《マオウ?》
『行くのかよ!』
「あふりか大陸って何だ?」
『聞けよ!
はぁ。アフリカ大陸ってのは、動物が沢山いる暑いところ? だな。行ったことないからよく知らないけど。』
ゾウとかライオンとかキリンとか。
そう言ったらブラウは米神に指を這わして考え込みやがった。
なんだよ、どうかしたのか?
「んーと。ゾモモウリとかキマイラとかキリン(神獣の)みたいなやつか?」
ゾモモモ? いや、知んねえし!
因みに、後日気になって聞いたんだが、ゾモモモ、改め、ゾモモウリっていうのは一言でいうとタワシとウリのモンスター。
ゴワゴワの剛毛を持ったウリの姿で転がってきて、ぶつかるとダメージのわりにスゲェ痛いらしい。
見てみたいような、見てみたくないような。複雑だ。
キマイラってのはヤギ、ヘビ、ライオンの頭をもつモンスターで中堅プレイヤー用のダンジョンによく出没していた。
口から火を噴くのには悩まされたぜ。
キリンってのは、あれだろ、名君が即位したときに現れるってゆう。キリンはキリンでもキリン違いだ。
「竜闘山脈≪グランドラン≫の一つにアララト山ってのがあってな。その山の中腹に用事があるのさ。山って言ってもデケェから都市がまるごと一つ入ってるんだけどな。リュビ大陸の王族が暮らす、つまり王都だ。
ドワーフが人口の半分を占めているから鍛冶屋が多く、剣とか装飾品のたぐいは質が高いわりに安く買えるぜ。」
そろそろ剣を買い替えようと思っているんだ。
と、少し刃こぼれしかけている剣を鞘から抜いてみせると左右にヒュッと音が鳴るくらいに振り抜いてからまた納めた。
このまま、ブラウに着いていくとするのなら杖を買い、投擲用のナイフを買うほうがいいだろう。しかし、暗黒大陸という生命の危険が当たり前のようにある、非常に危険な場所にまで着いていくほどの義理はクリスにはない。むしろ、リュビ大陸で別れるのが得策に決まっている。
だけど、そんなことはどうでもいい。
頭では言われなくとも理解しているのだ。
『オレも行くぞ。』
「ああ、いいところだ。闘技場とかもあるから人も集まって年中ワイワイしてるぜ。
そうだ、二人で出てみるか? 優勝したら剣とか杖とかいいやつがもらえるぜ。」
『優勝はする。暗黒大陸にも着いていく。』
「目指せ優しょ・・・・う?・・・!?・・・!! ゴホッ!」
ブラウが驚きすぎて咳き込んでいるけど、そんな驚くようなものか? べつにたいしたことじゃないだろ。
オレにそんな興味深いこと話したら行きたがることなんて想像に難くないのはすぐに分かりそうなものなんじゃね?
むしろオレに着いてきてほしいから話したんだと思ってたんだけど。どうやら違ったみたいだな。
「ハァ、マジで言っているのか? 危険なんだぞ。」
『マジだよ、そんなに心配しなくても、オレの実力はブラウが一番知っていることじゃないか。
それに、そんなメチャクチャ面白っ、んん! メチャクチャ危険そうなところに一人でいくなんて、許さないからな。』
おっと、つい本音が。
「お前、そっちが目的か・・・ハァ、もういい。そうだよ、お前なら暗黒大陸に一人で行っても平気だよ。オレが保証してやるよ。
むしろ魔王の首でも取れそうだ。いっそのこと初めてのエルフの魔王にお前がなっちまえよ。」
魔王に? オレが? 冗談キツイし、そんな面倒くさいことぜってぇしたくないね、おれは。
「あ、なれないとかは言わないのね。」
『んー? ブラウが言うんだったら、なれるんだろ?』
自分の言ったことには責任持てよ。
「何、コイツ、ちくしょう、カワイイ!」
は? オレがカワイイとか目が腐ってるんじゃねぇの?
にしても、魔王ねぇ。
あれだろ、おどろおどろしい邪悪なオーラを出してて、カリスマ性があって、山羊みたいな角が生えてて、ってそれはサタンか、ルシファーか。ルシファーは堕天使だっけ? て違う、脱線、脱線。
ムダに凝った造りの城に住んでて、ムダに広い王の間の、ムダに高い王座に座って、ムダに偉そうな高笑いをしてるヤツ、だろ。
うわ、そんなアホ丸出しの恥ずかしいヤツになんかなりたくねぇ!
「おしい! それは一つ前の魔王だな。ちなみに、一人称は朕、だ。」
『なぜあえて朕、俺様とか我とかだろ! 中国かぶれか!!』
何か一気に魔王の威厳とかいうものがなくなったよ!?
あらぬ方向にすっ飛んでいったよ?
魔王の側近とか何やってやがるんだ。直させろよ!
いや、魔王だから独裁なのか。
「うんうん、混乱してるなー。
オレも聞いたときは固まったもんなー。
ま、皆が通った道だ。気をしっかり持て。」
慰めてくれるのはうれしいけど、とってもうれしいんだけど、できればずっと知らないでいたかったなぁ。
知られざる 魔王の一面 垣間見た
クリス、心の俳句。
・・・はっ! んなもんやっている場合じゃねぇよ。何してんだオレ。
「とりあえず、寝ようぜ。」
『ん。そうする。』
余談だが、結局興奮して寝つけず、オレらは寝坊することとなった。




