#46【#四期生女子会】同期の絆を深めるために雀卓囲んでわちゃわちゃしよう!【四ツ谷幽子|野乃宇千依|マギア・ワルプルガ|月雪フロル】
立場上どうしても先輩、というか以前から関わっていたライバーと動くことが多いのは、私としては割り切るべき、仕方ないことだ。六人もいる四期生、むしろ新人らしくないこともする部分を押し出していくのは、私の個性のみならず他の皆の色を薄めないことにも繋がる。
とはいえそれは私が新人の立場を無視していい理由にも、失う理由にもならない。「新人じゃないようなものだろ」と頻繁に言われて私自身も半ば自認しているところだけど、それでも私が新人でいられるのは今だけなのだ。
『フロルちゃん、忙しい時にありがとね』
「ううん、大丈夫。むしろ呼んでくれてありがと、これからもこういうことには一枚噛ませて」
『はい。当てにさせてください』
「最近いろいろあるけど、どうであれ私は四期生だから」
『ふろるちゃん……!』
ということで、同期コラボだ。ただし今回は女子会で、参加者は四人だけ。私、ゆーこさん、ちよりん、マギにゃである。
ここのところ先輩と動いてばかり……というか前回の同期コラボ以降表立って同期と関わったのがクイファンと20万人歌枠の陽くんとのセッションだけだから、同期を軽視していると言われても仕方ないのは私の方だ。こうして当たり前とばかりに私も呼んでくれることへの感謝を忘れてはいけない。
「それで、今日は進行も全部任せちゃうことになるけど……大丈夫だった?」
『もちろん。そういう経験も必要だし、フロルちゃんの負担を軽減するくらいできるようにならなきゃ』
『嬉しい。いい同期を持ったよ、ほんと』
そしてなんと今回、私は進行に一切関わらない。そもそも呼ばれた頃には段取りは全て決まっていたし、三人がやる気満々なのだ。
イミアリの件とファン研の分を含む私の今後の動きが箱内では隠されなくなったこともあってか、三人は今私が『リリり』四本分の台本と歌三曲と『ファン研』の台本を抱えていることを把握している。それをみて少しでも楽にと気を回してくれていた。ただただ嬉しいんだけど……なんというかね、はじめてのおつかいを見守る親のような様子の各マネージャーから、私までちょっと心配になってくるというか。
まあ、私は素直に反応するばかりだし、そちらに集中したほうがいいか。それに、一緒になって心配しようにもそもそも今日何をするのかすら知らないのだ。確認しないで、と言われていたから。
【#四期生女子会】なぜか何一つ知らされておらず何も知らないフロル視点の同期女子会【月雪フロル / 四ツ谷幽子 / 野乃宇千依 / マギア・ワルプルガ / 電脳ファンタジア】
『うらめしやー。電脳ファンタジア四期生、幽霊の四ツ谷幽子だよ』
『貴殿の心、頂戴致す。同じく、くノ一の野乃宇千依と申します』
『使い魔さんたち、おかえりなさい! 同じく、魔女のマギア・ワルプルガです! そして?』
「コンロンカー! 同じく、アルラウネの月雪フロルです」
『同期女子コラボだー!』
元々だけど、挨拶に統一性がないよね。全員がファンタジア組で身分からして個性派揃いだから、仕方ない部分もあるけど。
さておき、特に告知や特別な要素がある回ではない。勿体ぶるようなこともないから、さっそく話に入ってしまったほうがいいだろう。
「それで、今日は何するの? 準備までマネさんにやられちゃって、私は本当に何も聞かされてないんだけど……」
『そうなんだよね。今日はフロルちゃんには徹底的に何も知らせていない状態なの。……今日はね、麻雀をやるよ!』
〈ほう〉
〈フロルはマジで何も知らないのか〉
〈告知までマネ代筆だしついったすら見れてないのでは?〉
〈そこまでするのか麻雀のために〉
……横合いから仕事用のスマホを差し出された。確認してみると……うん、増えてるね。大手の麻雀ものソシャゲがインストールされている。
ただ、これだけだとちょっとわからない。進行を全任せすること自体はいいとして、何一つ知らされないことには何か理由がありそうだと思っていたら。
『それで、まあ周知の事実だと思うんだけど、フロルちゃんってゲーム強いでしょ? 今回はそれに抗うチャレンジその1だよ』
「……その心は?」
『裏というかクラ限でコソ練した私たちは急にやらされたフロルちゃんに勝てるのか』
「…………なるほど」
〈納得しちゃった〉
〈計算のやり方がわかった女子小学生顔〉
〈おいツッコミやめるな〉
〈言っていいんだぞ、本気なのかって〉
〈フロルってライバーに甘いから……〉
いや、否定できないでしょ。言ってしまえば私とまともに対戦ゲームをやること自体がやればやるほど配信的にデバフがかかるような中で、私とやるために工夫してくれているんだよ。スタッフさんまで巻き込んだ計画をして、三人してスケジュールを縫っては作戦会議とコソ練までして。
私は血も涙もない魔王というわけではない。こういう心遣いの前では感動のひとつやふたつするのだ。……まあ、それはそれとしてそこまでされた上で勝ってしまったらそれはそれで配信的に面白いとは思うけど。
「ちなみにチーム戦とかするの?」
『ううん、個人戦。……そして今回、罰ゲームがあるよ』
「また? 電ファンってほんと罰ゲーム好きだよね……」
『それはフロルさんが一番よく知っているのでは』
『全試合の点数の合計値で計算して、最下位は応えられる範囲内で一位のお願いをひとつ聞かないといけません』
「しかも普通に一対三の構図が起こりにくいやつだ! 大丈夫なの……?」
〈あっ〉
〈オチが見えたな〉
〈全リスナーが思っただろ〉
〈罰ゲームが誰なのか楽しみですね()〉
ここで「一位に選ばれた人が罰ゲーム」みたいにしていれば私も覚悟が必要だったけど、よりにもよって最下位にリスクができてしまったからこれでは私に集中したりとはならないだろう。最下位争いは手頃な相手を引きずり込もうとする、それが自然の摂理なのだ。
『それで、ふろるちゃんは麻雀つよいの?』
「本格的にやってるわけじゃないけど……前ちょっとコレをやってたときは、低ランク帯とはいえ平均順位は一位台だったよ」
『……これ、まずいのでは?』
完全に自爆だった。今回私まだなんにもしてないよ。というか、私だってオープニングトークが終わる前にお通夜にする気はなかったよ。
端末に入っていたアプリはいつでも使える状態だったから、画面を配信に載せる前に過去のアカウントを引き継いでおいた。メリカとは違ってもともと「雪」の名前でリアフレとは関わらずに使っていたものだから、不都合になるところもない。たとえばフレンド枠はもともとsperと電ファン関係者しかいないし。
係わる話をしたところだったから、サービスも兼ねて戦歴データの画面を開いて見せてみる。
『ほんとだ』
『放銃率低すぎ……勝ちまくりってよりは負けない感じ……?』
『これは獅子の尾を踏んだかもしれませんね……』
『こ、これ、コソ練でどうにかなるものなのかなっ』
〈ああ……〉
〈これは終わったか?〉
〈不意打ち補正じゃ足りないかもしれんね……〉
〈軽率にゲームでフロルに喧嘩売ったりするから!〉
まあ、ことこうなったらちゃんとお相手すべきだろう。たぶん安直なオチも期待されているし、負けるならそれはそれで。
自分がゲーム全般に妙に強いことは自覚しているから、それがライバーをやるなら立つべきは魔王ポジションだ。そうハヤテ先輩が言っていた、彼女はできていなかったけど。
「じゃ、始めよっか」
『急に怖くなってまいりましたね……』
『ゆ、ゆーこさん! レベリングたりてないんじゃない!?』
『仕方ないじゃない! カンスト99のゲームなのに魔王のレベルが1000超えてるんだもの!』
……なんで君たちはそう、始まる前から迷いなくやられ役ムーブするかな。もうちょっと勇者みたいな物言いをしてきたら、私ももっと危機感を持てるんだけど。
こんな主人公の前で繰り広げられるモブの惨劇みたいな流れになっちゃったら、きっちり蹂躙しないといけなくなる。もしかして、最初からそれを狙ってる? 三人同時にそれまでやっていなかったファンクラブ限定を始めたから、何かあるとは思っていたけど。
『……きた! 立直!』
『えっ!?』
「ふむ……なるほど。OK」
『こ、この余裕……怖いのですが……』
「別に私も読み違えくらいはするけどね」
〈強者の風格〉
〈即時理解〉
〈こっちの攻撃を一度見て完璧な対処法を割り出す不老不死ロリじゃん〉
〈こわ……〉
〈この反応されたら勝てる気しなくなりそう〉
〈まあフロルだしな〉
〈もう何待ってるかバレてそう〉
初戦は誰も鳴かない静かな立ち上がりで、最初に立直をかけてきたのはマギにゃだった。川を見る限り、たぶんスタンダードな形だろう。一応そうでない可能性も考慮はするけど、筋読み主体でいいか。
一方の私も一向聴だから、降りるには少し早い。不要牌が安牌だから、様子を見つつ……あ。
〈来た〉
〈来たわよ〉
〈立直……しない!〉
〈初戦からダマテンしてるぞこのアルラウネ〉
〈これは……格が違うか……?〉
〈っし四窓するか〉
〈阿鼻叫喚が面白そうな展開になってきたぞ〉
〈別視点のコメ欄の反応見たいからアガってくれフロル〉
欲しいところがきたから聴牌の形に切り替えたけど、ここは立直はかけないでおく。後から明らかな危険牌が来てしまったときには降りられる選択肢のほうが、今なら一翻分の点数より優先していいかな。役は足りているし。
あとこうすることで、素直そうな打ち筋の三人は惑わせそうだ。……しかしコメント欄、いよいよ愉悦を隠さなくなってきたね。
私に似たって? なんのことやら。
『えっと……ここ筋だよね?』
「あ、ロン」
『ええっ!?』
『ふ、ふろるちゃん!?』
『でもフロルさん、立直も副露も……』
「お手本のような反応ありがと、ダマテンでした。三色同順断幺九ドラ1、四翻で間張待ちの面前ロンだから……うん、満貫」
『うぎゃー!?』
『ああ、なるほど。これなら立直なしでも点数が変わらないんですね……』
「そういうこと」
マギにゃへの警戒に集中していたこともあって、何も見せていなかった私には無警戒。綺麗に横入れのロンが決まって、すごくいい反応が引き出せた。そこそこ大きい役で、私にとっては順調な滑り出しだ。
……ただ、ここで楽しそうな反応ができるゆーこさん、やっぱりいいな。あの様子だと、もう罰ゲームからは目を逸らしているかもしれないけど。




