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プロローグ
終わった。
何も、かもが。
彼女はそう感じていた。いや、彼女の周りの生きている者たち、全てが。
天照とはよく言ったものだ。目の前にいる"それ"は、大きさで彼女たちを圧倒し、太陽の光を遮っているではないか。
「どうか、お許しを!神の慈悲を!」
彼女の隣で叫んだはずの男は、跡形もなく消え去った。
慈悲なんてあるわけがない。あれは化け物だ。
「なぜ・・・」
呟いた彼女の方を、それが振り返った。
"忘れていたくせに"
それの心の声は、美しく澄んでいた。
"あなたたちが、私たちを忘れたくせに"
そして、涙を流していた。
その日世界中のTVが皆一様に報道したのは、"日本列島の沈没"。
しかし、それはただの始まりにすぎず、次の日には彼らの世界も消えることになる。