選択
「駄目です、賛成出来ません!!」
「どうしてだ!?元々やろうとしていたことなんだろう!?」
リビングで、クロムと翡翠は言い争っていた。事の始まりは、翡翠が「これからの話をしましょう。」と言って、お互いに自分の意見を言い合ったのだが、意見が全く別れてしまったからだった。
クロムは、翡翠からこの世界の現状を聞き、そして、自分の持つ『韋駄天』という道具の中に、この世界を救おうとしている人間たちが入っているのを知った。それならば、自分たちも参戦し、この世界を救うべきだと主張した。
しかし、それに対して翡翠は、レジスタンスの人間は開放し、クロムのことに関する一切の記憶を消去した上で、クロム自体はこの拠点に残り、空間魔法の訓練をするべきだと主張した。双方の意見が、真っ二つになった瞬間であった。
それから一時間程、二人で叫び合っているが、お互い同じようなことしか言わない為に話が進まない。要は、お互い自分の譲れない物を持っているからなのだが。
「今のマスターに何が出来るんですか!?言ってましたよね、自分の事を「才能が無い」って!今朝までの貴方が持っていた経験値を全て喪失した状態で、一体何が出来るんですか!?今の貴方が一緒に戦っても、レジスタンスの足で纏いにしかならないんじゃないですか!?」
「ぐっ・・・!」
この辛辣な問いに、クロムは答えることが出来なかった。そもそも、翡翠だって今のクロムをマスターと認めていない訳ではない。いくら今まで経験してきた事を消失して初期状態に戻ろうとも、彼女にとってマスターはマスターである。別に、彼が憎くてこんな事を言っているわけではないのだ。
「いいですか?私達が『守護者』として呼ばれたということは、もうこの世界に猶予がないことを示しています。私たちを呼ぶというのは、世界にとっても最後の手段なんです。・・・つまり、この世界の人間だけでは、この問題を解決出来ないと世界が判断したということなんです。」
「・・・だけど・・・・・・。」
クロムにも分かっているのだ。彼女が言いたい事が。彼女が、クロムの事を心から心配しているからこそ、敢えて心を鬼にして言っているということを。・・・だが、それでも認める事は出来ないのだ。
「でも、今の貴方は、この世界の『主人公』よりも格段に弱いんです。確かに、マスターが制作した武器や防具を使えば、戦力に位はなるかもしれません。・・・それくらい、前までの貴方が作った道具は・・・一言で言えば酷い物ばかりでしたから。でも、いくら貴方が強い武器を振り回しても、修練を積んだ敵にはアッサリと負けてしまうかもしれません。・・・そうなった時、どうするのですか?もう、今の貴方には黒石版という。『都合のいい記憶媒体』は無いんですよ?また、記憶と経験を無くして、最初からスタートするんですか?」
彼女は、そこで言葉を切って・・・告げた。
「そうなったら、今度こそ間に合わない。空間魔法を習得する間もなく、この世界の消滅に巻き込まれて終了です。虚数空間で、永遠に死に続ける事になるでしょう。・・・・・・それでも、それを理解した上で、貴方はこの世界に首を突っ込むのですか?今の貴方に、そこまでの理念が、信念が・・・この世界を救いたいと思う、強固な意思が、有りますか?」
彼女の強い瞳に射抜かれたクロムが出した答えは・・・・・・
短いですけど投稿。他の作品も、後少しで最新話が出来るので待ってて下さい。




