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《チョロイ》

『なんて考えてみるけど、さっぱり分からん。何処だよ、此処は』


もしかしてコレって記憶喪失ってやつか、いやいや落ち着け。思い出せ、オレ!


オレの名前は高嶺たかね 玻璃はり、女の子みたいな名前って言うなよ、気にしてるんだからさ、母さんがもっと男っぽい名前にしてくれていたらオレの身長ももっと伸びて、いや、そもそも父さんが止めて………無理だな、かかあ天下だし。


歳は17歳、165センチの45キロ。顔はこの通り女顔、って今、顔を触って気付いたんだけど。


『耳、とんがってねぇか?』


そう、オレの耳、耳がとんがっている、これじゃあエルフじゃねぇか、ん? エルフ? エルフ!?

まさか此処ってゲームの中!? ってことは


『あー、あー……はぁ、声もクリスかよ』


まあ、これで何となく分かったことがある、オレはクリスという名のキャラクターの姿をしている筈だ。


見た目17歳前後の1735歳、170センチの47キロ、エルフらしい中性的な美人、このゲーム、プレシャスワールドでは珍しい黒目黒髪、のハズ。


オレは肩胛骨の辺りまであるくせの無い、手触りの無い黒髪をつまみ上げて目の前に翳し、確信を得た。


『間違いねぇな、クリスだわ、つーことはアレか、魔法使えたりすんのかよ。魔法……それいいな』


よーし、一発やってみっか。

右よーし、左よーし、右よーし、上空よーし、ついでに後ろよーし。目標は10メートル先の岩場。


ヤルか。


『安全性を考えて………《ファイアボール》』


ボッ………ドカン!


あんれぇ?


オレの翳した手から放たれた手のひら大、20センチ程の火球が狙いどおり岩にぶつかり弾けた。


そこまではいい、いいんだ。


ただ………


『岩が半壊ってどうなんだ……』


ぶつけた岩に近付いてよくみると表面がボロボロになっていた。なるほど、熱ではなく、ぶつかったときに生じた爆風によって弾けたようだ。


にしても、一発で発動するなんて


『けっこう簡単なんだな。』


「何が簡単なんだ?」


『そりゃあ、魔法……って、うわぁ! 誰!?』


つーより、どっから湧いてきたんだ、さっきまで誰もいなかったぞ!?


「ん? 人の名前を訊くときは自分から、まあいいか、オレはブラウ、人間の冒険者さ。お前は?」


どっちの名前を名乗るべきかな、外見がクリスなんだからクリスでいいよな?


『オレは、オレはクリス、エルフだよ』


エルフだと言うとブラウはしげしげとオレの尖った耳を見つめた、そして腰を屈めてオレと同じ目線にしてオレの瞳を覗き込んできた。


ブラウの瞳に映るオレはどこか庇護欲を掻き立てる不安そうな顔をしていた。もともと童顔のクリスはその様子も相まって15歳位に幼く見えた。


にしても、背が高いな、分けろ。


ブラウの身長は目測だが180センチは確実に越えているだろう。歳は18、19ぐらいか、程よく筋肉もあって頼れるアニキって匂いがプンプンする。


「なあ、お前、一人か、冒険者でもないエルフがこんなところに一人ってぇのはちょっとばかし危なくないか?」


さっきから言う冒険者ってのはなんだ?


『冒険者って? ていうか、此処どこ?』


「は? 冒険者を知らないのか? しかも此処が何処かも分からないって、お前、記憶喪失か?」


んなこと言われてもイキナリこんなとこに現れたんだし、マップ機能も使えなかったし、とりあえずそういうことにしておいた方が都合がいいか。


『うん、名前とか魔法とかそれくらいしか憶えてないんだよな。


なあ、ブラウは旅をしているのか?』


「あ、ああ、冒険者ってのは冒険者ギルドに登録した奴のことだからな、色々渡り歩いている」


『じゃあ、オレも連れてってくれよ。記憶を取り戻すために旅をしたいんだけど一人じゃ不安だろ? 魔法使えるから役に立つハズだぜ?』


んでもって、下から涙目で見つめる、服を掴むアクセントも加えた。これで落ちるはず、ブラコンの兄貴は落ちたぜ。


「う、わーったよ、連れてってやっからそんな目でオレを見てくれるな! 頼むから!


犯罪者にはなりたくねぇ!」


フッ、チョロイな。


『本当か!? アリガトな!』


内心そんなことを考えているなんて微塵も顔には出さずにオレは無邪気に喜んでブラウに抱きついてみせた。


「くそう、これだからエルフは苦手なんだ、人を散々魅了しておいて無自覚なんだからな!」


誘惑に負けてオレの頭を撫でつつブラウは叫んだ。


残念、オレは故意にやってます。


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