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【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】  作者: 杜若スイセン
再生リスト6:後輩オーディションのウラガワ!?
138/139

#138【電脳ファンタジア&@project】箱を越えて遊ぼう【月雪フロル / マギア・ワルプルガ / レリシエル / リオネッタ=御厨】

「ねえマギにゃ」

「なに?」

「なんで私、他箱コラボまでやっておいて一人でゲームしてるんだろ」

「ゲームがうますぎるひとといっしょのときの一番たのしいあそびかたがこれだからだよ」


 ちょっと真理っぽいこと言うのやめてくれない?


「つまり民草さんたちは普段から、いい遊び方ができているということですね!」

「チョットウラヤマシいカモ……」

「まあ、@プロにはゲームのプロはいないもんね……」


 この四人でのコラボ、当初は何をするかで大いに悩んだ。主に私側が初の箱外コラボで張り切ってしまって、どちらの事務所の得意分野を重視するか考えてまとまらなかったのだ。

 結果的にはレリシエルさんが、配信の構成を前後半にすればいいと教えてくれた。なんとも頼りになる先輩だ。ぜひうちの先輩たちにも裏会話でまでボケ倒してないで見習ってほしい。たぶんスナップショットの存在が悪いんだろうけど……でもあの人たち、そうでなくても素でああな気もするんだよね。


 そうして前半は電ファン、後半は@プロの得意分野でやっていくことになったんだけど……その前半の様子がこれ。主に見せるのは軽妙な掛け合い、と主にみくりんが熱弁したんだけど、それだけでは味気ないというか漫談になってわざとらしさが出るとかで、ゲーム画面を添えることになった。

 やっぱりおかしいよね? こういうコラボでゲームをするなら基本は四人プレイだと思うんだけど。なぜか今、私は一人でアクションゲームの高難度面をやらされている。

 揃って腕前はほどほどだというレリシエルさんとみくりんがやったことのあるタイトルの、苦労して踏破したり跳ね返されたりしたところだ。自分も知っている難易度をどんどん進んでいくのが、どうやら二人にとって楽しいらしい。


「やはり@プロ(ウチ)にもゲーマーズを……!」

「別に電ファンにもゲーマーズはいないけど」

「つっこみまち?」

「デモ確カニ、ふろるチャンは歌姫枠デスもんネ!」

「どっちでもないよ?」


 確かにVtuber事務所にはゲームの上手い人を集めてデビューさせるゲーマーズプロジェクトがあったり、箱そのものがそういうコンセプトだったりすることがある。だけど別に、私やハヤテ先輩はそういうのではない。あくまで普通の枠としてデビューして、他のライバーと同じ活動内容でやっている。

 そして同様に箱によっては用意されていて、往々にして同期ユニットで売られるバーチャルシンガー枠でもない。電ファンはそちらも現状設置していないし、ImitateAliceはあくまで後天的なユニット化だ。セレーネ先輩もまた、少なくとも形式的にはそうした扱いにはなっていない。


「あ、どうしてもできなかったステージ……」

「ああ、ここ……いきなり連続ギミックジャンプが必須になるもんね」

「……ふろるちゃん、それわたしのしってる動きとちがう」

「先行入力できるんだよね、これ。やったらこういうノンストップの挙動になるの」

「コレガ噂ノ……」

「私、噂になってるんだ……」

「ウチのゲーム担当を自称してた子たちが、フロルちゃんを見て三人とも名乗るのやめちゃって……」


〈メリクはエンディング後いきなり難易度上がるよな〉

〈なんだこれ〉

〈知らん動きしてる〉

〈先行入力!?〉

〈いやそれ知らないんですけど〉

〈噂〉

〈@プロでも噂されてんの草〉

〈相手が悪いっすよ〉

〈別にバケモンに負けたからって名乗るのやめなくても……〉


 私を化け物扱いしてくるコメント欄(……いやまあ、確かにアルラウネは怪物だけど)に同意するのは癪だけど、これは本当にそうで、別に私を基準にしなくていいのに。これまで問題なく名乗れていたなら、それでいいと思うんだけど。

 むしろどちらかというと、ゲームじゃなくて掛け合いのほうをメインにするつもりだったはずなのに普通についてこられているほうが由々しき事態だと思うよ。コラボ相手の二人が@プロではボケ担当扱いなのがよくなかったのかな。


「まあ後半も似たようなことになるでしょうから」

「ぶん投げてきたね!? 私たち、歌やダンスだけならともかく、ステージパフォーマンスはまだレッスン中だよ?」

「ふろるちゃんはおてほんやくだけどね」

「えっ今マギにゃに裏切られた?」


 まあこれも、二年半さんざん仕込まれた私がライブパフォーマンスのたぐいだけ教わっていないなんてことはないし事実なんだけど。でもこう、流れとか陣営というか、事務所対抗的な構造というかさ。マギにゃは庇ってくれるところじゃないのここ?

 そもそもマギにゃも筋自体はいいし、そんな安全圏高笑い顔で低みの見物をするほどではないと思うんだけど。なんか私、結局やっていることがいつもと同じツッコミ乱打な気がするんだけど気のせいかな。






「ほら」

「ホラ」

「まずい、なにもいいかえせない……」

「マギにゃ、ぜんぜんまずいと思ってないよね?」


〈言われた通りでしたね〉

〈これで来月の感謝祭も安心だな!〉

〈さすがっすフロルさん〉

〈マギにゃ本当に他人事か?〉

〈人のことイジってる場合じゃない魔女っ子もいます〉


 いやまあ、いいことなんだけどね。ライブパフォーマンスができるのは。今は実際にミニライブをやってみて、うまくいってしまったところだった。

 電ファンは今のところリアイベは年に二回だから、デビュー四ヶ月弱かつ来月にイベントを控える四期生はまだ一度も経験していない。そんな中でライブができているのは、事務所からしても安心材料になるだろう。

 ただ実際のところ、こと私はどうせアテにされているとわかっていたし、最低限以上はできる自覚はあった。だって、養殖だし。裏からとはいえ何度も見てきた上にリハーサルには参加しているのだ。


「どっちかというと、マギにゃがほぼ完璧だったことのほうにびっくりだよ」

「わ、わたし!?」

「スゴク上手デしたヨ、まぎあチャン!」

「そうですね。フロルさんはどうせできるだろうと確信していましたけれど、マギアさんまでこんなにできるなんて。うかうかしていられませんね」

「え、え!?」


〈そうだぞマギにゃ〉

〈フロルは予想通りだったけど、マギにゃは感心した。フロルは予想通りだったけど〉

〈マギアここまでできるんだ……〉

〈あんなに緊張しいだった子が四ヶ月足らずで〉

〈マギア俺誇らしいよ〉


 むしろサプライズは、自分で練習していたというマギにゃが見事にこなしていたことのほう。最初のうちはどうしてもあがり症気味なところがあったけど、彼女の成長速度には本当に目をみはるものがあった。

 だけど気をつけてねマギにゃ。あなたの使い魔(ファン)はこれまで見守りタイプが多かったけど、自分であれこれできることを証明して成長を示したら

彼らがただ暖かく見守る理由がなくなるんだ。


「そうなったらどうなるんですか?」

「知らんのか? 愉悦が始まる」

「へっ!?」

「電ふぁんラシくナる、トイウコトデすネ!」


〈あっバレた〉

〈おいフロル! バラすなって!〉

〈マギにゃのことも楽しめる日が来るのか……〉

〈草〉

〈あんまりな言われようで草〉

〈でも正しいぞみくりん〉


 マギにゃはある意味、これまで甘やかされてきたからね。電ファンとしては珍しい扱いをリスナーたちから受けてきたんだけど、それが必要ないと判断されれば……まあ、他の電ファンライバーと似たような扱いをされ始めそうだ。

 私に対しては終始強火オタクみたいな様子で見上げてくる一方でマギにゃとばかり距離を縮めるみくりんも、言い方はともかく的を射ている。やっぱりよく見てくれているらしい。


「実はリオネッタちゃん、デビュー前によく見てたのは電ファンのほうだったみたいなんです」

「え、それっていっていいの?」

「ハイ。許可は取っテマス」

「まあ電ファンと@プロって、そもそも両方のオーディション受けてた人も両方にいるからね」


〈え?〉

〈そうなのか〉

〈それ言っちゃうんだ〉

〈許可出るのか……〉

〈フロルが言うならマジなんだな〉

〈ほんと仲良いんだなぁ〉

〈九鬼とシトラスなのに〉


 これは納得だった。今日一日そうだけど、みくりんはやたらと電ファンの解像度が高いのだ。元ファンファンだというならそれも頷ける。

 たとえば@プロから先月デビューしたばかりの犬吠埼こまちゃんは電ファンの四期生オーディションで三次まできていたし、電ファンのほうもマリエル先輩は@プロのオーディションも受けていたらしい。今のところタイミングがズレていて該当例はないけど、両方のオーディションが被ったら先に採用を決めたほうが優先、もう片方のは辞退と協定を結んでいたりする。


 電ファンの母体は辿れば九鬼グループ、@プロは国内で特に覇権を争うシトラスグループなんだけど、実はこの二グループ、ここ数年はけっこう仲がいいそうだ。片方の跡取り娘から雑談として直接聞いたから間違いない。

 グループ全体でもそうだけど、こと電ファンと@プロは特にズブズブ。それらの関係はもちろん、こんな話が表に出せてしまうこともまたその証といえるだろう。


「こまちゃんも連れてくるべきでしたか……」

「大丈夫そうではあったけど、本人の意思は確認してね。……さ、そろそろ次に行こっか」

「あ、そうだった! みくりんに小物づくり、おそわりたかったの!」

「本当デスカ! ソレなら、ゼヒ!」

「……マギにゃ、まさかとは思うけど、呪術に使うものとかじゃないよね?」


〈こまさんデビュー一ヶ月で本人の知らないところでコラボ予約〉

〈あのわんこ不憫属性だったか〉

〈レリシエルさんに目をつけられてしまった〉

〈今から!?〉

〈元気すぎんか〉

〈何時間配信する気なんですかね〉

〈延 長 戦 突 入〉

〈もう三時間やってるんですけど〉


 私たち自身もまた、その動きやすい関係に乗っかっているだけだからね。今だってそうだ、こんなに簡単に他箱コラボができるのは相手が@プロだからだし。

 ちなみにキャラがとことん崩れないのはこの二箱共通でありならではの特徴だ。@プロもそのあたり徹底しているから。……というか、みくりんあたりは裏の打ち合わせですらあの独特なイントネーションが崩れない。もはや素なのかもしれない。

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