三夜
やっと本編って感じです
最終更新終了(たぶんね
〜cogwheel〜
深い、深い森の中、小さな焼け野原が見えた。
その中心に一つ、何かに取り残されるように倒れている人がいる。
いや、ソレを人と言うのはもう無理かもしれない、だって ソレは 頭も腕も無い ただの…
先を見る恐怖心で目が覚める。
人が死んでる夢なんて、そろそろこの家の特殊能力の発動か?時間はまだ朝の5時、まだ太陽も昇っていないそんな朝。
「おはよぉー」
昨日とはまた違う朝、今日は普通に間に合うように学校を出たからだ、生徒のほとんどは住宅区から登校するので多くの生徒がこの道を使い、賑わいをみせている。
昨日のうちに多くの友達ができたやつもいるだろう、俺も作れば良いのに昨日は一体何をしていたんだか。
「鬼山ぁ」
肩を叩かれる、後ろを振り返ると同じ学校の生徒だった。
「鬼山一人?じゃぁ俺も一緒に行って良いか?」
誰?と聞くと生徒はポケットから緑色の縁の校章バッジを見せてきた、学年ごと違う色だが、今年の新入生は緑である。
「同じクラスの宇白 和眞、出席番号3番、お前の隣の席」
9番だろ?と聞き返してくる、一列6人で並んでいるのなら俺の席の隣は確かにこいつだ。
「自己紹介は結構アピールしたんだけどねぇ」
昨日は自己紹介までしたらしい、肩を落としている宇白を見る、身長はややあっちが上、髪の毛は天然パーマでくるくるしているし整っていない、体格は普通の学生、いたって健康そうだ。
「鬼山初日からぼけ〜っとしてたもんな、先生睨んでたぞ」
そんなことまでしてたのか、だが昨日は朝方家を出た辺りから記憶が薄れている、思い出そうにも思い出せない。
「お前も俺を見ていたなら先生が睨んでたのは俺とお前かもな」
あ、と宇白は渋い顔をする。
「てか鬼山、夢見た?」
「俺も人間だからな、夢ぐらい見るさ」
皮肉いっぱいで返す。
「そうじゃねぇって、力の夢だよ」
「悪いな」
「本当に見てないのか?」
くどい、と頷く。
「昨日な、変な夢みたんだよ俺が変なチカラに目覚めて敵を倒す夢」
「お前と同じ夢を何故見なければならん」
考えただけで気持ち悪い。
「それが内容やその能力に違いはでても、力の目覚めるって夢はほとんどのやつが見てるらしい、さっきここまで来るの生徒もその話ばっかだったし」
生徒って言っても新入生だけだけど、と付け加えてくる、なるほどね その条件なら俺が見ててもおかしくないって事だ、だが昨日見た夢は…どんな内容だったっけ?
「入学早々乗り遅れたなぁ、もしネタに困ったら今の話使って良いぜ」
好意はありがたく受け取っておくことにする、そんな話をしているうちに校門までたどり着いた。
昨日と同じで校門と学校の間には『 』がある。
ん?なにか引っかかる、こんなちんけな『林』じゃないはず、『 』だったはずだ。
全く思い出せない昨日の事を思い出していく。
そしてその記憶の断片を見つけ、足を止めようとした時には。
『林』は『ジャングル』に変わっていた。
「なんだよ、コレ」
隣にいる宇白は自分の目を疑うかのように何度も目をこする。
「昨日はこんなんじゃなかったのに」
宇白がそう呟いた瞬間、森の奥から学校のベルがかすか聞こえてきた。
背後から騒がしい声が聞こえる、どうやら他の生徒達も迷い込みこの状況が掴めていないようだ。
ここにいたらパニックに巻き込まれる、俺は宇白の手を強引に引っ張り木々の奥へと入っていく。
「宇白、少し落ち着いて聞いてくれ、この状況は確かに普通じゃない、だが普通の物が一つだけあった、なんだかわかるか?」
引っ張りながら声を強くして訊ねる、宇白はこの状況をなんとか整理しようと数秒考えた後。
「学校の鐘」
かすかに聞こえたあの音を宇白はちゃんと聞いていた。
「ココから出るぞ」
鐘の音が聞こえてきたほうに歩き出すと宇白も俺に歩幅をあわせ付いてくる。
「冷静なんだな、こんな状況で」
さっきよりも落ち着いて宇白が聞いてくる。
「昔から恐怖感とか緊張感とか無いんだ俺、もし学校に武器を持った殺人常習犯が襲ってきても俺だけは確実に生き残って見せるよ」
そう、産まれた時からこんな事には感心がない、ココから出られなかったらなんて事は頭の片隅にも思い浮かばない、状況を見定めて行動に移せば俺にできないことなんて限りなくない。
数分歩いと倒木があった、宇白の体力も心配だ、ココで休むことにした。
「コゲ臭い」
休憩中に宇白が言う、確かにコゲ臭い、しかもスグ近くだ、臭いの方向に歩とその場所だけ木々が燃やされている、しかも数分前のことのようにその一帯はまだ熱を帯びている。
この状況、知っている、当たり前か、だって昨日俺はココで『 』を『 』したんだから。
「なんだよ、コレ」
希望をそぎ落とされたそうな声が聞こえた、宇白は目の前にあるソレは、頭部と両腕が無く、その場に膝を折るように倒れている。
宇白の手をまた引っ張りその場から離れた後、宇白の体を樹に押し付けるようにして宇白の両目に焦点を合わせる。
「休憩を続けてろ、見てくる、絶対にココを動くな、そして忘れろ」
宇白を倒木に座らせてさっきの場所に戻る。
死体がまだ固まっていないところを見ると死んでから時間はあまり経っていない、この円のように取り囲んだ焼け跡、ココ周辺が燃えるのとほぼ同タイミングぐらいで亡くなったのだろう。
そして重要なことは、俺はこの事件を知っている、全てを思い出した。
俺はコイツに殺されかけた、いや殺されたはずだ、じゃぁ何故あの時の火傷がない、この状況はおかしい。
「人?」
ものすごいスピードで振り替える。
「ソレ、あなたが殺ったの?」
同じ学校の女子だった、違う、と言おうとすると女子は知っているかのように頷く。
「あなたであってあなたじゃない者」
いや知っているかのようではなくこいつは知っている、俺が意識を失った後の事を。
「戻りましょう、彼をあまり長く放置するのは良くないから」
女子はズカズカと宇白が居る方向に向かって歩き出す。
死体を一瞥してから女子の後を追う、一足先に着いていた女子にビックリしたのか宇白は丸くなってしまっている。
「今回は戦力になりそうにもないわね」
宇白を倒木から蹴り落として、座って、と倒木を手でぺちぺちと叩く。
「これから現状を報告するわ、あなたの意見を聞かせて」
ようやく落ち着いた俺にまた新しい重荷がやってくる。
女子は俺より一回りぐらい小さく、髪の毛は透き通るように白くそして腰あたりまで長い、その髪にはウェーブがかかっている、顔をのぞいてみるとかなりかわいかった、日本人ではこんなんは産まれないだろう、そして更に驚かしてくれることに目は金色だ。
「聞いていた?」
少しトゲのある声が俺を突き刺す。
「でしょうね、口が馬鹿みたいに開いてたから、もう一度説明するから今度は聞いていて、まずこのジャングルのことから、このジャングルは実在している、以上」
いやいやいやいや、一番よく分からない所を快速でつっきる彼女を止めた。
「説明が足りない?しょうがない人」
ちょい頭に来たぞ。
「現状を知っているなら詳しく教えてくれ、漫才してる暇がない」
死体を見てから顔色が全く良くならない宇白を見て言う、彼女は数秒俺の顔を見た後、いきなり顔を伏せて説明を再開する。
「この町の地図を見た?このジャングルはなぜか似ても似つかない『林』って設定になってる、ソレはこのジャングルの空間を無理やり捻じ曲げてそう見せているだけ、普通の人間が通っても普通の林、だけど能力者が通るとこのトラップは発動する」
彼女の説明だとこのジャングルは急に現れただけでも俺達が飛ばされたわけでもなく、最初からココにあって、普段はなんらかのミラクルスーパーパワーによって『林』に改ざんされているとの事だ。
「今の話でわからないところがある『能力者』?」
彼女は立ち上がり説明を再開。
「能力者とは一般からかけ離れてしまった存在、普通じゃない人間」
例えば?と促す、彼女は振り返り目を静かに閉じた、そしてまたゆっくり開き手を前にかざす。
「具体的に言えばこの町の力は『物』にたよったものになる」
彼女はそこに何かあるかのようにゆっくりと手を握る、その瞬間、何もなかった彼女の手から身の丈ほどの大きな杖が出現した。
「普通の能力者は直で能力を使う、だけど私達は能力を具象化できてその『物』を使って能力を使う」
彼女は杖を焼け野原の方角に向けて大きく振る。
「何も使わない能力者を1にするなら『物』を通して能力を使う私達は7って物かしら、能力に対しての考え方の違いによるものらしいわ」
一通り説明し終わると杖を振った方角、丁度あの焼け野原あたりに大きな火柱が現れた。
その火柱は焼け野原の何もかもを焼き尽くして消えていった。
「つまりこの森に来た生徒はその素質がある者だけ、と」
火柱に腰を抜かしながらも質問する。
「ええ、新入生全員ね」
彼女はさらっと返してくる。
「昨日の晩に『夢』を見たってみんな言ってなかった?それが能力開花のスイッチ、夢で自分の能力の内容、その使い方を覚える」
「俺は昨日みんなが言っていたような夢は見てない」
「あなたは昨日も迷い込んだでしょ?この場所に、つまりあなたには能力の素質が産まれたときからあった、だけど産まれたときから使ってないから使い方を忘れてしまってる」
「俺は昨日どうやってあの軍人を倒した?何故外に出られた?」
「あなたは生きている、証明なんて要らないんじゃない?」
やっぱり昨日の事を知っている、つじつまも合う、みんなは昨日の夜開花したから昨日の朝はふつうに『林』のココを通過した、だが俺は能力に目覚めていたため『ジャングル』を歩くハメになった訳か。
「この状況が大掛かりなトリックじゃない証拠は?」
「敵が居る、それを自分の能力で倒せなければ死ぬ」
「軍隊か?それともオカルト教団、スラ○ムとかじゃないだろうな」
彼女はため息を大きくつく。
「敵は能力者、『物』を使って戦う私達とは違って『人』として能力を出す人達、手から炎だしたり、ね」
あの軍人を例に挙げる。
「人数」
「ほぼ無限、ココでは歳をとらないから、まさにトラップの真髄かもね」
「歳をとらないんだろ?死なないじゃないか、侵入者を結果的に殺すのがトラップってもんだろ?」
「怪我とかしても治らないの、ここにいるとね、老けない代価みたいなもの、そこで学校の生徒達が演習で入り、練習の実験台にするの」
老けなかったり怪我が治らなかったり、もろもろが便利だな、オイ。
「便利になるように作ったんだから当たり前じゃない」
コイツ、人の心を読みやがる。
「戦いながら学校に行くのがこのミッション、そっちの彼は戦えないみたいだからあなたと私で戦う、わかった?」
「俺だって戦える」
彼女の発言にどうしても訂正を加えたかったのか気持ち悪そうに宇白が反論する。
「無理、話にならないから黙ってついてきて」
彼女は宇白に戦力外通知をつきつける。
「詳しいんだな現状、能力のことも」
「私の力は血族的な物だから、そして産まれた時からこの町に住んでるしね、まだ聞きたいことは?」
じゃあ付いて来て、と彼女は自分の能力で草木を焼き払いながら進んでいく。
「宇白、歩けるか?」
宇白に肩をかしながら俺も後を追う。
「名前を教えてくれ、戦闘になるなら知っていたほうが便利だ」
「填島 梢、填島の方で呼んでね、名前の方は反吐が出るくらい嫌いだから」
女の子が反吐とか言っちゃダメだろ。
「比喩的表現に女も男も無いと思うけど」
また読まれた。
それからは無言のままこちらのペースを考えずどんどん進んでいく填島を追い、長い時間歩いた。
「敵が近づいてる、そのカスを草むらに捨てて臨戦態勢をとって」
カス…宇白の事か?なんて思っていると宇白は俺の手を無理やり振りほどいて臨戦態勢をとる。
「俺が仕留める」
宇白は填島に強い牽制を送った後に目を閉じてそこにある何かを掴んだ。
その瞬間に草むらから軍服の男が宇白に飛び掛る。
男は持っていたナイフで宇白の首を狙ったが宇白はの能力らしきものが先に男を地面に叩きつけていた。
「すごい、すごいすごい、コレが俺の力、俺の ちか ら」
宇白はその場に倒れこんだ。
「オーバーワーク、彼は自分の力を制御しきれない」
填島は意識をまだかろうじて繋ぎとめていた宇白の頭を蹴り飛ばし、腕を掴むと草むらに放った。
「敵を倒してくるからあなたはココで自分の能力がなんだったか思い出して」
それだけ言って草むらに入っていく、思い出せって言われても...
ガサッ
草むらから填島と入れ違いで一人出てくる、手にはサバイバルナイフ、だがさっきの奴とも焼け野原にいた奴とも違う軍服。
そいつはこちらの面子を確認し、男か、と呟いてこっちに向かって歩いてくる。
ある一定の距離まで来た男はピタリ止まり、ナイフを構える。
俺は無意識のうちに何かを掴む、ポケットの中にあったビー玉である。
ビー玉を握り締め考える、あの焼け野原にあった死体の傷口はなにか大きい物が通過し、そのまま持って行かれた、そんな傷口に思えた、無意識のうちに俺が倒したんだとしたら俺の『物』は鈍器。
俺にはみんなと同じように何も無いところから武器を出現させることは出来ない、じゃあドコに武器があるのか、おそらくそれはこのビー玉のはずなんだ、俺が死んだときに持っていたこのビー玉。
ビー玉が形を変える。
コレが俺の…武器か、手にはヨーヨーが輝いている。
男がスタートを切る、ナイフを振り回してくるが俺が思ったよりも白兵戦は得意ではないらしく俺の姿を捉えきれずがむしゃらに振り回しているようだった。
俺はもっているヨーヨーで男を殴る、仰け反る男、男はナイフを捨てて構え直す。
この男は能力をつかった方が強いのだろう、こちらに歩み寄る男。
しばらくすると男の動きが止まる。
「何をした?」
男は身を震わせながらこちらを見てくる。
さぁ見せてくれヨーヨー、お前はどんな力だ?
「わからない、力の使い方が…」
男はその場に崩れる。
「体に力を入れるって、どうやるんだっけ?」
その内口もパクパクと動くだけになった、声の出し方も忘れてしまったのだろう、しばらくすると息もしなくなり苦しみだす。
俺はもう一度ヨーヨーで男を叩く、男は苦しみ方を忘れるように死んだ。
人から記憶を消す力、か。
ヨーヨーをビー玉に戻す。
「よかった、一人取り逃がしたから殺されたかと思ってた」
填島が戻ってくる。
「わざと、だろ?サディスト」
俺が今出来る最大の皮肉を言うと填島が笑う、近づいてきた填島を見ると左肩から血が出ている。
「おい、お前怪我してんじゃん」
大丈夫よ、と治療しようとすると杖を振り回して追い払う、コイツは俺をなんだと思ってやがる。
「敵は腕をよく狙ってくると思うから注意して」
また大きくため息をつく。
「何故必要に腕を?」
「『物』が能力である私達にとって武器を握れないことは死よ、覚えておいて」
腕を取れば俺らは能力もだせなくなる訳だ。
「だからって女子の腕まで」
人間としてどうかと問う。
「あら?腕を取るなら女の方が得が多いと思うけど?」
?いや得も何も違いはないだろ。
「だって抵抗されない方がヤりやすいでしょ?」
「お、お前な!」
強く睨む、だが続きを言おうとすると填島はいきなり上着を脱ぎ始めた。
「あぁ、言い忘れてました、治療をしたいからあちらを向いていてくださる?し・ん・し・さ・ま」
填島は急に敬語になりこちらをおちょくってくる。
俺は小学生以来の180℃ターンを見事に決めて草むらに向かって歩き出す。
「そうゆう事をワザとやるのは卑怯だ!」
逃げ際に反論する。
「そういえば先程治療を手伝おうとしてくれませんでした?今からでも間に合うなら少し手伝ってもらいたいのですが?」
「期限切れだっての!!」
嫌いだ、話をそらすのが上手い大人みたいで、ココを出たら二度と話もしないだろう、少なくともこちらからはしない。
しばらくすると填島は治療が終わったらしく草むらかた出てきて出発の準備をしている、そして出発する時にあぁそうそう、と思い出したようにこちらに顔を近づけてくる。
「私はあなたみたいな純粋な狗、もとい可愛い子供、大好きですよ」
いち早くここから出たくなった。
歩きに歩いて2時間は経った、先の戦闘から敵との遭遇は無く填島は退屈だとため息をついている、ため息は癖なのだろうか?
「出口よ」
目の前には校章が小さく彫ってある大木があった、填島は校章に向かって歩いていき、木の中に飲まれるように入っていった。
「なるほどね」
俺も続いて木に入ると目の前には学校があった、振り返り校門とここまでの間にある林の捻じ曲げられた道を見るがそこには誰も立っていない、変わりに校門を潜った人が一瞬で消え、疲れた表情でこちら側に出現してくる。
昨日心配されたのは校門であの空間に入り、なんとかして抜け出したことにより、中途半端に道の真ん中に出現したからなのだろう。
「時間が進んでない」
「よく見てるのね、そう、あの中に居ても時間はすすまない、捻れた空間にいた時間はこっちの世界では0に等しい」
つまり俺らがどんなに早くゴールしようとも俺らより先にあの空間に入った人がいたらそっちの方がはやくでてくるって事だ。
そこに立ち止まっていても仕方ないので学校の玄関に行く、すると昨日と同じ場所で受付があり、そこで先生達が待っていた。
「合格おめでとう、そして入学おめでとう、現状を説明しよう」
一人の先生が誰もいない教室に案内してくれた、俺と填島は説明を受け、宇白は保健室に連れてかれた。
「何か聞きたいことは?」
なんでも良いんだよ、と微笑んでいる先生に取りあえずなんでも聞くことにした。
「都合よく新入生が能力者なのは何故ですか?」
ジャングルの中で疑問に思ったことを聞く。
「中学の時に筆記試験をやらなかったい?我々はもうその用紙に触れるだけで相手が能力者かどうかわかるレベルまで進歩している」
用紙の内容が白紙であろうが関係ない、俺がココに来ることはあの用紙を後ろの席にヤツに手渡した時点できまっていたっていやな話だ。
「集めるのは隔離のためですか?」
次の質問を出す、考える暇を与えないほうが真実に近い嘘、または正反対の嘘が出てくるもんだ。
「いや、自分が能力者であることに気づかないで暮らすと成人したぐらいからコントロールが上手く出来なくなり暴走することがある、それを防ぐための学校だよ」
それじゃあ隔離となんら変わらない。
都市区、開発区、農業区、住宅区、こんな狭い町にこんなにも結集しているのはこの町で十分暮らしていけると錯覚させるための物か。
「質問は以上です」
俺はこれ以上の質問を出さなかった、どうせ先生達に改変された情報なら意味が無い。
「じゃあ自分は次の生徒の説明があるので、注意して帰りなさい」
先生が出て行くと同時に填島が立ち上がる。
「私も用事があるから、帰る途中で寄り道しないように」
お前に言われなくとも、そんな事を思いながら保健室に寄っていく。
中を覗いて宇白がドコに寝てるか確認する、宇白のベッドはスグに見つかったが先客がいた、ポニーテールで髪の毛をまとめた女子だった、宇白よ、お前も隅に置けなかったんだな。
仕方なく帰ることにしたが、開発区はまだ不気味でしょうがない。
「少年っ、あたって行かないか?」
聞き覚えのある声に振り向くとあの怪しい男がいた。
「まだまだ冷えるねぇ」
またそこらから木を拾ってきては火に放り込んでいる。
今日は名前をおしえようと近づこうとする、ついでにこのビー玉のことも聞いてやろうと思ったが、体は動かない。
「どうした坊主、んな怖い目でみんなよ」
意識が閉じていく…
〜another part〜
「どうした坊主、んなこえー目でみんなよ」
俺の声はとどいていないかのように坊主は立ち尽くしている。
「主人の気絶を確認、オートモード展開、『7つの大罪』オールナンバー起動」
再起動したかのように彼の口からでた声は確かに本人の物だった、だが意識はアイツにもってかれてるようんだ。
「『大罪』!オーバーワークだ、まだ学ラン君はそれには耐えられない」
手ぶら君の手にはビー玉、そのビー玉が瞬く間にトゲ付き鉄球に変わる。
『7つの大罪』の一つ『真実』を創り出す力、呼称『暴食』
相手にぶつけることで効果を発揮、相手に記憶を植え付け操作し、相手にとっての『真実』を創り出す。
あの鎖鉄球にはそんな力がある。
まぁアレ当たって耐えれるやついたら凄いけどね。
坊主が鉄球を放とうとする、だがその体勢のまま倒れこんでしまった、極度のオーバーワークに乗り移ってる本人の体が耐え切れなかったのだろう。
「だからやめとけってのに…もったないなぁ〜」
じゃぁな鬼山君、楽しかったよ。
最後に別れを告る。
〜main part〜
意識が戻ってきた、男が遠ざかっていく、男はケケケ、とまた笑っているようだ、そして入れ違うように填島がやってくる。
何かを言っているようだが聞き取れない。
もう、聞き取れない。
〜another part〜
駆けつけた時にはもう彼は生きているとは言いがたかった。
「もう聞こえてないんでしょ?」
彼の生体反応の消滅を確認する。
じゃあね、鬼山君。
次はもっと上手くやるから。
最後に別れを告げる




