六夜
今回は…戦闘のみ?
〜coghweel〜
今日は登校中から落ち着けなかった、先輩達は今日には宇白を捕まえて時計塔のどこかに閉じ込めるだろう、学校に着くまでに見つかればと思ったが通学路に宇白の姿は無く、とうとう学校についてしまった。
「新入生はコレ持ってって〜、これないとまたあの『ジャングル』行きだよ〜」
先生が小さな紙を生徒手帳に挟むようにと配っている、俺ももうあの『ジャングル』空間は御免なので列に並ぶ、が列はなかなか前に進まない、先生が配る枚数でも間違えたのだろうか。
長くなりそうだ、とため息をつく
「『7つの大罪』の半身を確認、只今より奪還する」
声の方向に振り向くと宇白が俺の腕を掴んでいる、そして俺の顔に一発強烈なパンチを繰り出した後、仰向けに倒れようとする俺の足を空中でキャッチし、そのまま『林』の空間に向けて投げ込む。
『ジャングル』の中に叩きつけられる、俺の後を追うように宇白も空間の中に入ってきた。
宇白は両手でやっと持ち上げられるぐらい重そうなハンマーを取り出す。
銀の装飾が施されているそのハンマーはかなりの大きさで、持ち合わせたわけではなく、宇白の力であると推測される。
声、体は宇白のものなのにあの喋り方と言い俺を投げ飛ばす怪力といい他人にしか思えなかった。
だが、力を解放している相手に対して素手では説得する状況すら作れそうに無い、俺は戦闘態勢に入る、目を閉じ、自分の使いやすいエモノを取り出す。
この重量感、来た…。
目を開けてエモノを掴む、俺の武器は高確率でトゲ付き鎖鉄球と決まっていた、ハズだった。
だが手にあったのは無銘、白い厚いカバーの付いた本、鉄球なんて物には似ても似つかない。
「…マジかよ」
出てきた本につっこむ前に宇白のハンマーが俺の頭部に直撃し、その場で地面にめり込んでしまうような感覚に意識を持ってかれる。
やばい、ふざけてらんねえ、填島のためにも早く学校に行かなきゃなんないのに大変なお客が来たもんだ、急がないと填島のタコさんウィンナーを食いそこね…いやなんの話だし、俺填島とタコさんウィンナーつつきあうような仲じゃないから、どうやら叩かれた衝撃で変な錯覚を垣間見たようだ。
とにかく『本』の使い方を知りたい、ヨーヨーの時と同じだ、戦闘しながら使い方を覚えるしかない、俺は宇白から距離をとりながら本を開き、一ページ目をめくる、白紙、二ページ目、白紙、次のページ、白紙…以下略。
残りのページをぱらぱらとめくり、目を通したが何も書いてない。
宇白は俺を追跡しつつ、俺の本をまじまじと見ながら呟く。
「『7つの大罪』、『嫉妬』、『固有』を創り出す力」
排除します、と計算しつくされた完璧なロボットのようにこちらに歩いてくる。
とりあえず逃げとけ、相手の実力はまだハンマーを振り回しているただの高校生、だがあのハンマーの特質がわからない、一度叩かれた俺はもうその症状が出てるかもしれない。
近くの木を曲がり、全速力で身を隠そうとしたとたん、体が倒れる、別に木の根に足を引っ掛けて倒れるなんてベタな一連をやった訳じゃない、背後からあの巨大なハンマーが俺の後頭部にクリーンヒットしたからだ。
俺を殴ったハンマーは地面に落ちる、持ち主がいない、どうやらハンマーを俺に向かって投げたようだ、変化球ですか?
冗談じゃない、ここで死んだら本田と一緒にキレイな夕日を見に行く約束……してねぇ!
だが俺にはその光景が浮かぶ、あの図書館の帰りに本田と夕日を見に行く約束をしている光景が、叩かれすぎたか?確かにクソ痛い、だが何故こんなにもダメージが少ない?
あんな重量のハンマーに頭を二発も受けているには意識はまだハッキリし、俺の体を逃走へとせかす。
俺は本を抱きかかえてまた走り出す、そしてページをまためくる、今の俺には本しかない。
そして一ページ目を見直すと一行目に『目次』とだけ書いてあるのを見つける。
背後の確認、敵なし。
俺は近くの大木の根本に隠れる、『目次』だけしかない本。
「クソ、わからねぇ、だが宇白が来る前になんとかしないと」
『目次』の隣に文字が浮き出る。
『クソ』『わからねぇ』『だが』『宇白』『が』『来る前』『に』『なんとかしないと』、俺がさっき喋った言葉が目次の隣に浮き出てきた。
「おいおい、どんなトリックだ?」
喋った言葉が区切られて『目次』の隣に並ぶ、俺は『宇白』の部分を読み確かめるようになでる、すると『宇白』の文字以外が消えてその代わりに『宇白』と『暴食』とゆう言葉が浮き出てきた。
俺は『宇白』をなでる、『暴食』が消え『宇白』の個人情報が浮き出て来る。
百科事典…?
「もっと他に無いのかよ」
また区切られて表示される、今度は『暴食』をさする。
『暴食』、『7つの大罪』の一つ、『真実』を創り出す力、殴ったものに『記憶』を植え付けて記憶を改変、真実を奪う、宇白和眞の場合は大人一人でも持ち上げ切れない銀の装飾が施されたハンマーになる。
記憶の改変、タコさんウィンナー、夕日を見に行く約束、アレはこれに書いてあるようにあのハンマーに叩かれたことによる効果…
敵の武器の効果がわかる。
「こいつは使えるもんゲットしちゃったね、うん」
俺の中で反撃ののろしがあがる。
ハンマーの続きを確かめる、先の説明文の最後に『コマンド』なんて表示があったのでなでてみる。
『叩く』『記憶の改変』の二つが浮き出る、俺は迷わず『叩く』を撫でる。
するとページの一番上にしおりが挟まれるように出現する。
しおりには『叩いちゃめっ』と書いてある、いやこの本どこまで本気なんだよ。
『記憶の改変』のほうを撫でようとする、が強い殺気を感じて手を止める、宇白が近づいているのがわかった。
見つかったら必ず消される、俺は根の間に体を丸め、息を殺す。
「主人を確認、遮蔽物を破壊」
ゴッ、と木を叩く音がする、だが何も起きない、それに安心しすぎたか木が根こそぎ倒れている事に気づくのに時間がかかった。
俺はなんとか脱出する、木が倒れる範囲から転がりながら離れる、身を起こして敵を探すがどこにもいない。
数秒あたりを見回し、自分の背後にいるのだということに気づく。
「『大罪』を回収します」
鈍器を振り上げる音、そして、俺を殺し伏せようとハンマーが振り下れ、それが空気を裂く音、俺はタイミングを見計らい振り返る、ほぼ目の前まで来ているハンマーの面を殴り、吹き飛ばされながら相手のエモノの範囲から逃れる。
「敵の戦線離脱を確認、攻撃を続行します」
宇白の攻撃はやまない、俺の体制が整う前に投げられるハンマー、悪いが今の俺に回避できる速さじゃない、俺は目を瞑る、とてつもなく重いものが俺の体に当たり、そして地面に落ちた。
「敵の損傷を確認できません」
宇白の渋い声が聞こえる。
ハンマーの片面には『叩いちゃめっ』と書いてあるしおりが張り付いている。
確信があったわけではない、だが俺は無我夢中の内に拳に先のしおりを載せ、ハンマーに押し付けておいたのだ。
その影響かは知らないが、『叩く』に関連する動作をあのハンマーから消し去ったのだ。
ここぞと宇白に向かって走る、本カバーの角でちからいっぱい宇白を殴る、宇白は普通に倒れる。
「体は人間なんだろ?『大罪者』、お前はなこの世界に居ちゃいけないんだよ」
俺は宇白の体をコントロールしている『大罪者』に話しかける。
俺は本の字引で『宇白』を選び、コマンドから『動く』を指定し出てきたしおりを宇白のおでこに貼り付ける。
『動いちゃめっ』
宇白は体に力を入れられずに倒れる、どうやら本はちょっと薄すぎ百科事典、そこで調べて出現したしおりは指定したことを封じるとんでもない物だったようだ、本をビー玉に戻す。
「さて、どうしたもんかな」
宇白の隣に座り込む。
「『暴食』リバース」
宇白の声でハンマーがフッと消える。
「『傲慢』展開」
宇白の頭の上に日本刀が出現し、トスッ、と地面に落ちながらしおりを破く。
宇白は起き上がりこちらを見下す。
「睡眠時間が短いな、お客さん」
呆れたようにぼやく俺をよそに宇白は日本刀を持ち上げる。
俺はビー玉をもう一度変化させる、また本が出れば敵じゃない、だが俺の期待を裏切る天才のこのビー玉は普通より少し大きめのハサミに変わった。
「ったくよ!」
今度は敵の能力はわからない、しかも自分のエモノの力をまた理解しなければならない、俺の体も限界に近い訳だが…、こんな所で死んでやる義理はない。
戦い続けた、ココでは時間が経たないのでどのくらい戦ったかはわからない、だが歳をとらないこの世界では無限の戦闘が行える、傷を負わなければ体力の消費も起こらない。
しかし、機械のように疲れが表情に出ない事、そして相手は戦闘慣れしていて遊んで戦っても俺よりなにもかもが上回る、最後にハサミ対日本刀なら勝敗は弾き出すまでもない。
もう腕の感覚がなくなってきた、永遠とゆうワードがこんなにも苦痛に感じるとは考えもしなかった、相手も負傷しているものの、何もなかったかのようにこちらに歩いてくる。
目を静かに閉じる、俺はどうやって『クリフォト』を追い返したんだっけ?
俺は生き残ったあの日を思い出す。
そうだ、あんときもこんな風に意識が途切れて。
もう限界だった体もガクッ、と力が入らなくなり、脊髄の部分に糸でもくくりつけられているかのようにだらん、と立っている。
そして、再起動するように身を起こす。
体はとても軽い、俺はハサミを強く握る、するとハサミは形状を一度失った後、青龍刀に変わった。
「敵の戦闘続行を 」
宇白がそう言い終わる前に相手に向かって駆け出し、一閃をくりだす。
日本刀でなんなく防がれる、その間にさっき振った勢いを増すようにクルリとまわりもう一閃を放つ、あの時、三夜のステップはまだ体は覚えている。
あの時は俺の意識ではなかった、産まれた時からあったかのような人格、だが何も変わったものなどない、俺はこの武器の特性も戦い方も知っているのだから。
一度攻撃する度に数を倍にしていく、まだ速度が上がる、その内に日本刀が腕ごと吹き飛ぶ、だが攻撃は終わらない、相手が同級生で俺に初めて話かけてくれた人間だとわかっている、だが攻撃は終わらない。
攻撃が終わる頃には相手は肉片になっていた。
戻ってくる、宇白の中から俺が貸していた『大罪』が、そう戻ってくる。
ビー玉が不規則に形を変え、オーバーワークに次ぐオーバーワークで俺の脳みそは完全に停止した。
〜another part〜
彼の潜在能力はやはり高い、コレなら私の願いも叶うだろう。
さぁ次に行きましょう。
白い髪が揺れる。




