表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】  作者: 杜若スイセン
再生リスト3:あの子はフロルが連れてきた
69/140

#69【クラブラ】クラ限やってたらいろいろあって引っ張り出されました【月雪フロル / 電脳ファンタジア】

 ところで民草のみんなは、私がゲームで負けるなら誰だと思う?


「時間的には余裕あるけど、これで全キャラですね。今回をラストにしましょうか……あっ」


〈お?〉

〈これは〉

〈キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!〉

〈マジ!?〉

〈待ってましたァ!!〉

〈おさななじみさんおいでませ!〉


 そう、「みなみのおさななじみ」さんだよね。現に一度負けているし、対戦ゲーム自体をほとんどやっていないとはいえ今のところ私が負けたといっていいのはこの人だけだ。

 切り抜きでかなりの知名度も誇っているし、私としては撮れ高的にすごくありがたい存在だ。また来てくれる……どころかクラ限に現れるとは。いや、おさななじみこと九鬼朱音が複数のライバーのファンクラブに入っていることは本人から聞いていたんだけど。


〈今入ったけどタイマン見たいから抜けるわ! あとよろしく!;10000〉

〈今抜けたプロダクツアイコンです。サンドバッグより観客席のほうが面白そう;500〉


「……前から思ってましたけど、民草の団結力おかしくないですか」


 そしてここでファンクラブに入るほどの推しライバーと一緒に遊べる権利を捨ててまでタイマンを望む民草が二人同時に発生。さすがにね、そこまでされたら私も応えるしかないよ。

 しかもここでdisconectの通話が鳴る。


「さては見てたね水波ちゃん」

『そりゃもう。ものは相談なんですけどフロルさん、もうクラ限終わるつもりだったみたいですし、ここから通常配信に切り替えませんか?』

「水波ちゃんが言うならやってもいいけど、もうやりたい放題だね? これ炎上しない?」

『誰が燃やすんですか、視聴者の10割がお祭りなのに』


 それはそう。そしてファンクラブ以外の視聴者もだいたいこのノリであることは、私たちライバーが一番よくわかっていた。










「コンロンカー! 電脳ファンタジア四期生、月雪フロルです。燃やさないでください」


〈えっなにいきなり〉

〈通知で飛んできたけどクラ限やってたのか〉

〈あとで確認するかー〉

〈おさななじみさんだ!〉


 燃えるどころかファンクラブ入会とクラブギフト(ランダムな非会員に一ヶ月分の会員権をプレゼントできる機能だ)の通知がコメント欄を埋め尽くした。いいファンを持ったものだ。

 その間にかくかくしかじか、説明しつつマネージャーが概要欄とテロップを用意してくれて、私は対戦準備。待ってくれたおさななじみさんに感謝だ。たぶん面白がっているだろうけど。


「ごめんなさいねおさななじみさん、いち民草として扱うつもりは私はあるんですけど」

『それは謝るべきは私ですし、本人も下心はないけど覚悟はしてたって言ってたので大丈夫ですよ』


〈これはしゃーない〉

〈俺らが望んでるしな〉

〈配慮できててえらい〉

〈女の子確定してるのは大きいと思う〉

〈おさななじみさん出来た子じゃん〉


 本当はこうしてあくまでリスナーである存在を特別扱いするのはよくないんだけど、ことおさななじみさんはこうして見ている側からも祭り上げられている節があるんだよね。水波ちゃん直々に女の子だと宣言されているからか、ガチ恋勢や杞憂勢も何も言わない。

 ……まあそもそも私につくその手のファンはどちらかというとカップリング厨や百合ハーレム派ばかりで、ガチ恋がいるのかもわからないんだけど。だけどさすがに、おさななじみさんを私の百合ハーレムに投入しようとするのはやめてあげてね。


 そもそも電脳ファンタジアそのもののリスナーが、「面白ければそれが一番」という風土を持っているところはあるんだよね。たぶん私たちはある程度アイドル系Vtuberとは別の楽しみ方もされているんだと思う。「こういうキャラクターが好き勝手あれこれしながら配信をしているだけ」という、ある種Vtuberの原点に立ち返ったような。


「じゃあ改めて、やっていきましょう。おさななじみさんと真剣勝負クラブラ。まあアイテムあり時限ルールのままですけどね!」

『このレベルの真剣勝負でランダム性あるの面白いですね。どうなるんだろう』


 メリカで負けっぱなしのままではいられない。いざ、勝負!






 私は今日はある程度ランダムだったんだけど、あまりにキャラが被らなかったから途中から全キャラ使う縛りのようになっていた。まだ使っていないキャラの中でランダムに切り替えて、今回が最後の一人だ。

 それがこれ、クロノ。言わずと知れた『クロノーシス』シリーズの主人公だ。外伝である『リローデッド』でもばっちり主役だったから、私もクロリロで愛着が湧くほど操作している。


「クロノはけっこう強キャラなんですけど……おさななじみさんミアかぁ」

『あの人趣味出してますね。『セイサガ』の大ファンだから』


 ミアは九津堂の名作RPG『セイクリッドサーガ』のメインヒロイン。肩書き上は聖女で役割はヒーラーが主なものの、とある事情で暗殺術にも優れている。その意外性が主人公を差し置いて他社のオールスターゲームに参戦した理由なのだろうけど、これがなかなか厄介なのだ。

 放っておくとこのゲームのダメージにあたる吹き飛びやすさをゆっくりとはいえ回復してくるのに、無策で近づけば高火力の暗殺術で返り討ちに遭う。相応に操作は難しいとはいえ、相手はあのみなみのおさななじみ(九鬼朱音)だ。好きで使っているというならなおさら、練度不足は期待できない。


「まあやるしかない、っと。いきますよ!」


〈うわうめえ〉

〈今の間合い完璧だ〉

〈おさななじみさんも判断やば〉

〈一攻防でやべーのわかるわ〉

〈なんだこれ〉

〈クラ限これを量産してたの?〉


 一方のクロノは基礎スペックはよくあるRPG主人公、つまり剣主体ながら万能型の勇者タイプなんだけど、特殊能力による変幻自在の戦い方が強みだ。それが間合いに関係するものなこともあって、ミアとの相性は悪くない。

 ミアの暗殺術は射程が狭い。クロノの能力のひとつ、『クロックブースト』を使えば、射程ぎりぎりからミアが下がるよりも早く接近しながら攻撃までできる。

 しかしそこはおさななじみさん、ぎりぎりから暗殺術を出さず、さりとて下がりもしなかった。かなり出が早い攻撃なんだけど、ガードを完璧に通されてしまえばストップだ。

 ガードをいつやめるかの読み合いに勝てば有効打を入れられるけど、分が悪い。反撃が来る前にもうひとつの能力である『クロックリワインド』で素早く戻って暗殺術をかわした。


「上手い人が使うミア、かなりキツいですね……」

『私黙っとこ、もう何が起こってるのかわかんないし』


〈プロ同士かな?〉

〈ヒリつく空気がガチ大会のそれ〉

〈お互い上手すぎて睨み合いが長いな〉

〈カジュアル戦でなる展開じゃないぞこれ〉

〈上手い人のミア相手に無傷のフロルは何なのさ〉


 クロノにも遠距離攻撃はあるけど、回避を含めると回復量を超えるダメージを与えることは難しいだろう。かといってミアの方からは、普段はともかく時限式ルールだと積極的には攻めてこないだろうからこのままだと睨み合いだ。

 だけど……。


「おさななじみさん、たぶんこのルールではあんまりやらないのかな」

『あー……いえ、普段は四人なんだと思います。総合的には近いくらいゲームが上手い幼馴染が五人いるので』

「……天文学的な確率だね」


〈五人!?〉

〈何者だよもう〉

〈そんな怪物が水波ちゃんの近くに集まってるのすごい〉

〈水波ちゃんですら疑わざるを得ないぞそれは〉

〈そういやシオンちゃんのお姉ちゃんトークにゲーム上手いってなかったっけ〉


 また衝撃的な話がなされたけど……私は実のところ、そのうち四人までは想像がつく。たぶん一人は橙乃だ。彼女を含めて四人、朱音には同級生の幼馴染がいる。

 それはさておき、そういうことなら仕方ないのだろう。このモードでないと発生しない、おさななじみさんの致命的なミスも。


「来た! いっ、け!!」

『おおっ!?』


〈うわ〉

〈はっや〉

〈反射神経イカレてね??〉

〈そっかアイテムそこだけなんだ〉

〈これは罠だわ〉

〈あー、これは一騎もらったな〉


 私は床から湧いてきたあるアイテムを即投げした。バリケードといって、当たると強い吹っ飛ばし判定がある上に、床に触れるとそこに設置されて触れたキャラを跳ね返すようになる。

 これが上手く当たった上に、ミアが陣取っていたステージ端に設置。ミアはどうにか崖を掴んだけど、位置が絶妙でしっかり調整しないと登ることもできない。


 ミアが崖際にいた理由は想像がつく。私がいる中央と同じく、アイテムが湧く場所なのだ。……()()()()()()()()

 だから半端に内寄りにつかず、投げアイテム、特にバリケードがここまで有効になってしまう位置にいた。だけどねおさななじみさん。


「このステージ、タイマンだと中央にしかアイテム湧かないんですよ」

『あー……』


〈そっかタイマンだと減るんか〉

〈ひでー罠だ〉

〈だからアイテムタイマンだと中央の取り合いになるんだよな〉

〈まさかのわからん殺しが決まり手〉

〈ちゃんと投げアイテムが出るの運よかったなぁ〉


 飛び道具さえ来れば打開できるとは思っていたけど、中でも一番いいものが出てくれた。崖上がりの調整に苦心しているところ悪いけど、私はミアの真上に飛び上がって下に攻撃させてもらう。ミアは地上戦に強い代わりに、復帰能力はかなり低いのだ。

 これで一騎分のアドバンテージだ。もうわかってしまったからこれ以上差を広げるのは難しそうだけど、おさななじみさん相手とはいえこの一点差を守りきるだけならなんとかなる。


 その後はある程度動きも増えて、中央の取り合いの末にお互い二度ずつ撃墜されたけど、どうにか一点差を守り切った。

 ……本当に大変だった。これまでのライバー活動でやったどのゲームのどのシーンよりも。


〈*みなみのおさななじみ:やっぱり上手い。GGでした〉


「こちらこそ! ……ものすごく疲れたし、元々ラスト予定だったので短いですけど配信終わりますね。お疲れ様でした」


 スパコメ読みは通常配信の期間内に来たものだけ。クラ限でもらった分は後日、改めてクラ限で枠をとってやろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
おさななじみさんは入る側じゃなくて作ってる側だからね(そうじゃない) ミア選択って事はアメリアは未実装か……「趣味に走ってる」発言を踏まえる限り実装してたら選んでない訳ない気がするし
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ