表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】  作者: 杜若スイセン
再生リスト6:後輩オーディションのウラガワ!?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

145/149

#145【電ファン切り抜き】アルラウネシスターズによる仲睦まじい会話【月雪フロル/白雪詩】

 どうやら今私がしそうな話題全てに食いつくつもりのようで、詩は居座っているからそのまま。


『今みんなが気になってるのは、アレとアレじゃない?』

「三次選考の話については、まだあんまりできないよ。合否通知すらしてないんだから」

『まあそうだよね。というか、そもそもオーディションなんて普通は全部クローズドだろうし』

「まあそこはね、先にコンテンツ化し出したのはこっちだから」


〈アレとアレ〉

〈伝わるんだ〉

〈姉妹のツーカー〉

〈前の話からしてそろそろ三次やってる頃?〉

〈まあそう〉

〈オーディションの話なんてされないものよ〉

〈元スタッフの強みが活かせている〉

〈電ファンだし……〉


 私がいるから話をコントロールできる、という嫌な信用のされ方をしている気はするけど、応える気はあるからいいか。ある種の負担を居場所の証として感じてしまうのはよくないかもしれないけど。

 三次選考はちょうど昨日終わって、今は最終選考の予定がなされているところだ。通過者向けの日程案内までできてから一斉に合否通知を送ることになっている。


「二次選考の一部をライバーが見てる場面とかもあるし……私は全部じゃないけど三次選考もちょっと見てたから、まあそのうちね」

『……そこまでしてるの?』

「さすがに直でライバーがオーディションを見るのはリスクがあるから、前までもスタッフとして見てて見方と接し方がわかってる私だけだよ。……私、オーディションを見届けた子たちと同期やってるからね」

『改めて電ファンって感じ……』


〈スナップショットがあると〉

〈さすがです電ファンさん〉

〈嘘みたいだろ、これで大手芸能事務所の子会社なんだぜ〉

〈未だに半スタッフ扱いされてて草〉


 なんなら初々しいオーディションの様子を知った上で後輩をしている相手も何人もいる。さすがにそういうときの様子や所感は表に出さないようにしている(なにしろ、そのあたりを持ち出すと関係性もキャラ付けも何もかも厄介になる。慣れている私しかやっていないのは、それを接し方に繋げないためだ)けど、たとえばエティア先輩の最終選考の様子とかも知っているし。

 それを忘れて好き勝手振り回してくる同僚が多くて敵わないけど……まあ、そこは許してあげよう。それでこそライバーだし、そうできる子を採っているのだ。


「供給は少なくとも最終選考まで終わってから、基本的には五期生のデビュー後とかになると思うよ」

『つまり五期生のキャラに関係するものになるかもってこと?』

「出せるとしても合格者の部分だけだろうからね。さすがに取り上げ可否は取るはずだし」

『……三次以降もけっこう踏み込んだ内容で出すんだ』

「私だけオーディションを見学して、別の端末で通話してる他のライバー相手に間接実況したりしてるよ。スナップはそれ聞いてる側視点になるはず」

『何してるのこの事務所……?』


〈思ってたよりガチなやつ出てきたな……〉

〈さすがです電ファンさん〉

〈なんか凝ったことしてる〉

〈フロル負担えぐそう〉

〈詩ちゃんドン引きしてて草〉

〈一番ヤバイのはどのライバーでもなく事務所なんだよな〉


 本当にね、この事務所おかしいよ。地雷原でわざわざ地雷除去してからその範囲内でだけタップダンスをする。

 まあ、私は負担には感じていない。むしろ面白いと思って機会として乗っているから、同じ穴のムジナだ。……その穴で育てられたムジナの子ともいう。






 電ファン自体のタイムリーな話はそれだけど、私が最近したのはそれだけではない。


『あとはお姉ちゃん、歌ってみたも聴いたよ』

「ありがと。どれ?」

『全部。お姉ちゃんあんな高くて速いのいけるんだねぇ』

「まああのくらいならなんとか出るかな」


〈おっ歌の話だ〉

〈マジよかったやつ〉

〈さすがっす姫〉

〈こういう話のときに複数あることもなかなかないんだよな〉

〈あれ人間が歌うもんじゃないだろ!〉

〈普通にhihiD出すな〉


 最近も歌ってみたは出している。慣れてきたこともあって、コンスタントに月に二本くらい。まあこれは曲を決めて歌う以外の全てを他の人たちがやってくれているおかげだ。

 創建組でのものはまだだけど、直近ではみゃーことのコラボも別枠であったから今月に入って三本。一番新しいものは昨日上げたばかりなんだけど、詩は全部聴いてくれているようだ。

 数年前のアニメのOPになった女性ボーカルバンドの曲と、ボカロ特有の高音早口ダークなやつ。コラボはみゃーこのチャンネルで、掛け合い多めの元気なナンバーだった。


『お姉ちゃんは前からだけど、アップテンポのほうが得意だよね』

「そう? 満遍なくできるつもりだけど」

『できるけど、速いののほうがより上手くない? あたしはそう感じるよ』

「そっか。だとしたらイミアリもちょうどいいかな」


〈そうなの?〉

〈全部上手すぎてわからん〉

〈姫も音楽センスあるからわかるのか〉

〈ハイスペ姉妹だ〉

〈ちょうどそっち系のユニット入ってますね〉


 ただ、これは自覚がなかった。けど、詩が自信を持って言うならそうなんだと思う。この子の耳はホンモノだから。

 とはいえ、だからといってバラードをもう歌わないかといえばそんなことはない。全般的にできるままでいるつもりだ。たとえば歌枠あたりだと特に、範囲が広いのは利点になるし。


 そうだ。詩に聞きたいと思っていたことがあったし、ちょうどいいから今にしようか。


「ねえ詩」

『なあに?』

「私に歌ってほしい曲とかある?」

『選んでいいの?』

「姉として、妹の意見を聞いてみようかなって前から思ってたの」


〈ん?〉

〈姫のこの甘え声よ〉

〈姉への無条件の甘えんぼが民草を狂わせる〉

〈リクエスト!?〉

〈めちゃくちゃお姉ちゃんしてるじゃん〉


 三年間できてなかった分も、全力でお姉ちゃんを遂行しないと。せっかく私の活動を気に入ってくれているのだから、妹へのサービスもこれがいいと思う。

 今まさに膝の上にいるかのような錯覚を覚えるほどの猫撫で声の詩は、ファンから妹に意識を切り替えたようですぐに答えた。


『じゃあ、『ホワイトアウト』かな。一人じゃなくてもいいけど』

「……『いろは坂』の?」

『うん。お姉ちゃん、そろそろ植物縛り外していいんじゃない?』


〈ホワイトアウト?〉

〈意外なところきた〉

〈姫いろは坂聴くんだ〉

〈植物関係ないけど……〉

〈まあ実際そう〉

〈別に植物じゃなくてもいいよね〉

〈みゃーこも猫縛り四本目で諦めてたし〉


 挙げられたのは去年リリースされた『いろは坂46』の代表曲だ。バズったし名前が挙がることに違和感はないけど、これまで私のチャンネルで出した歌ってみたには共通していた「植物関連の選曲」から外れている。

 と思ったら、どうやらそれをやめる口実を作ってくれたようだった。デビュー当初から個性付けでやっていたけど、確かにいずれ困ることになる縛りではあったものだ。定着してしまって外れづらいものでも、妹の頼みなら仕方ないだろう、ということか。


「まあ、そうだね。妹のためだし」

『うんうん! 期待してるね!』


 ありがたく乗っかることにした。本当に、よくできた妹を持ったものだ。






『あ、そうだ。歌といえばなんだけど』

「うん」

『感謝祭のステージさ』


 ここで詩がしてきた話は、来月の感謝祭の目玉のひとつであるライブステージだ。イベント全体でAR技術をふんだんに使うんだけど、ステージでは特にそれが顕著になる。

 そんなライブステージ、基本的には歌唱が得意なメンバーを中心にライバーがパフォーマンスをする。当然私もそこに出るし、けっこう出番も多めになる予定だ。その件について、詩も何か話したいことが……


『あたしも立たせてもらうことになったから』

「……なんて?」

『ふっふっふ、いよいよファミリー扱いいただいちゃいました!』


〈ん?〉

〈はっ!?〉

〈えっマジで〉

〈姫出るの!?!?〉

〈チケ取っといてよかった!!!〉

〈めちゃくちゃ唐突な暴露で草〉

〈そらファミリーだろうよ〉


 …………なるほど。そうきたか。


 実はライブステージ、毎回所属ライバー以外の人物も現れたりする。交流のある個人勢だったり、外部の番組でライバーと共演している人だったり、単に誰かと仲がよかったり。そういう誰かしらをゲストとして迎えて、その日限りのスペシャルステージにしたりというのがあるのだ。

 その枠に、どうやら今回は詩が入るらしい。でも確かに、妥当だ。ここまで話題になってパフォーマンスも上手い、ライバーの肉親である芸能人。考えてみれば呼ばない理由がない。まして詩の場合、今こうしているように普通に電ファンの内部disconectにいたりするし。


「聞いてないけど、確かにそっか。そりゃ呼ぶよね」

『ねー。電ファン、ライバーの家族をそれだけで引っ張り出して押し出したりはしないし』

「まあそこはハウスのせいで同居してないことが多いのもあるけど……単純にここまで身内扱いになるアーティスト、いないし」


 頷いていたら……不意に詩が少し黙った。ライバーの家族を、のあたりでハルカ姉さんと私を想起して言葉を止めたくなったのは私のほうだけど……。

 だけど、わかってしまった。ここで言いたいことがあるとすれば。


「……もしかして」

『今回のスペシャルゲストはもう一人います』

「納得した。もう遠慮する気ないんだ、電ファンって」


〈えっ〉

〈二人目!?〉

〈ここで言葉が止まる……妙だな〉

〈マジで来たりする?〉


 来ない方が不自然だものね。椀飯振舞だけど、確かに。

 どうやら今回の感謝祭、前回まで以上に賑やかになるらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ