死刑執行
「ヒルレイナ様の、侍女が、犯人?」
「ああ…。」
「日頃がらヒルレイナ様の我が儘に、我慢の限界がきたそうです。」
私の問いに、王様とグレースさんは何だか投げ槍に、そう答えて下さいます。
ヒルレイナ様毒殺未遂事件から3日が経ち、事件後の事の顛末を説明しに来て下さっています。
「毒は何から?」
「ヒルレイナの飲んだ紅茶からだけ、検出された。」
「証拠は?その侍女の方がやったという!」
府に落ちません。だって、そんなことをしたら、ただでは済まないと、子供だってわかります!それを、我が儘に限界がきただなんて…。それに、
「その方は、私の持参した茶葉が未開封だと、王様が確認をとられた方ですか?」
「…ああ。」
ますます馬鹿らしい。未開封の、茶葉を開け、毒を入れたと?そんなの、私が犯人です!と宣言しているようなものです。。もし、本当に毒殺するなら、もう少し上手くやるでしょう、誰だって!
「どう考えても、濡れ衣ではないですか!?」
「…その侍女については色々と調べたが、グルレシー.ナイニ.ユグルシアル子爵という、ここから北西の小さな町の領主の娘だ。領地経営事態は上手くいっているし、不正などもない。しかし、先代領主が散財したらしくな…借金で、家事態が相当苦しかったらしい。」
「…苦しかった?」
王様の言葉が、過去のものというのが、気になりました。
「…最近になって、借金がなくなったと、そう、知人に話していたらしいが。」
借金の肩代わりのために、わざわざ娘を殺人未遂犯にしたと?
「その侍女はどうなるのでしょうか?」
この世界は絶対的な王という存在がありながらも、元老院や要職を勤める貴族らによる議会に重きを置き、決して独裁ではありません。
王が、可としても、議会、元老院が否と言えば、否になります。
ですが、
「…王の側室に、王太后の姪に毒を盛ったのだ。極刑は免れぬ。」
「黒幕は!黒幕がいるでしょう!?」
「…証拠がないし、その侍女本人が自分がやったと言っているのです。仮に、やらせられたとしても、やったのは、その侍女なのです。」
グレースさんが、そう言い切ります。
「っ!確かに、確かにそうですがっ!」
納得出来ません!こんな、こんな後宮のいざこざで、あの侍女が、彼女が死刑だなんて!
「…ですか?」
「…ハナコ?」
「…何時ですか!?刑の執行は!」
「…もうじき。14時だ。」
その言葉を聞いた瞬間、走り出します。
「ハナコ!?」
「ハナコ嬢!!」
マナーとか、ドレスだから走りにくい、とか、関係ありません。
「ハナコ様!お静まり下さい!」
アイリーンさんやマリーさん、メリーシアさんの声も聞こえました。
後宮の門番さん達に、阻まれます。
「刑場は?」
「…は?」
「今日、死刑執行があるでしょう!?その刑場はどこ!?」
思わず怒鳴ります。
「は、は!中央広場でございます!し、しかし、ハナコ様、後宮から出る許可は…?」
「王ならすぐ後ろからきます!本人に聞いて下さい!今は緊急時です!! 」
そう言い捨てて、中央広場を目指して走ります。
後ろが何やら騒がしいですが、構っている暇はありません。
その時、
「きゃっ!」
走っていると、突然目の前に人が表れ、ぶつかります。
「ハナコ…落ち着け。」
王様が転移魔法を使ったようです。
「…落ち着いている、時間はないでしょう?」
バチン!
「っく!ハナコ!!」
防御魔法を使い、王様を弾き、再び走り出します。今度は予防に王様限定防御魔法発動しながらです!
どれだけ、走ったでしょう。沢山の、人だかりが見えます。
人だかりというよりも、何かの演説でもありそうな、そんな大衆の目前に処刑台があり、そこには一人の少女が、ガタガタと震えていました。
「娘、言い残すことは?」
大衆の野次の中に、死刑執行人の静かなのに、何故か不気味に通る声が響く。
「あ…、ああ…」
少女は、恐らく恐怖からでしょう。言葉にならない声を発しています。
「…では、その罪!神の…」
「その処刑、お待ちください!」
顔が分からぬよう、顔を黒い覆面で覆った執行人か、此方を、見ます。
「…あなた様は?」
速く殺れ!何故止まる!殺せ!
大衆からの野次が飛び交います。
「ハナコ.ノハラと申します。」
「これはこれは、王のご寵姫がこのような場所に来るものではございません。お引き取りを。」
執行人は、淡々と言います。
「ハナコ!」
王様の声が聞こえます。
「何故、その方は死刑に?」
「…ご存じでは?この者は王の側室であるヒルレイナ様の毒殺未遂の罪での死刑執行にございます。」
静かな、淡々とした言い様が、何だか苛々します。
「この死刑執行、早計すぎます!もっと審議を…」
「ハナコ、止めよ。もう決まった事だ。」
王様の諭すような、その言い方にも、余計に苛々します。
「私は!死刑を止めろと申しているのではありません!早計すぎると、言っているのです!!」
「…王の側室様となれば、王族。王族への未遂とはいえ殺人行為はいかなる理由や原因も関係なく、極刑でございます。」
「そんな…!」
「ハナコ、もう止めろ。王族が法を曲げてはならぬ。」
有無を言わさない、執行人と王様の言い分。
王族?
「王族って、なんですか?公正な審議も出来ない、王族?随分なご身分ですね。…身分は何のために?王とは、王族とは何のために存在するのですか!?身分は上の者が下の者を守るために!王族は民のために!あるのでしょう!?王族の権威は民を守るためのものであり、このような一人の少女の命を奪うためのものではないでしょう!?」
沢山の人の、大衆の声ひとつ聞こえない、静寂が、刑場を包みます。
「良いではないですか、王よ。」
そこに、忽然と、静かなバリトンの、声が響きました。
すみません、最後の兄上×、王○です。UP直後訂正したのですが、きちんとなっていなかったようです。




