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お昼ご一緒に(高校生編)

準備運動後、ランニング トラック5周。

ボールを使っての100Mジグザグ走行等、1時間ほど合同で基礎練習をして

体を慣らした後、試合をすることになった。


最初は1年のチーム同士から。

1年は半分のタイムでの試合。2、3年は通常タイムでの試合と

説明がされ、蒼真は赤のゼッケンを手渡され参加することになった。


蒼真が男として生まれ、自分の事を真剣に考えた時に決めたことがある。


(女子では出来ないことをする)


それが、サッカー。

確かに女子サッカーもあるが、男子として出場するのとは

分けが違う。野球・剣道や柔道でも良かったのだが、1度自分の体力を知りたいということもあり

中学に入学と共に、サッカーへ入部。


女子とは比べ物にないくらいのハードさ。

女子と男子とでは、どうしてこうも体力の違いが出るのかと思うくらいだ。

(自分が女性だった頃の記憶があるからこそ、比較出来ることなんだろうな)

そう思いながら、走ってボールを奪いに行く。

パスを出して味方に繋ぐ。

それが意外に楽しいと感じて、今年で4年目。

我ながらよく続けられていると思う。


観客席側から、妹と里羅と多くの女子が見える。

(え?あんなに観客いたかな?)

試合に集中しないといけないので、直ぐに切り替えてボールを奪い、味方へパスを送る。

味方がゴールへ向けて3度目のゴール。

入った。


ワー・・・・。



やけに歓声が大きい。



試合終了のホイッスルが響き、両校の挨拶が済み、監督の所へ1年が集合する。

叱責や褒め言葉や注意を混ぜながら、監督の説明を聞き、ようやく解放されると

次の試合の合図があり、直ぐに2年へゼッケンを手渡す。

「桂木、最期のカットパスはナイスだったな」

「お前こそ、シュート決まったな」

「上手くいって良かったなあ」

とか、褒めあうと緊張が解れるし、興奮状態も落ち着いてきて雑談になっていく。

水分補給に汗を拭っているうちに

ホイッスルが鳴り、直ぐに2年の試合が開始された。



「ところで、観客増えたな」

「ん?」

1年チームメイトのひとりが、水筒のお茶を飲みながら観客席を見ながら呟いた。

それをみんなで「ん?」的な感じで何気なく視線を観客席へ移すと

テニス部女子(ラケットを持っている子がいるので、たぶん)が結構いる。

他にも陸上女子かな?という半袖シャツ短パン姿の女子とか。


「女子が多いな」

「S高校って、女子多いな」

「いやいや、F高と変わらないって」

「練習なのに、こんなに集まるものなの?」

「どうだったかな。俺達は初めてだからなあ。2年か3年の先輩に聞かないと」


実は中学まではサッカー部は、それほど成績が良いわけではなく

練習に他の中学へ行っても、それほど人は集まらなかった。

応援席は、数人。家族か友達くらい。

今回は、100人はいるだろうと思う人数。

「練習であれだけ人集めるなんて、ここのサッカー部強いの?」

「おいおい。こことうちは同等レベルで2回戦か3回戦だぜ」



そんな内輪話をしていると、急に


「せ~の。F高の そ・う・ま く~ん。どこですか~?」(大勢の声)


という大音量が聞こえてくる。


その名前は1人しかいない。

1年の全員が蒼真へ視線を向けた。

「え、何かした?」

蒼真がフルフルと首を横へ何度か振るが、チームメイト達は

「行って来い。何かやらかしたとしか思えない」

「俺も着いていってやるから、行って来よう」

と、友人1人に腕を引っ張られ観客席へ連れて行かされることになった。

「マジ。俺、何も呼ばれるようなことした覚えが」

「まあ、よく分からないから。行って聞いた方が早い」


2人で観客席へ向かうと

「あ、蒼真君だ」

「あ、本当だ」

と、何人かに言われて顔を上げたが、知らない顔ばかり。

「あの、誰が呼んでいるんですか?」

不思議に思って尋ねると、どう見ても20代から30代の女性が

トレーニングウエア姿で前に出てきた。

「ごめんね。皐月さんの携帯待ち受けが君だったから。実物見たくて

呼んじゃった」

「てへ」 とされて、蒼真と友人は「え?」という困惑顔になった。


そこへすかさず、拙いと思ったのか瑠璃がその女性(実はコーチ)の前に

慌てて出てきて

「ごめんなさい。蒼真君。ここはいいので、練習へ戻ってください」

ペコペコ頭を下げる。

「る、瑠璃さん?」


「皐月さん、それはないわ。紹介してよ」

「そうそう。蒼真君の隣の彼は誰?かなりイケメンの」


蒼真の隣に立っていた友人は、びくっと体を震えさせた。

悪寒を感じたのか蒼真に小声で

「撤退」

蒼真も頷き、瑠璃さんとコーチや他の女子達が揉めだしたので

踵を返し、慌てて引き返した。


「あ、蒼真君」

女子の誰かが叫んだが、振り向く勇気はなかった。




2年、3年と練習試合が終わり、昼食を取ることになった。

「校内で昼を取ってくれ。1人では食べるな。必ず4、5人で行動しろ。

他校だから揉め事はするなよ」

「はい」(全員)

「1時15分にここに集合だ。時間厳守忘れるなよ」

「はい」(全員)


上下関係が緩いF高は、それぞれ学年関係なく4,5人が固まり

お弁当を広げだした。


蒼真はチームメイト3人と一緒に、グラウンドの水飲み場近くに陣取って

座り込み、お弁当を広げたところで、

妹のくるみと里羅が慌てて入ってきた。

「間に合った~」

「お兄ちゃん、メール遅いよ」

「そうだったか?解散して直ぐにメールしたんだけどなあ」


お昼は一緒に食べようということになっていたので、蒼真は解散後に直ぐ

どこかへ見学に行っていたくるみに連絡したのだ。

1年の蒼真の試合が終わると、グラウンドまで蒼真を見に来ていた女子テニス部が

戻っていくところをついて行き

くるみは連絡がくるまで、

そのまま瑠璃のいる女子テニス部を里羅と見学していた。



「おお、くるみちゃんの隣はどこのどなた?」

チームメイトの白雪はくせつが、蒼真の肘を突いた。

「ああ、彼女は父の高校時代の後輩の娘さん。皐月 里羅さんだよ」

「里羅です。よろしくお願いします」

「彼女はN中2年なんだ」

「そうか。俺は白雪。よろしく」

「俺は、木野きの

あずま


にこにこ笑顔で男性陣が里羅を迎えたので、里羅は顔を赤らめながら頷いて聞いていた。

「うわ、くるみちゃんのお弁当、美味しそう。くるみちゃんが作ったの?」

白雪がにこにことくるみの隣を陣取り、くるみの手元のおかずを覗き込む。

「全部お兄ちゃんが作ったんだよ」

「え?桂木が?」

白雪は驚いて、蒼真を見る。

「へえ、もしかして。蒼真、その手元のも?」

木野が中学では、蒼真の母親が作っていたことを知っていたので、驚いていた。

「ま、まあな。料理が作れるようになったから」

「1つもーらい」

東が豚肉のチーズ巻を口に放り込んで、

「おお、美味い」

「え?どれ」

木野は、からあげをつまんで、口に入れる。

「あ、うまっ」


「待て。俺の弁当」

蒼真は、慌てて口に入れて、口をもごもごさせて死守。

それはまるで、ハムスターのひまわりの種を頬袋に入れるようなイメージ。

「蒼真君、イケメンの口がハムスターになるのは、ちょっと・・」

里羅が憐みな目で見つめるので、蒼真は一瞬怯み

その間に、3人に出し巻たまご、きんぴら、たこウィンナーを奪取されてしまった。

「俺のおかず・・」





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