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幼稚園と くりこ先生 (幼稚園編)

シェフから一変、性別も変わり、先輩の息子として生まれた皐月。

幼稚園時代の話

転生後の話になりますので、蒼真に名を変更します。






信じられない事態が起こっている。

蒼真は毎日がとても怖いと思うくらいだ。

それは何故かというと。


蒼真は、高校時代の毒を吐くイケメンの先輩が何故悩んでいたのか今 ようやく分かったような

気がした。



月日は流れて、現在幼稚園の年長さん。

数か月後に6歳になる、5歳児の幼児。


そして、事件は勃発。



「蒼真君と遊ぶのは私」

必死なのは、くりくり目の可愛らしい少女。

「私よ」

強気で勝気な少女

「蒼真君の彼女は、私よ」

女王様な自己中少女。


現在、幼稚園内の教室で、皆それぞれのおもちゃで遊ぶ時間。

そして、恒例の保護者見学参観の日だ。

1クラス24人いる子供達。親もその人数×両親なので、教室内はいつもより人口密度が

上がっていた。

和やかな雰囲気から一遍。まるで昼ドラを見ているような場面設定になっていた。

幼児が昼ドラの修羅場って、どうよ?

ひとりの男を巡って、女性が奪い合う。

まさか自分に当てはまる時がくるとは。自慢をしているわけでなく、物凄い面倒臭いということが

分かった。3人とも論外。


喧嘩を始める3人の少女の言葉喧嘩に、他の子供達は関心がないが、保護者達は興味深々だ。

その少女達の両親達も参観日なので、見学さなかに親が出て行ってもいいものか

躊躇気味だ。


この喧嘩を治めることが出来るのは、先生しかいなかった。

その先生は、ベテランのくりこ先生27歳と

昨年の新卒で、今時の逃げの姿勢が特長の何故ここに就職して来たのか理解出来ない

無責任なたまき先生24歳という女性。

テキパキと動くくりこ先生は、おもらしをしてしまった女児の為に、現在別室に行っている。

ということなので、今は教室で期待出来るのはもう1人の環先生。


口喧嘩から取っ組み合いになり、物の投げ合いになり、止めようとしている蒼真(皐月)にも

当たってくる始末。

環先生がどうにかしてくれるものと、クラスの親の誰もが思った。

が、環先生は我関せず。


「きゃあ」

「うわああん」

2人が顔に引っ掻き傷が出来たところで、大泣きになり、ようやく環先生は動くかと思えば

知らん顔。

(な、何故環先生は、動かないんだ)

蒼真は、よくよく考えてみると、環先生はいつも揉め事をすると逃げていたように思う。

特にこのヒステリー3人の幼児達は苦手で、近寄らない。

ダメだ、こりゃ。


ガラリ。

扉が開き、副園長先生が入室。

大泣きしている幼児を見つけ。

「担当の先生は、どこですか?」

と、責任転嫁的発言できたので蒼真は愕然とした。

(副園長先生は子供と関わるのが苦手で別の仕事に就いていたが

副園長の母親(園長)が亡くなったので、跡を継ぐ為に来ただけで子供の扱いは全然ダメだった)


教室内はしーんと静まりかえる。

幼児達も副園長先生が怒っているのが分かるので、手を止めて様子を伺っている。

副園長先生は、54歳独身の女性だ。ブルドッグを思わせる顔なので

園児にはとても怖く感じるのだ。


さらに、ガラリと戸が開き、くりこ先生とスッキリした顔の女児が戻ってきた。

「わ~」と、にこにこ笑顔の女児は、お目当てのおもちゃへ突進していく。

実に微笑ましい。

そんな中、副園長先生は、じろりとくりこ先生に視線を向けた。

「くりこ先生、持ち場を離れてどういうことですか」

と、泣きわめいている女児3人を指差し、責め立てる。


くりこ先生は、いつも間が悪い。そして、同僚に恵まれていない。

肝心な時に何もしない環先生と組むのが嫌で、他のベテラン先生はくりこ先生に押し付けたのは

一目瞭然。

それよりも、全然状況を見ていない副園長先生の発言に、親達も動揺していた。

意見を言えないのは、怖いということもあるだろう。

副園長先生が大声で話し始めるので、廊下から穏やかな園長先生が顔を出してくれた。

副園長の姉の立場の女性だ。子供を育てたことがある元主婦なので、安心だ。


「どうしました。廊下まで声が聞こえますよ」

「園長先生。これを見て下さい。くりこ先生が他の教室に行っている間に、揉め事があったのです」

凄い剣幕で、事情を知らない癖に、騒ぎ立てる副園長先生。

これは拙い展開かなと蒼真は判断し、くりこ先生の前に出ることにした。


「ん?蒼真君、どうしたの?」

園長先生が穏やかな顔で、蒼真を見下ろした。

「園長先生。くりこ先生は悪くない。一番悪いのはそこで喧嘩して泣いている3人。

止めないで知らん顔している環先生も先生としての仕事もせず悪い。

くりこ先生は、さやかちゃんの服を換えに行っていて、部屋にいなかったんだ」

はっきりと伝えると、園長先生は頷いた。

「だから、全然今までの事情を知らない副園長先生がくりこ先生を悪く言うのはおかしい」

「そうね。事情を全部聞いてからだよね」


園長先生の言葉に、くりこ先生は驚いている。

「副園長、問題は全部話を聞いてからですよ」


蒼真は、もともとの原因は、自分が誰と遊ぶかで揉めた事を話した。

自分としては、男友達と遊びたいのに、3人が自分と遊ぶとい言って、行かせてくれないこと。

それならば、皆で遊ぼうと言えば、2人きりで遊びたいと言い出す。

で、最終的には言葉の攻防から手を出す喧嘩に発展。

そこにいる親は、何もしないし、担当のひとりである環先生は、3人が泣き出しても

知らん顔をしていたことを順序よく話すと、頭をなでられた。


「蒼真君は、凄いわね。どうしてそうなったのかをきちんと先生に説明出来るなんて。

蒼真君の気持ちは分かったわ。ここは、園長先生に任せてくれる?」

蒼真は、頷いた。



でも、やはり副園長先生は納得していなくて、新任の環先生をフォローするのがベテランなのだとか

くりこ先生にお説教を始めた。

「副園長先生。くりこ先生は頑張ってるよ。環先生が飾り付けをしないで帰った後も

僕はくりこ先生が後片付けまでしてるの見たもん」

ぐすっと泣くような顔をさせると、イケメン顔が活用出来たようで、副園長先生は押し黙った。

「有難う、蒼真君」

くりこ先生が涙を零しながら、蒼真にお礼を言うので、蒼真は自分のズボンのポケットから

ハンカチを出した。

「先生、使って」


そんな様子を3人の女児は、泣きやみ、くりこ先生と蒼真の前に割り込んできた。

美玖みくだって、泣いてるのに。ずるい」

「蒼真君、私も」

「私に貸して」


「悪いけど、美玖ちゃん達はポケットにあるだろ。僕はくりこ先生に貸した」


「うわああん」

3人で泣き出し、今度こそ親が出てきた。

それぞれの親が宥めている中、気の強い美玖ちゃんは、親に蒼真のハンカチを借りたいと

まだ言っている。

困っている親は、過保護なのか蒼真の母親にお願いし始めた。


蒼真は、元女性の記憶を持っている。だから女の嫌な部分が読めてしまうので

正直その様子を見て、嫌悪感が沸いた。

「蒼真君ママ、お願い。蒼真君のハンカチ、貸して頂けないですか?」

それを見ていた他の2人の母親もお願いしてくる。


(僕のハンカチは、1枚しかないのに)


「え?でも・・」

蒼真の母は蒼真本人に視線を向けた。


その声を無視して、蒼真は背伸びしながらくりこ先生の顔を拭いた。

「くりこ先生、泣かないで」

「蒼真君、先生はいいよ。お友達に・・」

大人なくりこ先生は、女児が泣いているのがどうも気になるようだ。

しかも、原因はその女児達の憧れの男の子が自分にハンカチを貸そうとしている事。

「先生。僕は先生に使ってもらいたいんだ」

わざと先生の手にハンカチを押し付ける。

くりこ先生は、苦笑して受け取った。

園長先生と副園長先生は、顔を見合わせて、どう収拾させるか目で相槌を打っていた。


「さて、そろそろ次の予定に移りましょう。今日のお昼は、皆さんのお父さんとお母さんと

家族でお弁当を食べます。その場所ですが、園内のどこでもいいですが、1時になったら、この教室に

集合になります」

と、気を利かせて話を進める。

それを聞いて保護者達や園児は移動を始めた。


それでも美玖ちゃんと他の2人は、まだ蒼真をじっと見ていた。

母親達は、わが子に気を利かせるつもりで、

「あの一緒に食べて頂けませんか?」

「あのうちも」

「蒼真君ママ、お願いします」

蒼真の母親に一緒に食べて欲しいと言ってくる。


その言葉を聞いて、蒼真は正直うざいと思ってしまった。

(もしかしたら、先輩も同じような思いをしてきたから、イケメンの顔がマイナスだと

言っていたのだろうか?)

蒼真が、自分の両親の方へ歩き始めるとくりこ先生は頭を撫でてくれた。

「蒼真君、ハンカチ有難うね」

「僕、くりこ先生、大好きだよ」

子供ながら、くりこ先生のような女性を応援したくなる。


もうすぐ自分に向かって言われる理不尽な事を回避する為、蒼真は一番仲が良い男児2人に声を掛けに走った。

「お~い、たっちゃん、わっくん、一緒に食べよう~」

「お、いいぜ~」

「食べよう~」


男児3人が走って玄関に向かうので、男児2人の保護者達は慌てて後を追いかけていった。

もちろん蒼真の両親も女児の親に断りを入れて。





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