二夜・紅咲の月
続きです。
〜cogwheel〜
「圭!しっかり!!」
家主が戦闘を行って一日が経つ、今日は町中が紅く輝く夜だ。
「笹、俺は消えるぞ」
戦闘によって消耗した体でなんとか言葉を繋げていく。
「鬼山 龍爾との戦闘で『使命』を抜き取られた、上等な呪いだ、俺が『使命』を受け取ってなかった、そんな事実を作り出すくらい」
『使命』を持ち合わせない家主はここにいてはいけない存在だった。
「そんな冗談はやめて!」
長年付き添った彼女の目の前で消えていく男、彼女の中で彼の存在が消えていく。
「こんなの...こんなのおかしい」
彼女は彼が居なければ処刑されていた身だ、彼が『使命』を受け取っていないならあの日に助けてくれる人はいない、それに気付いて彼女は笑う。
「圭、私も消えてあげるね、だからいつか『矛盾』、なくして」
あぁ、と頷く家主、二人の存在は消えていった、彼女達が住もうとしなければ取り壊されていたこの古い時計塔も開発区から消えていく。
開発区にはこいつも居た、髪の毛をきちんと切りそろえている、『大罪』を産み出す者、その手には武器としてこの時間軸に居た『クリフォト』
「やっちまったな…、少年」
別時間軸の自分達から能力が消えていくのがわかる。
「俺達は全時空の『セフィロト』と『クリフォト』だ、パンピーみたいに時間軸ごとバラバラの存在じゃない」
全てが繋がっているためか、能力が解け、人間に戻っていくセフィロト。
そして産み出し、授ける力のない彼らがここにいる意味は無い。
「お前があんなガキにちょっかい出すから」
「そゆお前こそ生まれる前から目ぇつけてたじゃん」
背もたれのないベンチに二人肩を並べて座り込み、暖を取ってあるドラム缶にあたる、そして二人同時に笑い出し消えていく。
クリフォト愛用の焚き火用ドラム缶、そして鬼山を待ち伏せするためにどっかから引っ張ってきたベンチも消えていく。
今夜は花が紅く染まることは無い、二つの樹はここには降臨しない、地脈も反応しない。
あらゆる事が発生しない世界、樹が降臨しなければここに学校は出来ない、そこに攻め込んでくる人間もいない、ここを開拓する人間も…いない。
だがその原因に巻き込まれずに、ひっそりと泣く人間がいる、元からそこには居ない存在、なんにも影響しない存在。
彼女は呪いから解き放たれた、だが彼女を知る人間もいない、町が拓かれないその森の中で佇んでいる。
彼は行ってしまった、私をおいて。
もう何も無い、誰もいない、じゃあ私がここに居る理由もないじゃないか、彼がいないんだから。
だから私も消して、この世界から、消してくれてもいいじゃないか。
彼女は何も考えずに歩き続けた、森を越えた先で一つ、小さく拓けた土地があった、ジャングルにあったあの場所に似ている、彼が片腕の軍人と戦った場所だ。
彼を不意に思い出した、考えないようにしていたのに…。
つらくなり、あの時のように杖を振るおうとする、こんな場所、焼け野原になればいい。
すると。
その土地に咲いていた花が紅く染まり始めた。
「なんで?」
彼女はおびえた、樹が生きていたとしたら私は間違いなく殺される。
「今夜も冷えるな」
花畑の中心に突っ立っている男がいる、気配はまるで世界樹だ。
「焼かないでくれな、俺ここ好きだからよ」
何度も目をこするが、涙のせいか彼を上手く見れない。
「ちょい時間旅行しすぎた、疲れたから朝になったら起こしてくれ」
彼はその場に寝た。
「ホント、辛抱強さないんだから」
彼はそのまま深く眠った。
私は彼の隣で月を見ることにした。
花が紅いせいかな?世界がとっても綺麗だ
…え?終わりですか?
この誤字脱字、矛盾の塊の作品が?!
最後まで呼んでくださりありがとうございました。
誤字脱字はだんだんと直していけたらなぁ、なんて思ってます。




