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【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】  作者: 杜若スイセン
再生リスト6:後輩オーディションのウラガワ!?
132/142

#132【雑談と告知】みんなアレ欲しいんでしょ、私知ってるよ?【月雪フロル / 電脳ファンタジア】

 配信内のどこかで重要な告知をするとき、それを出すタイミングって難しいよね。

 終盤に回すのがセオリーだけど、あんまり引っ張りすぎても不満感を与えてしまう。だからといってすぐに出してしまえば今度はそれだけ確認してさっさと帰ってしまう人が増えたり、配信そのものに尻切れトンボ感が出がちだ。

 「面白ければなんでもいい」とか「それ以外の内容も告知関係なしに楽しめる内容なら問題ない」なんてのは詭弁だ。結局のところ告知がメインコンテンツになるのなら自然とそれがない回よりも盛り上がりの最大値は上がることになるから、ただ普段通りにやるだけでもどうしても「告知の前座」になる。そうならないなら、告知のほうがわざわざもったいぶって伝えるほどの価値を持てていないだけだし。


 テレビ番組とかだと毎週その出演者、特にゲストが何かしらの告知をすることで定型化していたり、特に何かある回は「告知をできるかどうかチャレンジ」のような企画になっていたりする。昔は「また似たようなのだ」なんて思って見ていたけど、いざ届ける側になるとそうなる理由がわかるものだね。いつだって伝えたいことと求められていることのバランスは難しいものなのだ。


〈という話を告知の前座にしていると〉

〈もしかして今日ずっと告知関連の話題で繋ごうとしてる?〉


「だって告知枠で無関係な話をしたらどうしても『告知まだでござるか?』『拙者は告知が知りたいので候』『はよう告知をせよ、我が刀が鯉口を切る前に』みたいなコメントが来ちゃいますもん」


〈なんで侍なんだよ〉

〈そんな古い口調でコメントするやつおらんが〉

〈最後のはシンプル脅迫で草〉


 というわけで、私は告知の前振り雑談も告知関連の話題で繋いでみるという挑戦をしていた。だからって告知という概念の話ばかりしなくても、というのは私が一番思っているから禁句だ。

 まあ別に、私がやっているのはただの雑談配信なのだから、無理に尺を引き伸ばす必要はないんだけどね。この話も実のところ、この流れ自体がやりたかっただけだ。


「満足したので告知に入りますね」


〈ここまでの話なんだったんだよ!!!〉

〈さっきの苦労うんぬんの話全否定で草〉

〈これもそうだとは言ってないと〉

〈そうだったこいつ電ファンだった〉


「45分からなんて微妙な時間から始めた時点でなんとなく察してたでしょ?」


 それに、実のところ大半のリスナーはおおよその告知内容に見当がついているのだ。

 というのは、この枠が二月一日の午後七時四十五分から始まっているから。実はこの電脳ファンタジア、毎月一日の午後八時にあれこれ情報解禁がなされるのが通例になっている。

 つまりこのタイミングでの告知配信というのは、そこで公開される何かしらの情報について一緒に見ていくものであることが慣れたファンファンには即座にわかるものだった。最初からこういうくだりをするために十五分の余裕を持って始めたのだ。


「あ、公式サイトやTsuittaを見に行く必要は別にないです。ここで全部話しますから」


 というわけで、八時ちょうど。ちゃんと合わせて、用意していた画像を画面に出した。


「まずはひとつめ、お待ちかねのボイスです。電ファンバレンタインボイス2030、参加してたりします」


〈ボイス!?〉

〈フロルのボイスだ!!〉

〈まってました!〉

〈さすが需要わかってる!〉


 年明け、一ヶ月前に録ったボイスだ。発売は二週間後、バレンタイン当日。イラストは大まかな方向性が決まった段階で発注していたから、これでも充分余裕のあるスケジュールだった。

 四期生の中では四番手になるかな。陽くん、ちよりん、ゆーこさんの順で既に出ているから。……ちなみにバレンタインは他の同期は誰もやりたがらなかった枠だった。まあいきなりはハードル高いよね。


「内容ですが、ドストレートなやつです。みんながボイスと聞いて真っ先に欲しがるようなやつにしておいたので、ご安心を」


〈だよね助かる〉

〈さすがっすフロルさん〉

〈フロルは初球は真ん中だと思ってた〉

〈需要を理解しておられる〉


 その要因になるのが、これ。バレンタインほどわかりやすく方向性の定まったイベントだと、どうしても期待されるんだよね。とんでもなく気はずかしいやつを。

 だから私はホワイトデーの回を引き受けたアンリさんは凄いと思ってるよ。まあ彼のことだから直球は投げないだろうけど、それでも。


「収録でもひとつ、ある工夫をしてます。お聞きいただければわかると思うので、ぜひイヤホンでどうぞ」


〈お?〉

〈工夫とな〉

〈イヤホンでってことはバイノーラルでも使ったのか〉

〈心愛を取り込んだ電ファンだしやってもおかしくなさそう〉


 当たらずとも遠からず、これはわざとマイクを高くして撮った件についてだ。ちゃんと調整した甲斐あって、試聴でもしっかり下から聞こえるようになっていた。

 まあ、この件について話しておくのはこのくらいにしておこうか。あまりネタバレになるのもよくないし、告知はまだある。






「いよいよ来月半ばに迫った感謝祭、もちろん四期生も全員参加しますよって話なんですけど、そこの物販ですね。私の関わっているグッズについてご紹介です」


 三月に予定されているリアイベの準備はつつがなく進んでいる。ひとまず今のうちは電ファンは可能な限りのライバーが参加するのが通例なんだけど、そんな電ファン感謝祭には物販ブースもある。

 今回の情報解禁ではそこでのグッズも触れられている。初リアイベとなる四期生にとってはデビューグッズ以来の同期集合で、みゃーこまでいるものとなると初だ。これまでみゃーこのグッズは個人とイミアリだけだった。

 しかもこれ、なんとルカナさんのものも告知画像に入っているのが恐ろしい。加入が決まったのはつい六日前なんだけどね。まだPROGRESSブーストで登録者数の伸びも落ち着いていない……どころか加入配信すらまだなんだけど、こと個人単位のグッズの売上予測と生産量の調整は大丈夫なのだろうか。


「まずは共通のものから。ちゃんとアップの写真もらってきてますからね。これがアクリルスタンド、こっちがキーホルダーです」


〈ほんと準備いいなこの子〉

〈当たり前のようにこのための画像を用意してる〉

〈他のライバーはそこまでしないよ〉


「みゃーこは時間あるときにするって言ってましたよ。まあ私が気合入れすぎなだけです」


 さすがにね、告知そのものはちゃんと各々がやるようにお達しが出ている。そりゃそうだよね、グッズの売上ももちろんライバーの評価にかかわるし、下世話な話だけど歩合もあるし。


 アクリルスタンドは今回のイベントのテーマ絵も兼ねて書き下ろされた立ち絵……もとい宣材写真で、基本的にはこの柄は今回限り。キーホルダーも同じくで、その他にもいろいろ用意されている。電ファンのイベント物販はその回ごとの絵でひととおりのグッズを作る形式が恒例だ。

 衣装はライブイベントのときは共通に近いものになるんだけど、フェスの場合は各々の衣装がベース。ただ、ところどころにアレンジが入っていたりする。というのも……。


「これは四期生版ですね。配置は担当スタッフこだわりの逸品となっております」


〈同期集合いいね〉

〈四期生推しなのでたすかる〉

〈ルカナが……いる!〉

〈準備がよすぎるだろ〉

〈まず宣材写真の納品が早すぎる〉

〈同期グッズなのにデビューグッズより二人増えてるのが電ファン〉


「それからこっちがイミアリ版……あ、気付きました? そうです、髪飾りはお揃いにしてます。せっかくですから、共通衣装でなくともユニットとしての統一性をね」


〈ほんとだ同じのつけてる〉

〈洒落たことするね〉

〈期生ごとのだけじゃないんだ〉

〈ちゃんとユニット売りされてて感慨深い……〉


 同期ごと集合バージョンのグッズもしっかり用意されているんだけど、今回はそこにイミアリのようなユニット単位のものも加わっている。そうした集合ごとに、普段はない共通のアクセントも加えられているのだ。

 イミアリは四人で髪飾り、四期生はどこかしらに緑のスカーフ。……これは私合わせではなく、各期ごとにこういうときの色が割り当てられているのだ。0期生が白で、一期生から順に赤、青、黄色、緑といった調子だ。そのうちわかりやすく区別できるカラーバリエーションがなくなるかもしれないけど、それはまだまだ先の話だから考えられていない。


「もちろんいつも通り通販もあるので、来られない方も焦らず。こういうときのための親会社の企業体力ですからね、例によってたっぷり用意した上で再販も睨んでありますよ」


〈助かる〉

〈転売対策もいつも通り万全と〉

〈企業体力いうな〉

〈この子また生々しいこと言ってる……〉

〈まあそのへんは九鬼の信用よね〉


 電ファンはVtuber事務所としては珍しくとても太い親会社、というかグループを持っているから、そういう細やかなところもしっかりしている。インディーズならではの距離感もいいけど、電ファンと@プロはどちらもどっしり構えてファンに応えるタイプだ。

 世知辛いけど、転売の隙なんて与えないようなしっかりした対応には企業としての安定性と力は必要なんだよね。いわゆる“会える感”は他のところに任せて、電ファンは電ファンの強みを、という方針である。


 ……だから、特に一部のライバーたちはいつも、九鬼グループに怒られない範囲というチキンレースを行っている節がある。令嬢の様子を見ていると、別によっぽどでなければ大丈夫そうには思えてくるけどね。

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