グレンリードは愛妻家
渡り人が保護対象なら、何故、私はあのような目に…。ああ、でも、渡り人かどうかなんて聞かれもしなかったのでわからないですよね。
「渡り人は貴重なんじゃよ。大体50年から100年に一人渡って来るかどうかじゃ。」
「え…じや、じゃあ!私の他にもあちらから来てしまった渡り人がいるんですか!?」
鼻息荒く問う私。だって、だって、他にも仲間がいるかもしれないんですもの!
「残念ながら過去にはおったが、現在はおらぬのじゃよ。」
「そう、ですか。そうですよね。50年から100年に一人ですものね。もう、お亡くなりなっていますよね…。」
私の淡い希望は即座に打ち消されてしまいました。
「そうがっかりなさるな。一番最近迄生きておった渡り人は、こやつもまたわしの小飼の風の精の気紛れに拐って来てしもうた、5年前にわしを置いて先に逝ってしもうた、わしの最愛の妻だった女じゃからの。」
グレンリードさんとは短いお付き合いですが、わかった事があります。たまに、然り気無く爆弾落としますよね。
…って、奥様が渡り人だったって!!
「お、奥様のお名前は!?」
「ホッホッホッ。ユキコじゃよ。ユキコ.サクライじゃ。無論、わしの愛妻じゃからこちらでの名前はユキコ.カウス.カッパニーニじゃ。」
「日本…人…。」
「そうじゃよ。ハナコ殿と同じく美しい黒髪でな、瞳の色はもうちっと茶色かったかの。」
「そう、ですか。同じ、日本人。」
何だか、言葉では言い表せない感情が湧き出て来ました。勿論、ユキコさんはもういらっしゃらないのですけど、同じ日本人の女性が、グレンリードさんの小飼の風の精に拐われて、この世界で天寿を全うしたという、その事実が…、あれ?
「ホッホッホッ。」
「あ…のっ、ユキコさん“も”、グレンリードさんの、小飼の、精に…さら、わ、れて…?」
「ホッホッホッ。すまんのぉ。なかなかに気紛れなやつらだて。」
…。
「いやいや、ほんに、すまんかったのぉ。ほれ、こちらに渡って来てしまう際、ちいとばかし強い風かなんか吹かんかったかの?」
……。
「無論、わしの小飼じゃからの、気紛れなやつらじゃが、悪いやつらではないし、無意味なこともせんのじゃよ?」
………。
「いやはや、ほんに…」
「すみません、もう休みたいのですが!」
もう、何も考えたくありません。




