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空腹に耐えられなかった伯爵令嬢

「ねえ、僕たち何時まで此処にいの?」


 アランが聞いてきましたわ。


「あたくしたちは、駆け落ちをしてきたのですよ。家出をしてきたのです。帰れるわけがないでしょう」


 そう言うと、アランは大層驚いたようで、薄い色の茶髪を振り乱して泣き出してしまいました。


「僕、お父様にもお母様にももう会えないの!」


「あたくしと結婚するのよ。これ以上の幸福はありませんわ」


「結婚!? カミーユと?」


 とても素っ頓狂な声で、驚きますものですから、思い切りアランの足を踏んずけてやりましたわ。


「それで? 何時になったらこの屋敷に入れますの?あたくしはとてもお腹がすきましたわ。早く、お風呂に入って暖まって、鶏のクリーム煮が食べたいですわ」


「カミーユ……この家には誰もいないよ。僕の家は貧乏だから、お父様とお母様がアルテアに働きに行ってるんだよ。

 だから、僕がカミーユのお家に預けられているんじゃないか 」


 泣きじゃくりながら、アランが言いますの。

 アランの言葉にガ--ン!! でしたわ。

 貧乏ですって!? アランの家が貧乏ですって!?

 あたくしはこの時、初めて知りました。

 アランの家は、貴族だからお金があるのだと思っていましたわ。


「では、この屋敷には入れないのですの?」


「うん」


 よくよく見てみれば、屋敷の門には頑丈な鎖で閉じてありました。

 あたくしは大きく溜息をつきました。

 そして、もう一度アランに言いましたの。


「アラン。あたくし、お腹がすきましたわ」


 あたくしより背の低いアランのために、わざわざ膝を折って。言いましたわ。

 アランは茶水晶の瞳をパチクリさせて、言いましたわ。


「うん、僕もだよ。だから、帰ろうよ。カミーユ」


 ああ……ダメですわ……

 アランではないのですわ……

 あたくしをこんなに空腹にさせるなんて……


 小雨が本降りになってきた頃に、あたくしはアランに言いましたわ。


「帰りますわよ」


 と言って、その場を離れましたわ。

 アランは嬉しそうに後をついてきましたわ。

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