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【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】  作者: 杜若スイセン
再生リスト5:はじまりの六人と勧誘大作戦
124/141

#124【クラ限】聞かれたくない人に聞かれたくないことを話す回【月雪フロル / 電脳ファンタジア】

「ちょっとね、そろそろ貯まってきたんですよ」


〈何が?〉

〈何の話だこれ〉

〈フロルだから下ネタではなさそうだけど〉


 うん、下ネタではない。別に清楚を気取るつもりもないけど、私は下世話を求められているタイプではないから。ImitateAliceもあって、電ファンの中では綺麗さに需要がある方だよね、私。

 まあだからといってアイドルみたいに可愛いところだけ見せているわけでもないんだけど。「ガチ恋させてそれを制御できる自信があるのでなければ、アイドル路線はやめておけ」とは電ファンでは研修で言われる言葉だ。いやまあそもそもオーディション時点でアイドル売りしかできなさそうな子は採ってないんだけど、変な色気を出して苦労するのは本人だからね。


 こんな考えをしておいてなんだけど、アイドル路線のVtuberを否定する気はさらさらない。それどころかそれができている人は本気で尊敬すらする。だって、それはエンタメと割り切ってガチ恋杞憂その他もろもろから逃れるよりずっと覚悟と気遣いが必要な選択肢だろうから。

 そういう話じゃなくてね。


「まだ三ヶ月も経ってないので、たぶん記憶に新しいと思うんですが……公式チャンネルのほうで、私のデビュージャッジのスナップショット動画が上がってたじゃないですか」


〈あったね〉

〈まだ三ヶ月なのか〉

〈時間を長く感じるな〉

〈フロルと一緒にいると楽しいから〉

〈いつもありがとね〉

〈もうフロルと半年くらい一緒にいる気分だよ〉


「……クラ限だとみんないやに素直ですよね。嬉しいですけど……」


〈ここには同じことを思ってる仲間しかいないから〉

〈ここでならフロルに愛を叫んでも恥ずかしくないぜ〉

〈フロルのデレだ!!〉

〈俺らにまでデレてくれるの!?〉

〈クラ限お得すぎんか〉

〈俺らも嬉しいよ〉

〈大好きだぜフロル〉


「ち、違う違う! そういう話じゃなくて!」


 普段の配信中はこんなにストレートに好意をぶつけてこないのに、民草のみんなはクラ限のときはやたらと素直に言ってくる。まあそれは初見さんやプレイしている作品のファンのような私目当ての比率が低いリスナーさんを驚かせないためだったり、単純に恥ずかしかったりといろいろなんだろうけど。

 それに思わず喜んでしまったら、すかさずこの反応だ。私としては嬉し恥ずかしというか、居心地はあまりよくない。……まあ、よそと比べるとお行儀がよすぎるくらいなんだけど。


 照れの感情すらファンを楽しませられているならそれで……なんてことまでは全然思っている余裕がないまま、なんとか軌道修正を図る。あんまり焦ったら余計に喜ばせるだけなんだけど。


「……あのときイタズラついでに、私はライバーの裏の様子をちょっと暴露してたじゃないですか。あそこまでではないですけど、そろそろみんなのここ好きエピソードが貯まってきたところで」


〈あったなぁ〉

〈たぬきそばとかか〉

〈お?〉

〈つまりこの流れは……〉


「なので今日は電ファンライバーが来られないクラ限配信で、みんなの好きなとことか可愛いとことか話したいなって」


〈助かる!!〉

〈そうそうそういうのがいいのよ〉

〈フロルの電ファンオタク要素には需要があります〉


 ここでこれを話しても、話されたライバーのファンには伝わらないのがもどかしいところなんだけどね。とはいえ通常配信だと明日の私の身の安全が保証できないから、そこは代替し得ない最大限のものということで。

 それじゃあ、さっそく話していこう。






「そうですね……まずは、私が担当を外れてからの二人の話とか」


 私はデビューが決まるその日までの間、ルフェ先輩とマリエル先輩のサブマネージャーを担当していた。アルバイト扱いとはいえ二年以上やっているのにメインマネージャーを担当しない特殊な扱いの影響もあって、実態としては練習生のような形でレッスンを受けていたり、たまにエティア先輩の手伝いもしていたりはしたんだけど。

 ただ、さすがにデビュー準備期間に入った私は他人のサポートをしている場合ではなくなっていた。だけどマネジメント部の配置替えは四期生のデビューと同時だったから、一ヶ月ほど空白期間があったんだよね。その期間は他のマネージャーが持ち回りであれこれ請け負ったりしていた。私が起こしてしまったイレギュラーなんだけど……「最初からどこかでそうなる予定で考えていた」と言われたら二の句を告げなくて受け入れるしかなかった。


 そんな移行期間を経て、二人もちゃんと普段通りサブマネージャーが存在する体制に戻ったんだけど……。


「デビューから半月くらい後ですね。新しいサブマネもその二人で兼任だったんですけど、その人が私のところに泣きついてきたんですよ。このときの用件、なんだったと思います?」


〈デビュー後もスタッフとしての後輩に頼られるアルラウネ〉

〈これはベテランの貫禄〉

〈敏腕マネージャーだ〉

〈なんだろ〉

〈想像つかないな、二人とも本気でキツイこと言うタイプじゃないし〉


「正解は、『たまに無意識に撫でようとしてきて、途中で気付いて気まずくなる』です。……いやまあ私から二人に注意したんですけど、あの二人は私のことなんだと思ってるんでしょうね」


〈えぇ……?〉

〈そんな撫でまくってたのかよ〉

〈たった半年で刷り込まれてやがる……〉

〈別にフロルがやらせたわけじゃないんだよなあ〉

〈妹じゃない?〉

〈拒まなかったらことあるごとに撫でるような雰囲気を出してるフロルが悪い〉


 ちなみにそのときの話、顛末は「気をつけるけど、じゃあ本物のフロルちゃんを撫でさせて」だった。一時期やたらと共用リビングでのスナップショットで二人が私を撫でている場面が多かったんだけど、それはそのせい。

 私からすれば、あの二人が私のことを好きなだけ撫でて可愛がってもいい存在として扱ってきていること自体がちょっと複雑でもあるんだけどね。私としては仲のいいイトコくらいの距離感を狙っていたのに、向こうはシスコン姉くらいの近さをわざわざ狙ってくる。

 もちろん嫌ではないんだけど、私だけ「タダでこんな美味しい思いしていいのか」と考えてしまうことに謎の敗北感を感じてしまう。


「ただ、最近これがみゃーことマギにゃにも向き始めまして。もしかしたら根本的に心愛先輩と同類だっただけかもしれません」


〈草〉

〈そっちだったかあ〉

〈心愛に突然の流れ弾で草〉


 あくまで疑惑だけどね。まあ、二人は言うまでもなく自分たちもそう見られる側だ。犯罪臭はほとんどないのが救いといえるかな。……いやまあ、心愛先輩もただ後輩が好きすぎるだけで(ロリコン)のケはないし、そもそもそんな話になるほど年も離れていないんだけど。




「じゃあ次。これは予告なんですけど、たぶん今後しばらくライバーの何人かがデュエコマチャンネルになります」


〈お?〉

〈どハマりしてて草〉

〈やっぱデュエ兄なのか〉


 すごいよねデュエ兄って。たぶんあの人なにかしら魔法を使ってるよ。魅了系のやつ。レクチャーと布教が上手すぎてライバーのデュエリスト化が止まらないんだ。

 ちょうど大晦日に教わっていた面子だね。中でも特にのめり込んでいるのはみゃーこで、今度新弾の開封配信をやるらしい。よくスキマ時間に対戦に付き合うんだけど、見込み通り既にかなり上手くなっていた。あの分なら本当に遠からず大会で勝てるレベルになると思う。

 さすがに気になるのか、陽くんもゆーこさんも寄ってきたからデッキを配られていたし。あの人はすぐ裏で配って布教企画の種を潰すんだから、全くもう。


〈あの……その対戦の動画とか……〉

〈裏話が聞けるのは嬉しいけど、それ撮られてないの辛いですマスター! もう一杯!〉


「あ、対戦動画ありますよ。こんど出ます。実はついにカード専任の編集者を雇ってて、もしかしたら新チャンネル行きかも」


〈あるの!?〉

〈マジありがてぇ〉

〈編集者マジか〉

〈新チャンネル!?!?〉

〈そのレベルでやりまくってるのかよ〉

〈デュエ兄さすがに偉人すぎる〉


 私たちはライバーだから、せっかく対戦するならということで毎回ちゃんと撮っている。デュエ兄がね、専用のカメラをハウスに用意しているんだ。あの人はカードの振興のためならなんでもするよ。

 その編集者というのも、なんでも最近解散したデュエコマ系YeahTuberの裏方らしくて。ちょうどVtuber好きだから張り切っていると聞いている。

 各種タイトル全般にちゃんと知識があって、あまり知らない人にもプレイヤーにも見られる編集は難しいからと囲い込んだらしい。デュエ兄自身が。


「まあさすがにデュエ兄は極端な例ですけど、電ファンはけっこういろんなものを仲間同士で布教し合ったりしてますからね。けっこうこういうのは多くて……私もね、どうしようか悩んでるものがありますよ」


〈これが電ファンの距離感〉

〈そういうの求めて電ファン見てるのよ〉

〈やろうぜ〉

〈何かは知らないけどやるべきだと思う〉

〈ライバーから布教されるものに悪いものなんてないんだから〉


 それは実際そうで、ライバーが本気で勧めるものはそれだけのものであることがほとんどだ。この箱は全体のモチベーションがやたらと高いから、なんだかんだで全員が引っ張られ合っているし。

 それとなく聞いてみたら、「あの倍率をくぐり抜けて夢を叶えさせてもらったんだから、魂賭けてやらないと嘘」と答えてきたのは陽くんだった。大好きな電ファン楽しい楽しいで自覚的には気楽にやっている私は肩身が狭い。


「ちなみに何かというと、音ゲーですね。ソシャゲ解禁もしたことですし。……なんですけど、初めてやるゲームらしくチュートリアルや低難度からちゃんとやるか、最初からゲームとして突っ走るか悩んでて」


〈アレじゃん〉

〈絶対アレだ〉

〈セレーネの布教ですねわかります〉

〈ならもっとボカロ曲歌っていいのよ〉

〈え、そんなん後者では〉

〈絶対後者の方が面白いぞ〉

〈突っ走れよ〉

〈迷う余地ありますか???〉

〈自分の需要を自覚してもろて〉

〈自分でギタドリとドラドリできるって言ってたじゃないですかー〉


 ……そういえば。確かに私、音ゲー経験もあることはもう言ってあった。歌枠に陽くんが乱入してきたときのことだ。

 ならいいか、最初からできる前提で始めてしまおう。未経験者に寄り添う初心者ムーブは他の子に任せるということで。

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