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父の気持ち(高校生編)

貞操の危機を感じた魔の土曜日の終わった後の夕食。

くるみは何を勘違いしたか、蒼真がナンパしていた話を始め

何人かの美人とアドレス交換していると公言し、父からは大笑いされ

母は苦笑していた。


「ははは。くるみ、それはたぶん違う。アドレスを勝手に知られて

送られてきたのだと思うぞ」

父はよく分かっているようだ。

「俺も覚えがある。特に高校生になると、中学よりもマセた女子が増える。

後から思えば、あの女子達は恋に恋しておかしくなったんじゃないかなあと思う」

遠い目をしつつ、懐かしそうに話をする。


(経験あるのかよ)


ふて腐れて食事をとる蒼真に、くるみは「そーなの?」と聞いてくる。

「そうだよ。この女達は、皆変態」

「え~、うそお。皆美人だったのに~」

「美人でも変態」

「・・・そうなんだ」

あまりこちらの苦労が分からない感じなので、つい意地悪な言葉が出た。

「くるみも変態にだけは、なるなよ」

くるみは、顔を真っ赤にして怒っていた。

「ならないに決まってるでしょ」

最後は、喧嘩越しだ。


(そういえば、俺の涎拭いた人は、ハンカチ・・考えるの辞めよう)

げんなりした顔で、思い出すのは辞めた。

母に視線を向けると、いつもの明るい母だ。

まだ父の条件に拘っているのかすら、分からない。


夕食後、父の書斎へ行ってみた。

今日の事を含め、少し話が聞きたいと思っていたからだ。

「今日は、大変だったな」

書斎に入るなり、父は笑っていた。

「笑いごとじゃないよ。ズボンとパンツ脱がされて、危なかった」

「・・・・。え?大丈夫なのか?」

「ああ、ちょっと奥の手を使った」

「ふ~ん・」

何か疑いの眼差しを向けられたので、18禁内容はナイと宣言しておいた。

「ははは、そうか。ところで、それだけじゃないんだろ?」

「あ、うん」


俺は、その土曜日の出掛ける前に、父が香の日記帳を読んでいるところを見た。

どうしてアレが、父の手に?と疑問が沸いた。

「香さんの日記を読んでいたから、どうして持っているのかと思って」

蒼真は、ダンボール箱を開けて、いろいろ香の遺した物を元母に渡してきた。

だから、父が持っているのはおかしい。

「もしかして、皐月のお婆さんから貰った?」

車に積みこんで、元母と桂木父は、話をしていた。

もし、受け渡しがあったなら、あの時だと思っている。

蒼真の意気込みに、父はクスッと笑いを漏らした。


「・・。実はね。金曜日に会社に出勤した日に、会社の前で渡された」

(え・、予想大外れ)

「会社に来た?」

「ああ。先週の日曜日にお前が探し出したことを聞いた。その夜に、皐月さんは日記を読んだそうだ。

そして、俺に渡すべきじゃないかと悩んで、金曜日に会いにいらした」

その時の事を、息子の蒼真に話してくれた。

「読んでいて、嬉しくなった。月に1度しか仕事の都合上、店の時間に間に合わない。

だけど、俺が来た日は、メニューや俺が伝えた言葉が記録として残っていた。

もっと早く、気持ちを伝えていたら・と、後悔している。

彼女も俺の事、好きだったんじゃないかと、文章から読み取れる。

あの嫉妬男のせいで、何もかも奪われた」

一喜一憂。


香は、海外から戻ってきてから、先輩に感謝する言葉と先輩に応えられるよう

料理の腕を鍛えていた。


「もう、この世にはいない。そう思うと・・悔しくて」

父は片手を目頭に充てて、涙を隠して拭い始めた。

慌ててハンカチを手渡すと、受け取り涙を拭いた。



「何故かな。お前に相談すると、許された気になる。話をすると、落ち着くんだ」

同じ顔なのにな。俺はナルシストだったかなと父は笑った。

核心したことは気付いていないようだが、雰囲気や、言動、していることが

自分の想い人と重なるようだ。


「お前には荷が重いことかもしれないが。また話を聞いてくれないか」


息子になって、あの時以来弱音を吐く父を初めて見たのかもしれない。

香だった頃は、高校時代に弱音を何度か吐いていた先輩は知っている。

あの時は、何を言って先輩を浮上させたのだろう。

どういう態度をしたのか、自分の事は覚えていない。


蒼真は、あれこれ考えることを辞め、何も考えずにニコッと笑った。

「いいよ。その代わり、俺の愚痴も聞いてよ」


父が驚いた顔をさせて、蒼真を見た。

本当に驚いた という顔だ。

蒼真の方は、父が驚いたことに怖気づいた。

「え?何かおかしかった?」

息子が怯えているのに気付いて、父は苦笑した。

「はは、まさかな。同じ事を言われるなんてな。びっくりしたよ」

「同じ事?」


父は自分の顔を見せないようにして、蒼真の頭をガシガシと撫でた。

「いてえ」

「ははは。気にしなくていい。それよりも、明日はどうするんだ?」

「明日?ああ、日曜日だから、友達と遊びに行くよ」

「そうか」


蒼真は改まって、父の顔を見て母を思った。

あの日記を見て、父はさらに香に対しての気持ちを復活させてしまったように思う。

それではダメなんだ。

「あのさ」

「ん?」

「もうそろそろ。その皐月さんについての事は思い出にして、母さんを見てあげて欲しい」

しばらく沈黙。

「蒼真。母さんとは、もうダメかもしれない」


ここでマンガとかドラマなら、大きな稲光がピカッとして、エンディングが流れるだろう展開だ。

「は?何故」

父はA5サイズの茶封筒を蒼真の前に出した。

よーく見ると、茶封筒の右下に探偵事務所の名前が印刷されている。

「え?」

(たんてい?)

中身を出して、いくつか写真が散らばったので、慌てて拾い上げると。

「え?」

父の親友と母が腕を組んでいる姿。お似合いに思ってしまった。

行先が・・。

「ええ~」

書類に目を通せば、16年前からの付き合い。

(母さん、二股~)


「お前は、俺にそっくりだから俺の子だと分かるが、くるみは分からない」

「え~、それって」

(親友の子?)


あまりにもショックが大きすぎて、ちょっとひとりで考えたいと書斎を出た。

完全に昼メロの内容じゃないか。

そんなバカな。






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