表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/54

初夜…? (王様side)

「王様、私、後宮に入ろうと思います!」


ハナコがそう言った時、柄にもなく、内心浮かれた。


男女の、その、深い関係にはかなりの無知だが、そのようなことは、これからだ。


後宮の準備は出来ており、ハナコ以外の貴族の令嬢らが既に入内している。


何だかんだと難癖をつけてきた貴族共の娘達が、8名も入内したらしい。


無論、初夜以外は通ってはおらぬ。その初夜も、茶を飲んで、令嬢らの耳にも入らぬ話を素通りさせただけで、何もせず直ぐに後宮をあとにしている。


自分でも馬鹿らしくなる。これでは後宮にハナコ以外の后とも言えぬ女らを閉じ込めておくだけで、令嬢らにとっても不憫な話だ。


しかし、この国は、いや、この世界は王による独裁政治ではない。


王に大きな決定権があるのは確かだが、議会や、元老院、中枢貴族のことを無視しては、いずれ国にも、そして何より王である俺に、歪みが生じる。独裁とは、そういうものだ。


この世界は、王による独裁政治ではないが、王が絶対的存在であることは確かだ。


王が狂えば国が狂う。


故に、この世界の中心の、この国の王たる俺が狂えば、この世界が狂う。


絶対に避けねばならぬことだ。


だから、貴族共の、いや、国の均衡を保つためにハナコに後宮入りを望んだ。


本来なら、どこの風にも触れさせず、真綿で包むように、王宮の奥に閉じ込めておきたい。


だか、ハナコ自身そのようなことは望まぬだろうし、何より、王太后にしてやられた。


俺やグレースの側に居ることで、ただでさえ注目されつつあったハナコを、公の場で、その存在を晒し、知らしめた。


ハナコはやはり、後宮入りを拒んだ。


そして、一時期は部屋から一切出なくなったと聞いて、柄にもなく焦り、何度となくカッパニーニ邸へ向かい、しかし、会うことは叶わなかった。


しかし、突然、グレンリードと街におりたと聞いた翌日、後宮に入る、と。


街で何かあったのか、はたまたグレンリードに何か言われたのかわからないが、そんなことはどうでも良かった。これで、今まで以上に人目に付くものの、ハナコと共にいれる。


そして、今日、ついにハナコが後宮入りをした。


今夜は初夜だ。


ノックをすると、待つことなく扉が開く。


侍女らが臣下の礼をとって、頭を下げている。


「今日はもう下がって良い。」


そう言うと、心得たとばかりに退室する。


寝室へのドアを開ける。


「王様!」


ハナコがパァッと、顔を輝かせて俺を見る。


「王様、お疲れ様です!」


「ああ。」


そろそろと近付いて来て上着を脱がされる。


アイリーン辺りに教わったのだろう。何となく、得意気に見える。そして、続いてこう言う。


「王様、お酒などお飲みになられますか?」


コテン、と首を傾けて聞いてくる。


…今夜は、初夜だ。


「いや、今日はよい。ハナコも今日は疲れたか?」


そう言うと、ややがっかりしたような顔を一瞬見せるが、直ぐに何時もの笑顔になり、


「いいえ!私は何もしていませんから。ただ、このお部屋が素敵過ぎでちょっと興奮はしました。」


そう言って、ふにゃり、と笑う。


「そうか、そう言って貰えて良かった。」


この青の間は特別な部屋だ。俺が調度品やらなにやらすべて選別した。


「ふふふ。ありがとうございます、王様。」


彼女が、また、ふにゃり、と笑う。


俺の中で込み上がってくるものがあった。


「う~ん、じゃあ、王様、お話ししましょう?」


そう言って、ハナコは俺の袖を引っ張り、ベットへと連れて行く。


そして、何の警戒もないように、ころり、と横になり、ポンポン、と自分の隣を叩く。そこに俺に横になれ、ということだろう。


…寵の意味は知らないが、その、こういう意味は知っているのかもしれない。


俺はそう思った。


そう思うと、込み上げてくるものが押さえられなくなる。


「ハナコ…」


俺は身体をハナコの隣に横たえ、ハナコの髪をすく。そして、額、目元、頬、と、チュッ、とリップ音をわざとたてながキスをする。


すると、クスクスクス、と笑い声が聞こえ、


「王様。くすぐったいです。これじゃあお話し出来ない。」


ハナコが俺の腕の中で身をよじりながら、そう言うと。


ふっ、と俺も笑い、


「では、何の話をするのだ?」


と、耳元に囁いて見る。そうすると、またくすぐったそうに身をよじりながら、


「そうですね…そうだ!王様、レイチェという食堂ご存じですか?」


そう、嬉しそうに話し始める。どうやら、グレンリードと街におりた際、そこで食事をしたらしい。その食堂のピリ辛のチキンが美味だったと話す。


その他にも沢山のことを話した。


ハナコの故郷のこと、俺の好き食べ物、嫌いな食べ物。幼少期のこと、母のこと。


こういうのも、悪くない。


悪くないのだが…。


「ハナ、コ…?」


俺の問い掛けに聞こえてくるのは、スースー、という規則正しい寝息。


「本当に、知らなかったのだな…。」


俺の中で高ぶったもののやり場に困る。が、しかし、この寝顔み見るのも、悪くはない。


悪くは、ない、のだが…。


ハナコの小さく華奢な身体を抱き込むと、俺の胸にすりよってくる。


…。


……。


………。


一睡も出来なかったのは、言うまでもない。

な、ま、ご、ろ、し(///∇///)


実はハナコがこの世界最強!?



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ