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【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】  作者: 杜若スイセン
再生リスト6:後輩オーディションのウラガワ!?

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144/149

#144【雑談】最近いろいろありまして【月雪フロル / 電脳ファンタジア】

 私はだいたい一週間から二週間に一度のペースで雑談枠を取っているんだけど、この頻度だと時には話すことが多くなりすぎることもある。そうなると雑談枠もなかなか忙しめな進行になることがあるけど、それはいいことだ。以前より活動の幅が広がって話せることが増えているということだし、練習と称して朝活をしたりビビってコラボから入ったりしていた頃から比べればずいぶん成長している。

 その朝活は週に一度のペースで続けているんだけど、朝活をした日にもう一度配信しようとすると心配そうな目で見られるんだよね。黙殺するにも切実な視線を向けられるものだから、最近はある程度自重している。レッスンに時間を使ったり、他の人のボイチャに入ったり、作業を進めたりしているんだけど……そうじゃない、と言いたげな視線をよく向けられてしまう。別に無理はしていないんだけどな。


「『みくりんのあのイントネーション素なの』……たぶん素なんじゃないかな、のは思ってますよ。コラボの準備中も、裏で話してるときも一度も崩れるところを見てませんし」


〈素であれなのか……〉

〈キャラが強すぎるわよ!〉

〈裏で話せるようになったのね……よかったねみくりん……〉

〈身バレとか心配〉


「外では逆に意識して普通に寄せてるって言ってましたよ。ルフェ先輩なんかもそうでしたけど、個性の凄い子は擬態も大変ですよねぇ」


〈お前じゃい!〉

〈あまりにも鮮やかな棚上げ〉

〈マジで自覚ないんだなこの子〉

〈親友が自分の限界オタクになったまま耐え切った女がなんか言ってる〉


 私は大したことないよ。Vtuber関連の話題でだけ気をつければ、あとは声を変えているだけだ。

 というのも、私はカメラか視線が向くとスイッチが入るタイプだから。切り替えはけっこう自然にできているし、実のところ常時どちらのモードでも疲れたりはしない。

 アルラウネは仮にも擬態種だからね、このくらいは呼吸同然だ。


〈それがおかしいんだよなあ〉

〈普通擬態ってのは疲れるものなのよ〉

〈てか声をそんなに簡単に変えられるのがおかしい〉


「そこは特技ですからね。任せてください。……次のボイスでは分身しよっかな」


 こう、同一人物に聞こえる範囲内でちょっとずつずらして、魔物娘らしくおんなじ顔で分身したみたいに囲んで。高くて元気な声、やや低めで妖艶な声、少しだけ高くして優しげな声、しっかり低くしてダウナーな声……。


『お姉ちゃんのそれは死人が出るからやめといたほうがいいよ』

「おや、どんな取り入り方をしたのかdisconectの電ファンサーバーに普通にいる詩だ。大袈裟じゃない?」

『普通に受け入れられるな、ほんとに配信中に入っていいのか一ヶ月くらい悩んでたのに……。ぜんぜん誇張じゃないよ、むしろ足りないくらい。人間は十人に分裂した推しに囲まれたらダメになっちゃう脆弱な生き物なんだよ?』


〈!?〉

〈姫!?!?〉

〈詩ちゃんキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!〉

〈死人が出るとな〉

〈姫は知ってるんですね!?〉

〈本望ですので是非〉

〈普通に鯖にいるのか〉

〈完全にファミリーで草〉

〈取り込まれている……〉

〈電脳ファンタジアはライバーとファミリーを区別しない〉

〈相手電ファンだし悩むだけ無駄だよ姫〉

〈十人!?〉

〈それは普通に死ねるわ〉

〈そんなに種類あるの??〉

〈脆弱な生き物〉

〈詩ちゃんもアルラウネっぽさ出してきたわね〉


 ……まあ実は、オーディションを受けていた時期にはこの最近イメージイラストがママの絵に固定されてきた妹に聞かせていた。この子ったら私のことが大好きだから。

 詩の奥手なところが出ていたようで、普段から配信通話に使われているdisconectサーバーに招待されてもなかなか通話に顔を見せてくれなかったんだよね。電ファンはそこまでしたらほぼライバー同然の扱いをしてくるというのに。


 だけど、そこまで言われたら気になる。私はせいぜい「助かる」くらいだと思っているんだけど、詩はそう思っていないようだから。

 試しに……四個くらい、この場で出してみる。


「…………あれ、コメント欄止まった……不具合? 配信グルってる?」

『あのねお姉ちゃん。そんなことしてたらそのうち捕まるよ? 今5000人を一撃で冥府送りにした自覚ある?』

「え?」

『自分が三年前に声優オーディションの審査員すら超越した事実を忘れないで』


 ……あ、スパムコメントが流れてきた。それ以外は未だに止まったままだけど。

 なるほど、確かに破壊力はあるらしい。気をつけた上で今度使うとしよう。






『そういえばお姉ちゃん、こないだの放送部だけど』

「ああ、アレね。なんとか形になってよかったよ」


〈居座るんすね助かる〉

〈ここでそのままいてくれるから信用できるんよね〉

〈立ち回りがちゃんと電ファンなんだよな〉

〈どっぷり浸かってらっしゃる〉

〈まあスナップは出てるし〉


 そのままここで話す気満々の詩。これまで配信中に突っ込んでくることは躊躇していたみたいだけど、誰も配信していないと確認した上で来たことは何度もあったからね。スナップショットには三回くらい出ている。

 そんな詩はやはり、一昨々日(さきおととい)の『放課後サブカル放送部』もチェックしたようだ。この子は先月二度目のゲスト……というかシオンちゃんの代打に呼ばれていて、おそらく今後は出番が増えるのではといわれている。メイン二人、というか主にシオンちゃんが最近忙しくて、準レギュラー的な位置づけの人が何人かいる番組だから。


『普通に三回ゲストやってるあたしより上手かった……』

「まあ普段から生フリートークばっかりしてるからね。慣れてるよ」

『……確かにね。高難度ゲーを背景にラジオしてる人に勝てなくても別に当然か』

「アレは背景じゃないよ?」


〈ライバーってリアルタイムで喋り倒す仕事だし……〉

〈さすがに分が悪いっすよ姫〉

〈そうそう〉

〈やはり妹様はよくわかっておられる〉

〈本人より理解度高いぜ〉


 さすがにそこまでではないと思うんだけどな。この間のメリクだって、最終的には終盤の難関ステージで即終了していたし。

 少なくともトークについては私に一日の長があるというものだ。代わりに今となっては演技力では詩に分があるし。さっきの話だって、七色の声を持つカメレオン声優といえばふつう詩のことだ。


『でもお姉ちゃんのゲームはカニバルモードのとき以外ゲームやってる感あんまりないよ』

「知らないモード名がついてる……というか、これ詩に言われたらおしまいな気がするんだけど」

『募集するとか言ってたから!』


〈カニバルモード〉

〈姫まさかの命名ダービー参戦〉

〈カニバルモードでいい気がしてきた〉

〈これ優勝だろ〉

〈他全員棄権しそう〉

〈戦わずして完全王者!〉


 例のモードの件、確かにモード名を募集とか言った覚えがある。詩まで手を出してくるとは思ってなかったけど。

 詩がこういうことをしたら他の民草はみんな譲りそうだ。たぶん食虫(carnivoro)植物(us plants)からきてるだろうから、最初のハエトリグサとほぼ変わっていないんだけど……かっこいい英語、どうせ男の子ってこういうのが好きなんでしょ?


 だけど、血は争えないのか詩も詩でけっこうゲームが上手い。こういう場面で他人事扱いするにはちょっと無理があるくらいには。得意分野が違ったからあんまりいい勝負はできなかったとはいえ。




『まあそれはさておき。生シオンちゃん、どうだった?』

「オーラ凄いねあの子。なんというか、向こうから存在する次元を合わせてくれてるって感じだった」

『普段は四次元にいるってこと?』


〈そうなんだよなシオンちゃんと同じブースに入ったんだよな〉

〈ずるいぞフロル!〉

〈緊張えぐそう〉

〈異次元と〉


 なんというか、この世のものとはあまり思えないというか。よく推しのことを天使みたいに形容する文化とかあるけど、あの子なら本当に天使だったとしても納得感がある。

 だけどみんな、ここ私の枠だよ。私のファンだよね? 「シオンちゃんそこ変われ」じゃないの? ……まあ、あの子はそれですら納得感があるんだけどさ。


「あれでまだ17……?」

『ほんとおかしいよね』


〈えっと〉

〈こないだまで姫のプロフィールに16って書いてあったのは触れない方がいい感じっすか〉

〈反応に困るんよ〉


 それはスルーでお願い。妙な形で推定数百歳のアルラウネと姉妹だと公表されたせいで、この子のプロフィールは現状とてもふわふわしているから。どうするのさいろいろ、とは私は正直思っていたよ。

 ……彼女の実姉であるところの朱音はまだ、雰囲気的にはギリギリ同じ世界っぽい感じはするんだけどね。まああっちはあっちで強烈なカリスマがあるから、やっぱり同じ場所に立っている気はしないんだけど。


『でも、そうにしては緊張してなさそうだったよね。あそこの初ゲストってだいたいみんなガチガチに気負うのに』

「それはわかるでしょ? たぶん、ハルカ姉さんのおかげ」

『だよねー』


〈そうなのよ〉

〈なんか普通に会話できててビビった〉

〈フロル強者すぎたよ〉

〈あー〉

〈ハルカ姉なら仕方ないか〉

〈そういやいたな至近距離に太陽が〉


 ハルカ姉さん、そんなシオンちゃんにすらどこか近いような光を放っているから。それにひたすら照らされどころか抱き締められ続けてきた私はもう、そういうのに慣れている。あの九鬼シオン相手に身構える必要すらないくらいには。

 人間、慣れるものだ。……そんな振る舞いをしたせいで、私まであのラジオへの出演が一度では済まなくなることになるとは、このときの私は知る由もなかったけど。

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― 新着の感想 ―
まぁ覇王と天使だったらまだ覇王の方が現世に片足残してるか······?(九鬼姉妹に対しての雑感)
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