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劉皇国戦記  作者: リューク
第一部 反乱
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賊討伐

 闇夜の中から馬車を伺う者たちがあった。

 その中の頭目らしき人物が黒ずくめの集団に小声で話しかけた。


 「いいか、野郎ども今回もあの馬車を襲撃する。狙いは馬車に居る男を殺す事だ。今回は何と3輌もあるから気合を入れてけ。後、馬車に乗っている背の高い男は確実に殺すようにとのお話だ、解ったな?では準備に移れ」

 そういうやいなや、賊の集団は包囲するように広がりを見せた。

 全員が展開完了の合図を送ってくるのを見た頭目は、大声で合図した。

 

 「野郎ども!やっちまえ!」

 言うが早いか、一斉に矢を射掛けてから突進し始めた。

 その刹那、矢が着弾したのと同時に無数の矢が撃ち返されたのだ。

 それも全方位に一斉に、である。

 

 「な、撃ち返してきただと!話が違う!?」

 頭目は一瞬罠を疑った。

 事前の情報では、守備兵に弓や弩は持たされておらず、騎兵のみとの話だったからだ。

 ただ、ここで怖気づいてしまうようでは、野盗なんてやっていられない。

 多少の危険を承知で攻撃を続行しようとした。その時、一騎の騎兵が野盗の間を突っ切ってこっちに走ってくるのが見えた。

 その騎兵は、体よりも大きな鉄棍を右に左に打ち下ろして、部下をなぎ倒しながら真直ぐに頭目目がけて走って来るのだった。

 

 「おい!あの騎兵を誰か止めろ!」

 頭目ががなり散らすが、騎兵の前に立つ部下が木の葉の様に右に左に飛んでいくだけだった。

 

 「ちくしょう!話が全く違うじゃねぇか!野郎ども!退却だ!」

 そういうやいなや包囲していた野盗が蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた。

 ただ、一度勝利の女神の手を放してしまった人物には、もう二度と勝利も幸運の女神すらも微笑んではくれなかった。

 逃げようと背中を見せた瞬間、足に激痛が走ったのと同時に彼の意識は失われてしまった。

 

 「やれやれ、どうにか殺さずに生け捕れました」

 そういって関勝は、気絶した頭目らしき男を担いで戻ってきた。

 

 「今夜の襲撃は予想していたとはいえ、大勝利だな」

 

 「はい。後は、屋敷の方が大丈夫か、ですね」

 

 「まぁ大丈夫だと思うぞ。確かに馬鹿ではあるが、1対1なら誰にも負けんだろ、あいつなら」

 そう言いながら俺たちは、同じ人物を思い浮かべながら苦笑する。

 

 今夜の襲撃はある程度予想が出来ていた。

 前回の旦那様の死体からある程度襲撃時間が予想できていたのが大きいと言える。

 後は、その襲撃時間まで全員で弩を構えて寝ずの番をすれば良いだけの話である。

 関勝には、事前に敵の頭目らしき人物を捕まえる様に言っていた。

 居場所は恐らく相手が大声を出す方向だろうと言っておいた。

 ただ、本当に大声だけで場所を割り出して突撃までするとは思わなかったが、まぁなんにせよ大戦果である。

 この頭目らしき人物が目を覚ましたら二三質問をして連れて帰ろう。

 

 「番頭殿、先ほどは、弩を貸していただき助かった。それで、これからどうされるのだ?」

 そう言いながら守備隊の隊長が近づいてきた。

 必死に防戦していた所を見るに、恐らく切り捨てられたのだろう。

 

 「まずは、この頭目が起きたら背後関係を二三質問したいと考えています。こいつが起きるまでの間、少しお聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」

 俺がそういうと、隊長はため息を一つ吐いてから頷いた。

 

 この後、隊長と頭目からの話の概要はこうだ。

 玉麗が欲しい太守は、手に入れるのに邪魔な存在として、俺と旦那様を殺す事を計画した。

 だが、何の罪もない俺と旦那様を殺せば恐らく自分にもお咎めがくるし、玉麗を手に入れられない。

 なら間接的に殺してしまおうという事に思い至り、野盗の頭目を雇って襲わせた。

 ただ、隊長は賊が自分たちまで狙うとは聞いていなかったので防戦をする羽目になった。

 という事らしい。

 

 これで証拠は揃った。後は昌に戻って太守を捕まえれば全てが終わる。

 俺たちは周囲を警戒しつつ休むことにした。


 「さてと、それでは守備隊の皆さんも一緒に昌に戻りましょう」

 そういって、帰りは、一人多く連れて昌に帰るのだった。

 

 その日の夕方に昌の商店についた。

 予想通りというかなんというか、店先は扉も壊され、中も見える範囲で襲撃の傷が無数にあった。

 

 店に入ると、玉麗が泣きながら走ってきた。

 「宗谷!無事だったのね!」

 そういって、玉麗は俺の胸に飛び込んできた。

 

 「こっちも大変だったみたいだね。大丈夫だった?」

 俺の胸の中で何度か頷いている。

 そんな様子を少し離れた所から見ている女の子が居た。

 彼女は、呉麗と言って近所の呉精肉店のお嬢さんだ。

 なぜそんな所のお嬢さんが襲撃された屋敷に居るかというと、彼女が俺のかけた保険なのだ。

 彼女の見た目は、10を超えたくらいにしか見えないが、一応玉麗と同い年で今年14歳になる。

 その小さい背中には身長をはるかに超える大きな斧が背負われていた。

 アンバランスに見えるが、それが彼女の得物で、重量は約100キロを超える。この大斧を縦横無尽に振るうことができるのは、この国でも彼女くらいのものだろう。

 そんな彼女がこちらに向かって手を差し出してきて一言「用心棒代」と言ってきた。

 

 「はいはい、少しは感動の再会を楽しませてくれても良いのに……」

 そう言いながら、彼女に銀10枚を握らせた。

 

 「今回は突然無理言ってすまんかったな。おかげで助かったよ」

 そう言って笑いかけると、彼女はつまらなさそうにこっちを見て言った。

 

 「別に、お金の為だし。それに相手弱すぎてつまらなかった」

 そらそうだろ、君の相手が務まるのは、力では関勝くらいだろうからな。

 

 その後は、店の片付けと並行して、店に襲撃に来た人物の尋問をしていた。

 襲撃者を拷問にかけて口を割らせた結果、やはり太守の差し金で間違いようだ。

 店を襲ったのは、玉麗の誘拐が目的だったようだ。

 ついになりふり構わずやってきた感じであるが、これで証拠が揃った。後は、太守にご退場願うとしよう。


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