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劉皇国戦記  作者: リューク
第一部 反乱
13/78

太守討伐

昌城内

 人々が寝静まったのと同時にある一団が城門前にやってきた。

ひどく焦っているのか、その集団は城門にやって来るやいなや急き立てる様に門番に開門するように怒鳴った。

 

 「おい!早く開けろ!火急の要件で出発せねばならんのだ!」

 それを聞いた門番は、怯えもせず職務に忠実に誰何するのだった。

 

 「申し訳ないが、どこの誰かわからねば門を開ける事は出来ない。名を名乗られよ」

 余程慌てているのか、さっきと同じように石奉は怒鳴ってきた。

 

 「私は太守の石奉だ!さっさとせんか!」

 そう聞くやいなや、門番がニヤリと笑ったかと思うと、手に持っていた棒を振り回し供回りの者を叩きのめしてしまった。

 その様子を見て驚いた太守は、顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。

 

 「貴様!太守に楯突くとは何事か!首を刎ねてくれようぞ!」

 そういって太守は腰に差していた剣を抜き放ちながら門番に近寄った。

 

 「ほう、太守殿は俺に勝てると思っているのか?」

 心底不思議そうに尋ねてきた門番に太守は切りかかろうと近づいてギョッとした。

 その門番は赤髪赤眼の男、関勝だったのだ。


 「げぇ!お前は楊商店の所の手代!まさか!」

 流石の太守も事態が呑み込めてきたのか周りを見回すと、宗谷達が弩を構えて物陰から出てきたのだった。

 

 「全員武器を捨てな、今から少しでも動いたら弩で残らず射尽すぞ」

 そういって宗谷が脅しをかけると、石奉と親族はみな武器を捨てて降伏した。

 

 降伏した石奉達を縛り、どうにか首謀者の確保ができた事に俺は一安心していた。

 これで逃げられでもしたら、後々面倒の種が残るというものだ。

 彼らを一通り縛った後、太守の屋敷で事情を聴くことにした。

 

 「おい!お前ら私は太守なんだぞ!この縄を早く解かんか!無礼であろう」

 屋敷に着くなり石奉は縛られたままで怒鳴り散らしてきた。

 大方ここに着くまでに考えがまとまってきて、開き直ったのだろう。

 その潔さが若干遅い気がするが、わめいている事を要約すると、「太守に対して無礼だろう、早く今回の事を詫びなければ中央の李鐸が黙っていないぞ」という虎の威を借るなんとやらだった。

 

 流石にこのままではまずいので、今回だけでなくこれまでの行いも含めて報告書を帝都に出すことにした。

 後、石奉の話の中で解った事だが、献上品の話はでっち上げだったようで、前回の襲撃で奪われた品物は石奉の自宅に保管されていた。

 本人は何も言わなかったが、多分後で売りさばくか賄賂として使うつもりだったのだろう。

 

 ちなみに、街の様子は石奉が捕まった事でお祭り騒ぎの様に皆喜んでいて、治安の悪化する心配はなさそうだ。

 

 次の日の朝、俺は何故か昌の政庁にある太守の執務室で書類の決裁をする事になってしまった。

 なぜこうなったかというと、朝一番で政庁に赴いて太守補佐の尹魁に今回の件を報告した。

 報告したまでは良かったが、そこから尹魁に捕まり、「牢屋行きかなぁ」と思っていたら、執務室の書類の山を捌けと言われ現在進行形で捌いている。

 

 仕事の合い間に聞いた話だが、尹魁も石奉には手を焼いていたそうだ。

 基本的に仕事は出来ないししない。なのに偉そうに命令してくる。しかも街の人間に多大な迷惑をかけてくる。そしてその陳情が尹魁に回ってくる。仕事が余計に増える。という負のサイクルをずっと抱えていたそうだ。

 

 ただ、俺が業務を代行しても問題ないのだろうかと疑問に思ったので聞いてみると、


 「安心しろ、この国では基本的に太守が無能だったとき、太守を引きずり下ろした奴が代理を務めるのはごく自然な事だ。だからお前が太守代行でも全く問題無い!」

 必死の形相で睨みながら言い切られてしまった。

 多分、俺に逃げられまいと必死なんだと思う。逃げたい……。

 

 それから2週間ほど大量の書類と案件を処理しきり、一息ついている所に帝都に送った報告書の結果を勅使が持ってきた。


 俺と尹魁は、勅使の前に跪き、勅命を待った。

「皇帝陛下の勅命である。謹んで聞く様に」


「「ははぁ」」


「此度の事、陛下は大変お怒りになられている。よって、劉宗谷に帝都に出頭するようにとのご命令である。なお、昌の太守は石奉を引き続き任命するとの事である」


「え?それは全面的に私が悪いという事なのでしょうか?」

驚いて俺が聞き返すと、勅使は冷徹に言い返してきた。


「それが、勅命である。劉宗谷よ、引継ぎを補佐にして明日には出立するように。以上である」

それ以上の反論は認めないとばかりに勅使は自室に戻っていった。

このまま出頭すれば俺は確実に反逆者で打ち首になる。

腹を決めるしかないのかもしれない。


そんな事を考えながら執務室に戻ると、尹魁が話しかけてきた。


「どうなさるのですか?正直貴方が去って石奉が戻ってくるなど私個人としては避けたい事です」


「どうしたものか、というのが正直な気持ちですね。」


「私は今回の沙汰は李鐸が動いたものと思いますが……」


「確かに、このまま李鐸と石奉に良いようにやられるのは癪ですね。いっそ反乱でも起こしてしまいしょうか?」

と半ば冗談で尹魁に話しかけると、少し驚いた表情をしてから真剣にこっちを見据えて頷いた。

え?頷いちゃった?


「確かにこのままでは昌の街はダメになってしまいます。そうなるくらいならいっそ独立してしまいましょう。幸いこの街は南の要衝で、商売の中継点として栄えています。兵も食料も困らないでしょう」

まさか、こんなにあっさりと反乱する事を了承されるとは思わなかった。

ただ、このまま従っても打ち首なのはわかりきっているから勅使を追い返してからの事を考えるか。


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