表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロム  作者: 芳奈揚羽
3/29

守護者

「クロム・・・お前は何者だ・・・?何故俺たちを助けてくれた?何故この時間にこんな山奥にいたんだ?」


 真也が尋ねてくる。自然体を装ってはいるが、何時でも武器を構えることが出来るようにしている。


(腕は良いみたいだな)


 残りの2人も、クロムを取り囲むように展開しているし、クロムが変な挙動を見せれば直ぐに攻撃してくるだろう。


(あれだけ力の差を見せつけられてもまだ戦おうと思えるのか)


 一般的に見ればそれは蛮勇と呼べるものだろう。だが、レジスタンスという視点から見れば、決して勝利を諦めない姿勢は好感が持てる。クロムは、彼らの評価を一段階上げた。そして、先程の質問に応えるべく口を開く。


「俺は旅人だ。諸国を旅しながら<壊術かいじゅつ>の修行をしている。ここに来た目的は、お前らレジスタンスに合流するためだ。」


(勿論、真っ赤な嘘だが)


 ここで彼が言った<壊術>とは、真也達や、あの白戦闘服の連中が使用していた、この世界ティターニア特有の能力の事である。勿論、クロムは<壊術>など使用することは出来ない。裏技を使えば使用出来るようになるが、彼はそこまでする必要性を感じていなかった。


 この力は、壊すということに特化しており、基本的には何かを破壊することしか出来ない。先程のゴーレムを作成した男は、ある意味例外的な存在だろう。恐らく、この世界のもう一つの能力<想術そうじゅつ>と組み合わせて使用していたのではないだろうか。


 ここまで聞くと何でもない能力のように思える。現に魔法世界などでは、それよりも遥かに多彩な事が出来るのだから。炎や水、雷を生み出し、空間を歪曲させ、時間さえも支配する。こういった能力を、万能型と呼ぶ。


 しかし、<壊術>のような特化型は、単一の事しか出来ない代わりに、そのたった一つに対しては、他の追随を許さない程の力を発揮する。<壊術>の達人なら、物体はおろか、現象や空間さえも破壊することが出来る。普通の人間はやらないだろうが。


「レジスタンスに入りたいと・・・?」


 真也が訝しげに聞き返す。自分たちの敵のスパイ等の可能性もあるため、慎重になっているのだろう。


「そうだ。どうやら、ユブール王国は途轍も無い事をやろうとしているそうじゃないか。ここの学者達は狂ってるらしいな。この世界を壊されると俺も困るんだ。」


 だが、クロムの言葉に3人は言葉を失った。何故なら、それは最重要機密で、レジスタンスにも、王国側ですら知っている人間は極僅かな筈の情報だったからだ。


 その情報を市民に公開すれば、恐らく暴動が起きるだろう。他国からも戦争を仕掛けられるかもしれない。よって、出来るだけ内密に事を進める必要があった。


 そう、ユブール王国が世界を破壊するレベルでの<壊術>を発動しようとしている為、クロムはこの世界に来たのだ。






 ガイア理論という単語を知っているだろうか?


 簡単に説明すると、惑星には自我があるという話なのだが、結論から言うとその理論は正しい。


 更に言えば、惑星だけではなく、宇宙全てを内包した、次元そのものにも意思がある。クロムは、様々な次元からSOSを受けて問題を解決して回っているのである。


 彼のような存在な複数存在し、『守護者』または『抑止力』と呼ばれる。彼らは、知的生命体が滅亡の危機に陥ったり、惑星や世界そのものが何らかの危険に晒されて居る時に現れ、問題を解決していく。


 基本的には、聖獣や神などの事を指すのだが、彼は守護者の中でも珍しい人類であった。ただ、その力は過去のとある事故により、既に人間から隔絶していたが。


 彼は今回、この次元、ティターニアからSOSを受けてやってきたのだ。依頼内容は、ユブール王国の大規模実験の阻止。そして、研究データの破壊。どうやらユブール王国の国王は、これが世界を破壊し尽くす程の術式だとは思っておらず、他国への侵略兵器位にしか考えて居ないらしい。


 それはそうだろう。正常な人間なら、自分をも巻き込む攻撃などするはずもない。だが、この術式の開発陣はどうやらイかれているらしく、世界を破壊することに対して何とも思っては居ないようだ。


 偶々その術式構成を見た人間が、これは危険だと王に打診するもそれを信じようとしない王に門前払いを受け、以降、レジスタンスとして活動しているらしい。


 本来、クロム一人で十分対処が可能な問題である。それ程に守護者とは、人間を超越した存在なのだ。


 しかし、ここで一つ問題が発生する。それは、彼は何時までも一つの世界に居る訳にはいかないということ。世界は無数に存在するので、一つの問題が片付いたら次が現れるのだ。つまり、この問題を解決した後の指導者が居ない。


 また同じ事を繰り返さないように、人々を導く存在が必要なのだ。そして、その存在には、実績とカリスマが必要になる。


 そこで、世界が一人の主人公を選び、その人間をクロムがサポートし、共に事件を解決するという決まりが出来ていた。


 そう、今回の主人公は銀城真也。後の真ユブール共和国の初代大統領であり、<大災害>解決の英雄である。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ