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クロム  作者: 芳奈揚羽
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魔女、降臨

「・・・【不滅の魔女】だと!?そんな大物が来ているのか!?」


 司令室に声が響き渡る。空間投影モニターには、青いタコのような容姿の警備隊長の姿が映っており、彼からもたらされた情報だった。つまり、やってきた違法転送者は【不滅の魔女】であった、と。


「はい。魔力、DNAなど、あらゆる検査を施して、既に本人なのは確認済みです。ただ、守護者連盟には無断でやってきているそうで・・・。」


 警備隊長も額に汗を浮かべている。


「守護者連盟に無断でって、ヤバくないですか?ここ、今は渡航禁止されているんですから、最悪の場合守護者資格剥奪もありえますよ。」


「うむ・・・。」


 部下の言葉に背筋が寒くなる艦長。


 何故、彼らがこんなに混乱しているのか?それは、頭が一つで腕が二本、足も二本の・・・つまり、人類種の守護者が非常に少ない事が原因だ。


 世界は無限に存在し、惑星だって無限に存在する。その為、そこに住む生物は多種多様な姿をしている。その中で、何故か人類種の生物が住む惑星は非常に多いのだ。警備隊長のようにタコのような姿をした生物や、スライム種族なども多少は存在するのだが、やはり圧倒的に人間の姿をした種族は多い。


 『あれ?なら、人間型の守護者も多いんじゃないの?』と思われるかもしれない。確かにそうだ。実際、守護者連盟に登録している人類種は一万人を超える。・・・が、守護者ランキングで五桁以内に入っているのは、たったの百人足らず。四桁の大台に入っているのは、クロムを含めて僅かに十人しかいない。つまり、人間型の種族は、数は多くても、基本的にはそこまでの性能を持たない種族なのだ。


 筋力も頭脳も、人間型の種族より高い種族は星の数ほど存在する。彼らが優れているのは、その繁殖力と、技術力である。


 他種族よりも圧倒的な繁殖能力によって、惑星を支配し、様々なものを平均的に使いこなす技術力によって生活を豊かにする。魔術、神性術、超能力、科学など、扱える能力は多種多様で利便性に富んでいるのだが、器用貧乏とでも言えばいいのか?突出した一が存在しないのだ。


 ある意味、この人類種の到達点が、【神滅のクロム】と【不滅の魔女】であると言える。どんな武器や能力でも平均以上で使いこなし、状況に合わせて変化させる。彼らはその戦い方を極めた者たちだ。そして、人類種の中で守護者ランキングにおいて一番と二番である。三番目になると、大きく順位を離されて四千番台になってしまうのだ。


 勿論、他種族の中でも、変身魔法などが使える人材は存在する。だが、それを含めても、人類種の支配する世界で自由に動ける人材が少ないのだ。


 |人類種が支配する世界からのSOS(需要)は多いのだが、そこで|怪しまれずに問題を解決出来る人材(供給)が少なすぎるのだ。特に、【神滅のクロム】と【不滅の魔女】はかなり上位の世界でも活動出来る為、今ここで【不滅の魔女】の守護者資格が剥奪などされれば、直列世界全体が大混乱に陥ってしまうだろう。それを、艦長を含めクルー全員が恐れていた。


「しかも、わざわざハッキングまでしてやってくるということは・・・。」


「十中八九、【神滅のクロム】に何かが有ったってことでしょうね。前に、【神滅のクロム】と【不滅の魔女】は交際しているとニュースで見たことがあります。それが事実かどうかは分かりませんが、かなり親しい間柄だったのは間違いないでしょう。・・・恐らく、お互いに何かがあったら分かるようになっているんじゃないでしょうか?」


 艦長の呟きに部下が答える。


「・・・分かった。【不滅の魔女】の渡航を認めよう。」


「いいんですか艦長!?」


「構わん。詳しく事情を説明してもらいたい所だが、彼女は守護者連盟に報告して渡航の許可をもらう時間すら惜しんだんだ。よほど緊急事態なのだろう・・・。それに、彼女を拘束など出来る人材がここにいるかね?」


「それは・・・・・・。」


 出生世界の格で言えば、彼女より優れている人材は沢山いる。・・・が、実戦経験があり、尚且つ自身の能力を完全に掌握出来ている者など殆どいないのだ。どうせ相手は、直列世界最高の攻勢防壁をいとも容易くハッキングするような女なのだし、放っておくと勝手に飛び出してしまうだろう。


「というわけだ。守護者連盟にはコチラから連絡しておこう。緊急事態だということを強調してやれば、連盟もそこまで重い判決は下さないだろう。【神滅のクロム】の危機ということは、ティターニアの危機ということでもある。もしここで規則に従って【不滅の魔女】を足止めして世界が滅んだ場合、誰か責任を取れるのかね?」


『・・・・・・。』


 無理だ。取れるはずが無い。滅ぶのは一つの世界なのだ。宇宙に存在する数え切れないほどの魂が消え去る。それの責任を取れるものが何処にいるだろうか?しかも、それがただ単純に守護者の力不足などではなく、守護者の足止めによってもたらされた結果だとしたら?


「・・・ッ!」


 部下の一人は、その時の状況を想像して身震いした。それほどに恐ろしい想像だったのだ。


「分かったらさっさと行動するのだ。ティターニアへの転移門を開け!同時に、超次元通信の用意だ!守護者連盟に繋げ!」


 





 こうして、また一人の守護者がティターニアに降り立った。彼女が一体どういう変化をこの世界にもたらすのかは、誰にも想像出来なかった。


次はこのゲーム~を更新します

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