反乱の準備
勅使には次の日の朝には出て行ってもらった。
もちろん、石奉とその一族も一緒にだ。
本当は処刑とかしてもよかったのだが、事後処理が面倒な事になるので、家財全てを保釈金代わりに接収してお帰り頂いた。
今後の方針を説明しなければならないので、尹魁に文武の官僚を集めさせた。
「今回、石奉の件で帝都から沙汰があったのは皆聞いていると思う。帝都は今回の石奉の件を無かった事にするため、私を殺そうとしてきた。また、石奉を太守として続けさせるなど現状が全く見えていない事が分かった。特に石奉の件では、宦官の李鐸が裏で糸を引いているのは明らかである。よって我らは李鐸を討伐するため、挙兵する事になった。ここまでで異論のあるものはこの城から出て行ってくれても構わない。こちらもその事で咎めるような事はしない事を約束しよう」
俺がそう言い切ると、石奉の腰巾着をしていた何名かは出て行ったものの、それ以上は出て行かなかった。
「ここに残ってくれた全員が挙兵に賛成だと考えて良いのだね?」
俺がそう聴くと、全員が一斉に拝礼をして恭順の意思を示した。
「では、これからの方針を伝える。まずは石奉が作った身勝手な法は全て破棄する。次に軍備の拡張を行う。これにはまずは、石奉が不正に貯めていた家財を財源に充てる。次に周辺の太守、城主に反乱に加担するように檄文を送る事とする。以上が当面の方針である。これに意見のある者はおるか?」
基本方針を伝えた後、他の意見が無いか尋ねると、何人か手を挙げてきた。
「失礼して意見を述べます。内政についてはどの様な方針をお持ちでしょうか?個人的には軍備も大切ですが、用水路などを整備する事も長い目で見ると必要かと思いますが」
「うむ、確かに内政は必要不可欠だし、其方の意見は正しい。だが、恐らく2~3週間ほどしたら敵が攻めてくるであろう事は自明の理、まずは軍を整備し、迎撃態勢を整え、撃退したのちに内政に注力する方が良いと考えている」
内政に意見を出した文官に基本方針を伝えると納得したのか一礼して座った。
「では、他に意見は無いか?無いなら以上の方針で動いてもらう。内政は悪法の廃止を行い、軍は募兵と訓練、そして装備を揃えてくれ。以上、解散!」
基本方針が伝わってからは早かった。
その日のうちに悪法廃止の知らせが立て看板になり、周知され、合わせて募兵の知らせが出回った。
次の日からは募兵に名乗りを上げてくる若者や不労者がやってきて、軍は当初千人だったのが、3倍の3千人にまで増えた。
それに伴って、軍の維持費、装備費もろもろが増えて、財務担当の文官の部屋から何度か悲鳴が聞こえてきたのは、気のせいだ。きっと、気のせいだ。
そんな忙しい日々を送っている中、城の中を見回っていると、石奉の腰巾着が辞めた部署で人手の足りない所があるのだった。
このままでは正直、業務に支障をきたすな、うちの従業員ならできるだろうけど、正直復旧作業とかもあるし、俺が居ないせいで超過勤務状態らしいからな……。
どうにかしないとやばいだろうな。
そんな事を考えながら歩いていると、一人の兵士が足早に俺の所に報告に来た。
「門の外に宗谷様の親族を名乗るものが居るのですが、いかがいたしましょうか?」
「親族?名前は何と言っているのだ?」
「劉徽と名乗っています。見た目はまだ少年の様ですが、追い返しますか?」
「ん~……いや執務室まで連れてきてくれ、多分弟だろう」
そういうと、兵士はまた足早に門の方へと走っていった。
さて、劉徽が俺の知っている弟なら、大変心強いのだが、こんなにタイミング良く来るかな?
それから俺は、執務室まで戻って書類を片付けていると、先ほどの兵が連れてきた。
「太守様、劉徽と名乗る少年を連れてきました」
そういって、兵士と一緒に入ってきたのは、まだ成人もしていない幼い顔立ちの少年だった。
ただ、目には興味と知性が合わさった様な爛々と輝く目をしていた。
俺が少年を観察していると、こちらに笑いかけながら「宗谷にぃさん」と話しかけてきた。
「おぉ、やっぱり劉徽か、元気だったか?父さん母さんはどうしている?」
「宗谷にぃさんも元気そうだね。父さん母さんは今も元気に畑仕事をしているよ」
俺はそれを聞いて驚いた。
なぜなら俺は、手代になってから給料をそれなりに貰っており、その給料の半分を親に仕送りとして送っていたのだ。
給料の半分とはいえ、大商家の手代である。農家なら何もせずに暮らしていけるだけの金額だと思っていたのだが、少なかったのだろうか?
「いやいや、あれだけあったら十分過ぎるよ。だって僕も兄さん達もあれから先生呼んでもらって勉強したり、家立て替えて綺麗にしたりしてたんだから。畑仕事だって辞めたら良いのに、『息子にばっかり世話になっていられん』って意地になってやってるだけだよ」
そうだったのか、変な所で意固地になっているんだな、俺の両親は。
「ところで、徽よ今日はどういった用で昌まで来たんだい?」
「兄さん婚約したでしょ?その書簡が届いたからお祝いの品とかを届けに来たんだよ。そしたらなんでか兄さんが太守やってるから門で衛兵さんにお願いしたんだよ」
「あぁ~そういえばそんな書簡送ったな、ここ最近あまりに忙しすぎて忘れていたよ。屋敷には文を書くから持っていきなさいなさい。そして、今日はゆっくり休んでくれ。義姉になる玉麗にも挨拶をしておいで」
そういって俺は家に文を書いて、徽に渡し、自分の仕事をするのだった。
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