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身を守る術 (小学校編)

幼稚園から小学校へ入学。

小学生の一コマ。

幼稚園では、本当に辛かった。

他の女児と楽しく話をすると、3人で押しかけてきて、話をしていた女児に意地悪を仕掛ける。

男児と遊んでいると、その男児の悪口を大声で言う。

蒼真といると、あの3人に意地悪されるという図式が出来、本当に仲良くしたい友達から

遠巻きにされる。

それが繰り返し。


こんなことでは、まともな人間関係が築けない。

蒼真は、まだ幼児ということもあり、

邪魔をする女児3人に対し対処出来ず、卒園するまで悩むことになった。

蒼真の両親もその3人の母親達にはいろいろとお願いという厄介事を強要され

誕生日会を開かされたり、その女児達へプレゼントを渡すようにさせられ

幼児で逆らえないのをいいことに、腹の立つことを強いられた。


幸いなことに卒園後は、そのうちの1人が私立小学校へ、2人は同じ公立小学校だが

クラスは違ってホッとすることになった。

両親のこっそり会話から

どうやら母親が卒園して直ぐに、小学校へ相談したことで、揉め事回避の為に2人とは

同じクラスにならないようしてくれたらしい。


しかし、同じクラスにも幼稚園の3人の女児と似たような性格の子達数人いて

帰りを一緒に帰ろうと強要しようとしたり

自分と仲良くする女子や男子の友達に嫌がらせをするなどしたり

自分の彼氏だと勝手に嘘を吐くなどの嫌な行動をとられ、蒼真は確実に上手く人間関係が

築けなくなっていた。


「蒼真く~ん」

「ねえねえ、蒼真君」


その女子に声を掛けられると、恐怖で足が竦む。

(イケメン顔の弊害だ。こんなにも酷い目に遭うとは。先輩の性格が歪むわけだ)

蒼真は、今後どのように生きて行けばいいのか、完全に将来への不安が強くなっていった。

このまま同級生の女子達と同じ中学になれば、人間不信になってしまう。

別の中学へ行くことは出来なかったかを考え始めた。


(先輩に聞いてみよう。先輩もきっと学生の頃、モテて大変だったはずだ)

いろいろ深刻に考えながら、我が家へ帰宅すると、

「おにいた~ん」

玄関を開けたと同時に、可愛らしい声と小さな存在が自分にぶつかってきた。

「おかえりなしゃい」

腰に手を回して、小さな存在が笑顔を自分に向けてくれる。

(な、なんて可愛い)

思わずランドセルを足元に落とし、妹を抱きしめてしまった。

「くるみ、ただいま」

(癒し系だ。俺の癒し系、オアシス)


「蒼真、おかえり・・。蒼真?」

パタパタとキッチン側から出迎えに来てくれた母親は、蒼真の行動に驚いていた。

「どうしたの?何かあったの?」

いつもと様子が違う息子に母親は心配そうに声を掛けてくれる。

それを蒼真は、癒されたよ~という笑顔を向けた。

「母さん、くるみは俺の癒しだよ。くるみ、有難う。お兄ちゃん、明日も頑張れる」

「おにいたん?」


その日の夕食後、蒼真は意を決して、父の書斎の扉をノックした。

返答を聞き、扉を開けると、仕事中なのかPCの画面に医療用の文字の羅列が並ぶのを

覗き見た。

(忙しいかなあ)

おどおどしながら入室すると、父は椅子ごと振り返った。

「珍しいな、蒼真から来てくれるとは」

父は立てかけてある簡易椅子を用意し、促すので頷きながら座った。


「父さん。お願いがあります」

簡易椅子に座り、両手をひざ辺りに組み、真剣な顔で頭を下げた。

「蒼真、改まってどうした。よそよそしいぞ」

元先輩である樹生に対し、どうも親子関係らしく出来ないところが蒼真には痛かった。

(だって。先輩という意識が昔から身についた癖で、どうしても父だという感覚がないんだよね。

しかも甘いマスクのイケメン顔。緊張する。未だに自分の父親ということが受け入れられないんだよね)

「あの、父さんの学生の頃、モテた?」

「ああ、モテたぞ。自慢したくないが、自慢過ぎるほどな」

ちょっと照れくさそうに。

「女の子に対して、人間不信になった?」

蒼真が弱音を吐きだすと、椅子に座っていた父は立ち上がり、優しげな表情でしゃがみこみ

視線を蒼真に合せ、頭を撫でてきた。

「父さんと同じ目に遭っているようだな。友達造りを邪魔されるのだろう?」

「父さんも?」

「ああ。誰も信じることが出来ない時期だったかな」

「・・本当?」


顔が良くて、穏やかな性格で、女子からモテたのは、幼児時代から始まり

自分を取り合う女子の取り巻きやファンクラブで悩まされたのが小中高まで。

まだ高校は、良かった。

幼い思考の人もいれば、大人な思考の人がいて、付き合いも変わった。

大学では、全国から人が集まっているから自分がずば抜けてイケメンではなく、

もっと凄いイケメンが大勢いたので

今までのような事が無くなってきて、平和になった。


「だけど。女性に対し、嫌な思いをしてきたから、結構うんざりしていて、誰も好きになれなかった」

「そうなんだ」

「蒼真。俺はかなり性格が歪んでいる。お前も俺と同じ顔をして生まれてきているから

これからもっと悩むかもしれない。だから、回避術だけは教えよう。

まずは、女子の言動のせいで変な男子に絡まれるということもあるから、空手か合気道とかを習った方がいい。

それから、女子の言動にはさらりと反らせるすべ。巻き込まれる前に逃げる術だな」


父もまさか小1で、ここまで追い詰められているとは思わなかったと零した。

「俺は、中学から酷くなったからな。お前が幼稚園時代から自分の周囲について

理解していたとは思わなかったよ」


次の週から男として、精神的にも強くなる為に、合気道を兼ねた古武術を習うことになった。

そして肝心な事。別の中学へ行きたいと願うと、父は思い切り驚いた顔をした。

「そこまで苦痛だったのか。分かった。私立中の受験を考えよう」

両親は、その日遅くまで話し合いをし、1週間後にはいくつかの私立中パンフレットを揃えて

蒼真に手渡してくれた。


「お前は凄いな。俺には、逃げる方法を考え付かなかったな」

「父さん?(先輩)」

「お前になら、本当に好きな人が出来るかもしれないな」

「?」

(どういう意味なんだろう。母さんは、好きな人じゃないのだろうか?)





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