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練習試合当日 (高校生編)

練習試合のある土曜日。

今日は学校は休みだが、10時からS高校で練習試合。

予定では3時に終わる。


お弁当が必要ということで、母にお願いしようと考えたが、

母は料理が苦手なので、任せると、冷凍食品ばかりになりそうなので

自分で作ることにした。

母にキッチンを借りることを告げると、ついでに朝食もと言われ

お弁当のおかずの残りを食べてもらえばいいかと

多めに作っている。


おにぎりは梅、じゃこゴマ入り、しゃけ 3種類をいくつか。

おかずは、からあげ、たこウィンナー、煮物、しゃけは小ぶりにして塩焼き。

豚肉のチーズ巻、きんぴら、だしまきたまごに、

レモンの薄切りはちみつ漬け。


お茶は冷凍庫で凍らせてある。


この場を離れると、もしかして全部食べられる恐れも感じ、

弁当箱に入れる分をお皿に分け、弁当箱の横に置いておく。


完全におかずが冷めるまでの間に、直ぐに出掛けられる準備チェックを始めることにした。

キッチンから数分離れて戻ってみると

両親と妹が、テーブルについて食事を始めようとしているところだった。


(いつのまに)


蒼真がキッチンへ戻ってきたことに気付いた母は、おかずを一口 口に入れて笑顔だ。

「蒼真~。美味しいわ、このきんぴら」

「お兄ちゃん、私もお弁当作って。お兄ちゃんの試合見に行きたい」

「蒼真、お前凄いな」

もごもご口を動かしながら話すので、実はまともな会話でなく実際は、もごもごという咀嚼音付だ。


「・・・。出来上がるの、待ってた感じだね。なんだか不意打ちを食らった感じだ」


「えへへ。実は、こっそり出来上がるのを見てた」

妹が白状し、共犯にする為に、両親に出来上がった時点で携帯で知らせたのだ。

「・・・。そんなことしなくても、母さんに言われた通り、多めに作っておいたはず」

と、テーブルの上を見ると、お皿には少量しかない。

(どんな早業?)


「ストップ。くるみの弁当に入れる分は残してくれ」


しばらく3人の箸が止まり、その間に、蒼真はくるみの弁当分を取り分け

「どうぞ」

と、再開の合図をすると、直ぐに完食を見ることになった。

「ごちそうさま」

「美味い朝食だったな」

「お兄ちゃん、有難う」


「いえいえ」


くるみの弁当を作り終えて手渡し、自分も取り分けていたおかずを詰め込む。

そうして時計を見ると、丁度時間になる。

「さて、行くか」

「は~い」

「本当に着いてくる気か?」

今更聞いたのだが、背後に着いてきている妹は、リュック型バッグを背負い

準備万端。

「もちろん」

意気込みが違った。



玄関までは母が着いてきて、扉前で手を振ってくれる。

高校生にもなって、たまになのでいいが、気恥ずかしい。

父はリビングで「いろいろと健闘を祈る」と意味不明な言葉をボソリと言って

片手を挙げたくらいだ。格好つけの仕草にも思えるが、

何故か先輩なら格好良いから許されるポーズだなと思う息子だった。

「2人とも、行ってらっしゃい」

「行ってきます」

「はーい」


結局、妹のくるみも一緒に連れて行くしかなく、2人で駅へ向かい、2駅目で下車。

その駅のバスセンターへ足を運び、S高行きのバスに乗車した。

「くるみ」

「何」

「今日の試合。一昨日話したけど。父さんの後輩の娘さんで

そのS高1年の瑠璃さんと妹でN中学の里羅さんという子が、来るかもしれない」

「へえ、そうなんだ」

「里羅ちゃんは、お前と同じ学年で、部活も同じだから気が合うかもしれないよ」

「へえ、お友達になれるといいなあ」


バスで15分先の停留所、S高前で降りると、目の前がS高正門。

「初めて来た」

くるみの言葉に、蒼真も頷いた。


「お~い、蒼真」

F高校のサッカー部は、基本現地集合なので、集合場所が学校の場合は正門が集合場所。

既に1年は9割、2,3年は8割集まっていた。

「ああ、悪い」

くるみも一緒に着いてくると、1年の仲間達とは顔見知りなので

和気藹々としたものだ。

「練習試合なのに、応援に来てくれたのか」

「可愛い応援団は嬉しいね」

「えへ、よろしくね」

妹も慣れたもので、笑顔で蒼真の同級生に挨拶している。


そのうち全員集合したので、S高のサッカー部のいるグラウンドへ移動。

正門から直ぐ左手にあるグラウンドだ。

野球部と一緒に使用しているので、半分は野球部が使用中。

反対半分がサッカー部が使用する。

一応、ボール避けに網がついているが、飛んでこないか不安だ。


ようやく全員がグラウンドへ入り、準備体操を始めていると、

女子が1人観客席の方へ走ってくる。

くるみの近くに来て、なにやら話をしている。

蒼真は、自分の妹が変な事に巻き込まれないかが気になる。

(大丈夫かな)



くるみの方はというと、近くまで来た女子は全く知らない子だったが

「もしかしてくるみちゃん?」

と言われて、驚いて頷いた。

「私、皐月 里羅。よろしくね」

と挨拶したので、蒼真の言葉を思い出したところだ。

「そうか。里羅ちゃんなんだ。私は、桂木 くるみ。こちらこそ」

それから、すっかり蒼真についての話が続き、意気投合。

携帯のアドレス交換もして、女子のいわゆる女子トークに夢中。

目の前の蒼真達の練習は、どうやら見ていない様子だった。


目の前をサッカー部員全員でランニングして通り過ぎた時に、くるみの横の女子が誰だか分かると

蒼真は、安心して運動に集中させた。



丁度その頃のテニス部の瑠璃の方はというと、彼女は実は今日が蒼真が

自校サッカー部と練習試合することに

興味があり、行きたくてうずうずしていた。

なんだかんだと言いつつも、里羅のように直ぐに態度や行動には出ないが

瑠璃も蒼真は気になる異性だ。

練習に集中出来ず、ボール拾いも集めている途中でボロボロ落としたり

集めても籠を倒したりと失敗続き。

コーチからも「集中できてない」と注意を受ける始末。


「どうしたの?」

同級生達は心配してくれる。

「ごめん。その、お父さんの先輩の息子さんが、今日サッカー部と練習試合なの。

気になって、気になって」

誤魔化しきれないので、白状する。

「なるほど~。今日って、F高だったよね」

「そうそう。イケメン多い高校。ちょっと紹介してよ。イケメン?」

「うん、イケメン。携帯に写メがある」

「うわ、見たい見たい」

つい3人でおしゃべりしてしまい。

「こら、そこ」

やはりコーチに見つかり注意されてしまった。



女性コーチの前に3人は並び、何故集中出来ないのかを話しなさいと立たされる羽目に。

背筋を伸ばして並び、その前にコーチは腕を組んで立っている。

他の部員達は、そのまま練習。

「さっきから、ボール拾いが何度も中断して、おしゃべりしているけど。

やる気ないのかな?」

穏やかに話しているが、目が笑っていない。


「すみません」

瑠璃は慌てて謝罪する。

「どうして?皐月さんだけ頭を下げるの?」

「原因は、私です。その、今日父の先輩の息子さんがサッカー部に来ているので

気になってしまって、集中出来ませんでした」

すみませんと頭を下げると、コーチは首を傾げた。

「サッカー部?確か今日は、F高と練習だったと聞いているけど。知り合いがいるのね」

「はい」

「もしかして、イケメンなの?」

「はい」

瑠璃が素直に返事をすると、コーチも興味を示した様子で

「写真とかある?」

「携帯に写メがあります」

「え、本当?見せて見せて」


瑠璃は、コーチってミーハーだったかしら?と不思議に思いながら

携帯を持っていき、先日の写メを見せると。

「うわああ、イケメン」

ついコーチが大声を上げて感想を述べたので、周囲が何事かと一斉にコーチへ視線を向けた。

瑠璃と一緒に注意を受けていた2人も携帯を覗き込み。

「うわあ、格好良い~」

「名前なんていうの?」

「え、あの・・。蒼真君」


コーチは、携帯を瑠璃へ返すと。

「ちょっと本人見てくる。F高って、イケメンが多くてレベル高いのは本当なんだわ」

と、テニスコートからダッシュして、サッカー部のグラウンドへ向かってしまった。

「あ、コーチ」

と、瑠璃がどうしようと思って周囲を見渡すと

「コーチだけずるい~」

と、全員が走り出した。


「ええ~、ちょっと待って下さい」

瑠璃は叫んだのだが、走って行ってしまう。瑠璃も慌てて後を追いかけて

女子テニス部のコートには、誰もいなくなった。




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