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【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】  作者: 杜若スイセン
再生リスト5:はじまりの六人と勧誘大作戦

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#117【デュエスぺ】月雪フロルのよくわかるサザナミヴォーパル講座【電ファン切り抜き】

 まあ、うん。ちょっと引きすぎたのは認めるよ。


「これは信じてほしいんですけど、私単体のときは普通だったんですよ。前の春から急におかしくなったんです。ママに聞いてもらってもいいですよ」


〈つまりマリエルのせいと〉

〈実際電ファン全体で春から引きはよくなってる〉

〈ここまでじゃないけどなぁ!?〉

〈*sper:ちなみに本当。本人は原因がわかるまで怖がってたよ〉

〈つまりマリエルの付属品扱いがマジで悪さしてると〉


 私はただ困惑して、そのうちデュエ兄が冗談で触媒とか言い出したことでマリエル先輩の特異体質が露見していった。本気で有り難がられてマリエル先輩はまんざらでもなさそうだったよ。

 ただね、マリエル先輩のメインマネージャーは私ほどじゃないんだよね。まあ影響は出ているようなんだけど、こうして配信で撮れ高になるほどではない。……つまり、あの人はサブマネというだけでない部分で私のことを自分のもの扱いしている可能性があって。




 まあいいか。とにかく、今ここにある結果は期待値1.8枚から5枚も出たシークレットと、確定パックを除いて期待値約22枚なのに35枚と1.5倍以上になった最高レアだ。180パックも開けて確率もある程度落ち着きやすい量になっているはずのところでのこれは、ちょっと言い逃れできない。

 構築済みデッキもキャンペーンで手に入っているけど、確率で出るプレミアムカード(イラストにエフェクトがついて光る。分解するとカード生成ポイントを多くもらえる)の存在も含めればそれプラス1デッキくらいは組めそうだ。


「というわけで、とりあえず構築済みのライスターは改造してそのまま使うのと……もうひとつ何かデッキを作っていきましょうか。何にしよ……」


〈フロルのライスター見れるの熱い〉

〈前使ってたのはドラギガスだったもんな〉

〈まあライスターは強化パーツもちょっと高いんだけど〉


 ライスターは高レアリティのカードが多い。紙のデュエコマだと高レアリティと言いつつ封入率は高いものが多いから意外とリーズナブルなんだけど、DCGではそこまでは再現がなされていなくて。構築済みデッキもそのまま環境テンプレリストというわけではないから、手を加えると相応にコストがかかる。

 だからもうひとつのデッキは安めに組めるものを探していたんだけど……目が合った。この間それはもうお世話になったあのカードと。


〈ヴォーパルシャーク「やあ」〉

〈運命だね☆〉

〈諦めろフロル〉

〈ちょうどいいじゃん〉

〈サザナミヴォーパルから逃げるな〉


「…………」


 アプリ版であるデュエスペは紙版より数年分ほど前のカードを追実装する形で展開されているんだけど、実はサザナミヴォーパルはけっこう歴史のあるデッキなのだ。それこそ、ちょうど数年ほど。

 そしてなんと、私はついさっきヴォーパルシャークをパックから二枚も引いていた。サザナミトンボはレア度が低めだからあっさり集まっているし、いくらなんでもできすぎている。

 そしてデュエスペには最高レアの各カードが独自リソースによって一枚まで入手できるシステムがあるんだけど……そう、サザナミヴォーパルは一枚から二枚しか投入しないカードがとても多いデッキである。つまり、デュエスペにおいてはけっこう安い。


「いいんですか? サザナミヴォーパルって自由度はやたら高い割に混色バランスがかなりシビアなので、構築にもけっこう時間かかりますよ?」


〈ええよ〉

〈ご本人のサザナミヴォーパルに勝るものなんてないぜ〉

〈いいからサザナミヴォーパル見せて〉

〈なんなら構築のしかたもおせーて〉

〈メインストーリーでリソース拾いながらライスター見せとけばおけ〉


 物好きなリスナーたちだ。ヒロイックで人気な主人公デッキであるライスターを前座扱いだなんて。私のサザナミヴォーパルという概念を擦れるうちに擦り倒しておくつもりなのだろう。

 まあいいか、こちらとしても都合はいいし。先にもう完成しているライスターでメインストーリーを進めて報酬を取りつつ、サザナミヴォーパルを作っていくことにしよう。






 というわけでまずはメインストーリーを進める。といっても分量もあるし、今回はスタートダッシュミッションの対象になっている分だけだ。


「まあ最初のうちは敵も弱いので、こっちのやりたい動きを存分にできますね。両方あったら『ライサンダー』降臨で大丈夫」


 ライスターというデッキは大元の主役となる『ライスター』を起点として、彼が歴史上の英雄の力を借りた姿を「降臨」というギミックで登場させて戦う攻撃的なデッキ(ビートダウン)だ。いわば特撮ヒーロー的な感覚があって、大人子供問わずかなり人気が高い。

 この降臨を行う先の英雄は複数存在するから、基本的にはそのとき引いたほうを使うことになる。レベルの高い実戦ならともかく、CPU戦ならどちらでも大丈夫だ。

 だけど両方引いて使える場合は、よりド派手なコスト踏み倒し展開の効果を持って押せ押せができる『ライサンダー』のほうがわかりやすく強い。一方で相手の防御力が高いほど、妨害性能の高いもう片方の『ライダルク』の有効さも増していく……という、降臨先の使い分けが魅力のデッキだ。


「なにしろDCGのストーリーモードって、序盤は初めてカードゲームに触る人でも勝って楽しめるように作られてますからね……それも第一弾のカードプール時点で。つまりこんな新しい時代のガチデッキを使う経験者にとっては、サンドバッグにしかならないわけで」


 端的に言えば、簡単すぎて魅せづらい。基本的にこっちがタコ殴りにするだけだから。

 だから配信としての見栄えは、デッキやカードのかっこよさに依存することになるんだけど……。


「うわ、かっこいい……。一応覗き見したことくらいはありますけど、こうして直にやってみるといい演出してますねコレ。アニメと同じ声で喋るのもちょっと嬉しい」


〈シンプルに楽しんでおられる〉

〈紙やってるのにDCG初めてだもんな〉

〈こないだの同期たちと同じ反応〉

〈フロルさんや、これがDCGじゃよ〉

〈実際かなり気合入ってる〉


 そっちについては、期待しつつも少し不安にも思っていたのが失礼なほどだった。高レアのカードを使ったときには全画面に広がる専用演出が発生して、アニメでも耳にした声でしっかり喋ってくれる。攻撃時のエフェクトは……これもアニメの再現か。

 単純にそうしてアニメで見たものを自分で操作できる没入感は、紙でのプレイ時にはない楽しさだった。UIもしっかりしていて、動作も直感的でありつつデジタルで管理できるところはうまく簡略化されている。紙のプレイヤーにもとっつきやすい。


「しかも各カードの条件や対象だとか、加算された数字だとか、今できることや実際と処理までゲーム側が誘導と肩代わりをしてくれるのはかなり楽ですね。これなら慣れてなくてもやりやすそうです」


〈なんか順当にレビューしてる〉

〈上質な宣伝になってない?〉

〈案件とか狙ってそう〉


「しかもこれ、VR版が開発中なんですよね。できたら本当に目の前にライスターが立つんですよね。やってみたいなぁ……」


〈めちゃくちゃしっかり宣伝してるぞ〉

〈まあわかるけど〉

〈もうちょっと案件欲しさを隠せ〉


 時は2030年、ダイブVRもオフラインゲームとしては多数発売されている。その技術を活用してデュエスペもVRゲーム化が進行中なのだそうだ。まさにアニメや漫画のような、カードが実体化する体験を楽しめるとあらば、楽しみでないはずもない。スマホの画面越しですらこれだけテンションが上がるのだから。

 それにさ、VtuberはVRゲームのプレビューに合いそうじゃない? 私もサザナミヴォーパルの件で向こうの公式に認知されているし、何度も公式に呼ばれて案件どころか向こうで仕事ももらっているデュエ兄もいるし、可能性はあると思いたくて。






「───この引きなら、次のターンに使いたい『ジャック・ザ・リッパー』はマストですね。相手が溜めてから一気に動くタイプですし、切り札を無防備に使わせたくないですから。

 それから、『空城の計』かな……。たぶん一番刺さるはず」


〈二投のジャックいやらしすぎる〉

〈ここでジャック抱えられるのやべーわ〉

〈相手の切り札終了のお知らせ〉

〈改めて嫌だな、こんな簡単に空城構えられるの……〉

〈サザナミヴォーパルって使う側から見たらこんな強いのか〉


 サザナミヴォーパルは対応力のデッキということもあって低級CPU戦では本領を出せないまま雑な勝ち方になってしまうから、こちらはいきなり対人戦に投入する。当たる初心者さんには悪いけど、舞台はレート戦だ。まだ初期値だけど。

 相手が準備してから一気に爆発するタイプのデッキだったから、ヴォーパルシャークの「山札の上から6枚を見て、そのうち2枚を手札に加える」効果の回収先をそれに合わせる。おそらく次のターンに使うと綺麗に刺さるであろう妨害カードの『ジャック・ザ・リッパー』と、その直後のターンに相手がしてくるだろう切り返しを先読みしたカウンターの手札誘発カードだ。


〈ラスリゲ取らなくて大丈夫なの?〉

〈見覚えのあるものが下に戻ったな〉


「ラスリゲは最終的にもつれたら抱えたいですけど、二枚入れてるのでジャック・ザ・リッパー込みならもう一枚が間に合います。どっちにしろ仕込んでおいた方がいいですからね。それにこの対面はジャストで空城を仕込んでおけば二ターンくらいもらえるので」


〈まあラスリゲって使うの終盤だもんな〉

〈今のサザナミトンボでラスリゲの当たり二枚仕込んでたなぁ〉

〈少なくともここまで一周させないとか〉

〈実際ここでの空城はゲームセット級〉

〈ラスリゲ撃つ前にこっちが殴り切りそう〉


 大晦日にも使った『ラストリゾート・ゲート』はあくまで最後の最後、負けそうなときに使う切り返しカードだ。そのときのためには抱えておいたり、重量級を通常詠唱で呼び出したりはするけど、今の状況ならすぐには必要ない。他のもっと出番が早いカードを手札に加えておいたほうがいい。

 相手は順調に下準備をしてきたけど、そこにジャック・ザ・リッパーを当てると露骨に動きが鈍った。そしてこの相手のデッキの場合、妨害されたときはプランBとして小粒を盤面に並べてくることになるんだけど……。


「残念そこは空城の計、と」


〈うわぁ……〉

〈ぶっ刺さってる〉

〈マジで試合終わったレベルだこれ〉

〈なんてむごい……〉

〈でも改めて選択肢多すぎてムズいなサザナミヴォーパル〉


 実際、難しいデッキだよ。今だって、相手のメインプランが通っていれば空城の計なんて使っている暇がなくて、ある程度確率を信じてラスリゲを抱えておいたほうがよくなる。空城を拾ったのは、あくまでジャックとセットだったからだ。

 敵のデッキと動き、それに自分の引きや動きと予定に合わせて適宜そのときに必要なカードをアドリブで選ぶのがサザナミヴォーパルだ。だけど楽しいよ、これ。デュエスペなら組みやすいし、少しは扱いやすくなるからオススメしておこう。

 作者は最近これの元ネタになったデッキを本当に回しています。型にもよるとはいえ本当に扱いが難しいので、どう考えても初心者に勧めるものじゃないです。

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