さんざんな駆け落ち
お腹がすきましたわ。
小雨も振ってきましたわ。
あ～～～もう最低ですわ！！
「アラン～～寒いですわ～～」
「カミーユが秋のはじめなのに、そんな薄手のドレスで出てくる方が悪いんじゃないか！！」
「まあ、あたくしのせいだと言いたいの！？良いから外套を脱いであたくしに渡しなさいな！！」
あたくしの名は、カミーユ・ヴィトレ－クと言います。
カミーユ・ビダンでも人型ロボットのパイロットでもありません。
タナトス大陸の南側の中央部にある大国、ヴィスティンの王国の伯爵家の長女ですわ。
今の年齢は10歳ですけど、三日前に聞いてしまっだのですわ。
叔母が、伯爵家を継ぐために、格上の侯爵家の30歳も年上のじじいとの縁談を持って来ましたの。
あたくしは、結婚には夢を持っておりましたわ。
王宮のパーティーで見初められるのです。
そして、お忍びで屋敷にやって来て、逢瀬を重なるのですわ。
露見した所で、彼はあたくしの両親に膝を折って、結婚の許しを乞うのです。
「ヴィトレーク家の一の姫を私に下さい」
ってね。
それを30歳も年上のじじいですって！！？
あたくしは決心しましたわ！！
【駆け落ち】！！ですわ。
あたくしは、屋敷に預けられていた子爵家のアランとその夜に逃げましたわ。
アランは、まだ八歳で駆け落ちの意味も分からなかったみたいですけど。
今から、あたくしと駆け落ちをするのよ。と言うと、喜んで着いて来ましたわ。
でも、駆け落ちって、行く場所とお金がないとすぐに困ると身に沁みましたわ。
あたくしたちは、取り合えずアランの子爵家に来ました。
でも屋敷の中にも入れず、屋敷の陰で休んでおりました。
「アラン。お腹がすきましたわ。何かを買ってきてくださいな」
「僕はお金なんて持ってきてないよ。おやつのクッキーのかけらなら……」
あたくしは、アランから外套を奪い取り、クッキーのかけらをひったっくって口に入れましたわ。
でもこれで腹の足しになる訳はありませんわ。
あ～あ～お腹がすきましたわ～
