五夜
内容がグデグデになりはじめました
最終更新終了(恐らく
〜cogwheel〜
休日二日目、俺は都市区を歩くことにした、昨日葛城さんと約束した『大罪』適合者の捜索だ。
『7つの大罪』は名前通り7つの大罪、つまり『大罪』適合者は世界に7人、一人でも欠ければあの『クリフォト』が違うやつに乗り移らせて居しまうため、その構造を逆手にとる。
『大罪』適合者を一人確保、俺達の万全の状態になったら『大罪』の媒体を破壊、この町に降りてくる『クリフォト』をなんとか見つけ、なんとか破壊する、後半は作戦としてはアレだがコレしか方法はないだろう。
『大罪』に取り付かれるとその『大罪』に合う症状が働いてしまうそうだ、『暴食』適合者は食欲を抑えきれなくなったり、とそんな感じ。
まぁすぐに見つかるハズも無く、都市区にある図書館に休憩しに来た。
「こんにちは」
声がした方に顔を向けると一昨日保健室で宇白を看病していた女性が立っていた。
「本田、さんで良かったですか?」
はい、と笑顔でこっちまでスッキリしそうな挨拶を返して来た。
「名前聞いてなかったので、なんて呼べばいいかな?って」
そういえば、クリフォトの時もそうだったが、俺って名乗り忘れすぎ、もしかしたらクラスでの自己紹介の時も俺だけ挨拶をしなかったかもしれない…それはないか。
「龍爾って画数多いですね、相席しても?」
断る理由が無い、俺は彼女を向かいの席に招く。
「宇白はどうですか?」
アレから連絡を全くとっていないので心配だった。
「もう人並みに動けますよ、でもあれから毎晩うなされていて」
…、おそらく正面から見たら今の俺はサルに最も近い顔をしているだろう、てか今なんて言ったよ彼女。
「えっと、毎晩?」
二人はとても親しいんですねぇ、と意地悪そうに言う。
「いえ、そうじゃなくてね、ちょっと家も近いし、看病もしてくれる人居そうに無かったので」
顔を赤く染め必死に弁解する本田、コレは宇白にはもったいない人間である。
「悪ふざけが過ぎた、冗談だ」
ほっとしたのか彼女は胸をなでおろし、辺りをみながら申し訳なさそうにする、見れば図書館の係員の人がこっちをキツイ目つきで睨んでいる。
ハハハ、とお互い顔を突き合わして笑う。
「龍爾君も本好き?」
話を振られる、こっちに引っ越してから家での生活はほとんど書かれていないが俺は結構読書家だ。
「どんな本を読む?マンガはナシの方向で」
最初に会ったときとまるで印象が違う、最初に会った時は…敬語じゃなかったか?今はなんだか小学校あたりから同じクラスであり続けたかのようなフレンドリーな感じだ。
「推理小説を少しね」
以外、と彼女は呟いた、その一言は俺の心臓に深く突き刺さる。
「この本さ、推理小説なんだけど、結構おもしろいんだよ」
本田は持ってきた本の一通りのあらすじを俺に話す。
「その本の犯人、息子でしょ?」
本田はその本の結末を知っているのか驚いた表情を見せる。
「あ、読んだことあるとか?」
推理だよ、と言った俺に何か火をつけられたように推理小説の棚から本を沢山持ってきて本を開き構える。
「その推理、見せてもらおうじゃないか」
君では絶対に無理だろうね、と言葉使いを更に変えて一度読んだことがあるだろう小説を開く。
それから俺と本田の意地の張り合いが始まった、犯人推理勝負は本田があらすじを話し、俺が犯人を当てる、それだけの事だったのだが非常に盛り上がり、昼前に会った俺達は3時を少し過ぎるぐらいの時間まで勝負を続け、結果は本田が選んだ本の犯人を全員当てた俺の勝ちになった。
「龍爾君、ホント頭いいんだね」
借りてきた本を二人で本棚に返していく。
「作者の書きたい方向性を考えるのも推理小説の鍵だよ」
本田に少し尊敬された、だが推理小説は主人公より早く犯人を当てる本ではないことをよく覚えておいて欲しい。
「ところで本田さんさ、その話方って元からだっけ?」
本田は困った表情をする。
「和眞が倒れたぐらいからかな、私意識しないと敬語で話せなくなっちゃって」
そうか、宇白が倒れた辺りから…。
「『大罪』に取り付かれると本人の意思に関係なく、取り付いた大罪の症状みたいなモンが適合者に現れ始める、コレ覚えといて損ないぞ」
捜索の上で発見の手がかりと俺に強く言い聞かせた紫藤の発言が思い浮かぶ。
「体に異常は?」
「ないけど、どしたの?龍爾君怖いよ」
態度の変化を読まれる。
「能力、本田さんは自分の能力って細かくわかってる?」
本田は説明をしてくれた
「私の能力は地脈みたいなものを武器の扇子であつめて指先に集中させて撃ったりするんだ、それが?」
どうやら嘘はついてないみたいだ。
「なんでもないよ、帰ろうか、送るよ」
本田は一度遠慮したが、二回目は帰り道が一緒のことを理由に帰ることになった。
「やっぱ変かな?喋り方とか、しぐさとか、行動とか」
帰り道のとちゅうで本田が聞いてくる。
「私さ、和眞に前は『君』つけてたでしょ?最近はとっさに出ると和眞、和眞って呼び捨てになっちゃってさ」
なんか変な感じなんだ、と打ち明けてくる。
「中学校はあんなにおとなしかったのに、とか和眞言われると前の方がよかったのかなぁ〜、なんてね」
宇白、学校の平和はお前にまかせた、だから代わりに本田さんの安全は俺がまもってやる、てかお前にはもったいない、宇白よお前何様?
「宇白もそんなこと言う奴じゃなくなかったか?」
「そうなんだよね、なんか最近彼もいきなり変わってね、なんか欲しいものとか増えて、食欲増して、その割りになんでもかんでもめんどくせぇ〜って」
…まさか、な。
俺は一瞬頭の中にできた疑いをかき消す。
話に話して住宅区にまでたどり着いていた、楽しい時間はすぎる。
「ありがと龍爾君、俺こっちだか 」
言いかけて止まる。
「私の家こっちだから」
言いなおしてからエヘヘ、と笑い、家に歩き出す。
さて、俺は住宅区にある公園に向かう、今日の探索の結果の報告にいかなければ。
公園には初めて訪れることになるが大きな花壇や遊具などがかなり充実していて少し公園のレベルを超えている。
「早かったな鬼山ぁ」
公共の場の公共のベンチで完璧に制服を着こなしながらタバコを吸っている型破りな男がそこにいた。
「約束の時間の前に来るやつは嫌いじゃないが、少し早すぎだな」
もったね、と呟きながら紫藤は吸い終わってないタバコを携帯灰皿におしつける。
「俺らは収穫一個、そっちはどうだった」
携帯灰皿をポケットにしまいこみ、紫藤は仕事の話をしはじめる。
「気になる噂を一つ」
やはり見過ごすことが出来ない、宇白がそうだったら俺だけでは到底対処しきれないからだ。
「宇白 和眞は大罪適合者、だろ?」
俺の噂を紫藤はピシャリと当てた。
「こっちも同じ内容だ、宇白はテメーのお友達だったか?」
「はい、俺にしてはよく話したほうだと思います」
「明日の放課後に捕獲を開始、お前は作戦に出なくて良い」
紫藤は俺の反論も聞かずに帰っていった、お前では足手まといだといいたげな態度で。
〜another part〜
「俺は…私はどうしちゃったんだろうか」
鏡に向かい自分を取り戻すように一人称を確認する、だんだん戻れなくなってる事をひしひしと感じる。
「ヘッポコの概念がこちらに来てるのね」
真後ろにいた人間に私は全く気づけなかった、鏡越しにいる人間は私の影に丁度隠れて姿を見せない。
「元々ヘッポコには適合者なんて無理な話だった、無理にあいつが『大罪』を移動させなければこんなことにはならなかったのに」
振り向けない、振り向けばもう二度とこの世界を見れない気がして。
「あなたも手遅れにならないうちにヘッポコ宇白を救ってあげてね」
その名前に振り返るが、もう誰もいなかった。




