!兄貴は先に行ってください!」

 そういうと、門の前で振り向き、後ろから追いかけてくる敵兵の目の前でまた叫んだ。

 

 「この赤髪鬼の関勝の鉄棍の餌食になりたい者は追って来るが良い!地獄の鬼に合わせてやるぜ!」

 叫ぶのと同時に、関勝は鉄棍を相手の目の前ギリギリのところで一振りしてみせた。

 これには流石の帝国兵も度肝を抜かれ、足を止めてしまったのだった。

 この一瞬の隙を関勝も見逃さず、すぐさま方向転換し、俺たちの後を追ってきた。

 

 「……はっ!何をしている!追え!追うんだぁ!」

 一瞬呆けた後、敵の百人将らしき人物が大声で叫んでいたが、一瞬とはいえ死の恐怖を味わった兵はすぐには動けず、呆然としていた。

 

 それから10分ほど走ると、暗闇の中から騎馬兵が見えた。

 

 「何者だ!」

 騎兵が大声で誰何をしてきた。

 

 「劉宗谷の一隊だ!そちらは!?」

 俺がそう問い返すと騎兵から今度は幾分か落ち着いた声が帰ってきた。

 

 「太守でしたか、お帰りなさい。上手くいきましたか?」

 

 「あぁ、暗殺と脱出に少し手間取ったがどうにか無事終了だ。騎兵隊はこのまま前進して、敵を完膚なきまで叩き、壊走させよ」

 俺がそう命令を下すと、騎兵隊隊長は、命令を復唱して駆けて行った。

 駆けて行ったのを見送った俺と関勝は、騎兵隊が持ってきた予備の馬2頭にそれぞれ跨り、騎兵隊を追いかけた。

 

 先行する騎兵隊に追いつくと、そこは帝国軍にとっての阿鼻叫喚の地獄と化していた。

 それもそのはずである。夜襲によって混乱して、しかもそれを纏めるべき将軍はすでに死んでいる。

 そうなると、指揮も命令もあったものではなく、敵が伍規模で勝手に動き始めてしまったのだ。

 こうなると壊走までは簡単である。

 

 「全軍撤退!これ以上は持たない!全員逃げろ!」

 と、触れて回るだけで浮足立っている敵は総崩れとなる。

 

 こちらの工作が功を奏し、敵軍の壊走は予想よりも早く訪れた。

 崩れかける軍を再編しようとするたびに騎馬隊が突っ込み指揮官を屠って行くのだ、将兵共に崩れるのは当たり前というものだ。

 敵が完全に壊走し始めたのを見届けた俺は、全軍に停止命令を出し、追撃を止めさせた。

 本当ならここで全滅させたいところだが、いかんせんこちらの兵数が少なすぎる。

 今は逃げ帰ってもらい、再編に時間を使ってもらう方がこちらとしても楽でいい。

 

 「兄貴、敵が置いていったお土産集めてきたぜ」

 そういって関勝が500人率いて敵の置き土産である補給物資を集めてきた。

 

 「流石に2万人にもなると大量だな。これで次の手が早く打てそうだ」

 

 「次の手?帝都にでも攻め込むのか?」

 

 「流石にそんな無謀な事はしないな。帝都の前にまずはこの江南地方の制圧をして、足場固めをしないといけないからな」

 俺がそう説明すると、関勝は納得が言った顔をして、

 

 「てことはまた戦だな。今度はどこと闘うんだ?」

 と嬉しそうに言ってきた。

 どうも勝ち戦で気持ちが大きくなっているみたいだ。

 どこか取り返しのつくところで負けさせた方が良いかもしれない。


 「さて、敵も撤退したし、補給物資も分捕れたから帰るとしますか」

 俺たちは手早く埋葬等の後片付けを済ませて昌城に帰って行った。

 


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