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【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】  作者: 杜若スイセン
再生リスト5:はじまりの六人と勧誘大作戦
116/141

#116【デュエリズム・コマンダー デュエルスペース】需要【月雪フロル / 電脳ファンタジア】

 Vtuberは人気商売だからね。何かを強く求められたときに取るべき反応は二つだ。すなわち、素直にやるか、嫌がる様子をコンテンツにするか。

 つまりやりたくないわけではないならやるべきだ。そうすればみんなハッピーなのだから。


〈デュエスペだ!〉

〈待ってたぜカードゲーム〉

〈初見です〉

〈デュエコマ界隈から来ました〉

〈ヴォーパルクイーンが配信すると聞いて〉

〈サザナミの魔術師のプレイングが見られる!?〉


「待ってください誰ですか変な二つ名をつけたの、しかも複数……。初見さんいらっしゃい、電脳ファンタジア四期生の月雪フロルです。名前だけでも覚えて帰ってくださいね」


 というわけで、今日やっていくのは『デュエリズム・コマンダー デュエルスペース』。デュエコマのDCG版だ。当然他にもDCGタイトルはいくつも存在するし、同僚が配信したことがあるものも数個あるんだけど……まあ、さすがに私の場合は最初はこれだろう。

 いきなり妙なあだ名が見えたけど、それはいいとしよう。……実のところ、年越し配信から半月ほど空けたのは半分わざとだ。デュエコマ界隈に話が伝わるのを待ちつつ、忘れられる前のタイミングでやるつもりだった。


「というわけで、ここにデータのダウンロードまで終わった状態のデュエスペがあるんですけど……実は私、これが初ソシャゲです」


〈せやな〉

〈そっかそういや〉

〈いきなりDCGで草〉

〈え?〉

〈Vってけっこうソシャゲやるもんじゃないの?〉


 これは私のファンの中では知られている話だけど、今日は初見の人も多い。よくあることではないし、一度おさらいしておこうか。


「私はものすごく端折っていうと、スカウトからスタッフを経てライバーになったんですけど、そのスタッフ時代に何人かのライバーのサブマネージャーをやっていまして。

 そのうちの一人に、超のつく幸運体質の人がいるんです」


〈うん?〉

〈いきなり複雑な経緯だなおい〉

〈本当にものすごく端折られてそう〉

〈マリエルさん……〉

〈ソシャゲやるってことは落ち着いたのか諦めたのか〉


「その人から幸運体質が伝染したところまではよかったんですけどね。他のライバーによる、私を彼女の代理触媒にしてガチャを引くという謎の試みが、成功してしまいまして。

 私は何か幸運を引くたびに、システム的に自分が彼女の所有物扱いのようになってることを突きつけられることになっていたので……これまでソシャゲは避けてたんですよ」


〈えぇ……〉

〈そんなことある?〉

〈何度聞いても草〉

〈やっぱおかしいよこの話〉


 マリエル先輩の運が異様にいいことと、私がマリエル先輩のサブマネージャーだったことと、電ファンハウスではガチャを引くときにマリエル先輩から何か借りてきて触媒にする文化があることと、私そのものが触媒として成立した話を全部してようやく説明できる話なんだよね、これ。

 普通なら初見さん向けにわざわざ話すことではないんだけど、今回は話しておく必要があった。でないと刺されかねないから。


「そういうわけで、これから開封する新規プレイヤーキャンペーンのパックも、ちょっとアレな出目になる可能性がありまして……。どうか刺さないでください」


〈草〉

〈命乞い草〉

〈まだタイトル画面だぞこの配信〉

〈アレな出目って普通悪い方に使う言葉なんよ〉


 いやね、これは先に言っておかないといけなくて。世の中には配信中の引きがよすぎて夜道を心配(おど)される配信者もいるからね。

 幸いわかってもらえた。なにしろこれはおそらく出処が私でない上に、私自身にもコントロールできないのだ。そのくせ裏で試してみると、マリエル先輩から物的な触媒を借りているみんなより効果が大きいし。






 まずはチュートリアルなんだけど、これは問題なく進んだ。紙のほうとはいえ私自身経験があるから差異を覚えるだけだったし、初見さんたちはこちらは知っている。だから普通にやるときのように、普段の民草たちに対して説明する形式で済むのだ。


 デュエコマはマナコスト制のシステムで、混色は可能。特色としては攻撃されればされるほどリソースが増えるから、うかつに攻撃すると相手が有利になる。

 これによって“死な安”の精神や防御の判断、そして攻撃のタイミングや頻度の見極めなどの奥行きが生じている。「攻撃できるのにしない」が当たり前なTCGは少数派だろう。


「まあ先日見せた『ラストリゾート・ゲート』の例は極端ですけど、中には相手の攻撃を起点に大爆発するカウンターデッキなんかもあったり」


 話そうと思えば話せることはいくらでもあるけど、まあ適宜でいいだろう。知らない人に教えるときは、実例をもって見せないとまず伝わらないものだから。

 結局、私の配信を見るのに不足しなければそれでいい、という人の方が多いだろうし。それはデュエ兄の影響でカードゲームに理解のあるリスナーの多い電ファンでも大きくは変わらないことだ。




 何はともあれ、最初の山場にいこう。予防線は張ったけど、みんな期待しているだろうから。


「じゃあパック剥きましょうか」


〈よしきた〉

〈とんでもねえ、待ってたんだ〉

〈どんなもんなんだ?〉

〈初見だからこの子がどのくらい運いいのかわからん〉

〈ソシャゲやってないから初見じゃなくてもよくわからんぞ〉

〈強いて言うなら麻雀四戦で役満アガってる〉


 確かにこれまでにやったことといえばそれくらいかな。この件を話したときはマリエル先輩だったし。

 思えばあれは運がよかった。ちゃんと攻めた結果かつ、あそこまでしなくても順位はそう変わらなかったとはいえ。


 というわけでお待ちかねのガチャタイムだけど、これはDCGだからそれに応じたパック開封形式となる。一パック五枚入りで一度に十パックまで開封可能、レア度は五段階とシークレットがある。一番上のレア度の封入率はだいたい八パックに一枚くらい、シークレットは100パックに一枚ほどといわれている。

 各弾300パックで天井になっていて、到達するごとにシークレットを含めて好きな最高レアを選んで獲得可能だ。五種類あるシークレットのうち二種類についてくるキャラクタースキンは、一点狙いならだいたい500パックに一枚の確率。基本は天井で手に入れるけど引けたらラッキー、というのが主な認識だ。


「それじゃ、まずは一番古いものから」


 このゲームにはいわゆるスタン落ちといわれる、新しい弾のカードだけが使えるルールが存在する。目まぐるしく変化する環境で新鮮な戦いができるスタンダードルールと、これまでの全てのカードが使えるノーリミットルールの二つが主なフォーマットだ。

 スタンダードルールの対象になるのが、合わせて最新六つのパックと最新の構築済みデッキ。デュエスペは新規プレイヤー向けのキャンペーンとして、新しくできたアカウントにはその六弾を30パックずつと構築済みデッキひとつ、そしてスタンダード内の最高レア確定パックを2パックがプレゼントされる。かなりの大盤振る舞いだけど、つまり開けるのは180+2パックだ。


「……あっ」


〈あ〉

〈おい〉

〈やったぞこいつ〉

〈早すぎるだろ!!〉

〈これがさっき言ってた……〉

〈マリエルの祝福、嘘をつかなすぎる〉


 ちなみに、パックの開封演出は一度の開封に一度、その開封内に最高レアが含まれるかどうか、シークレットが含まれるかどうかで変化する。漏れる光が虹色になったら最高レア確定、白い閃光が画面を埋めたらシークレット確定だ。

 最初の10パック、演出は……閃光。単純計算で10%なんだけどな……。


「まあ、はい。これがマリエル先輩の魔力というか……私がソシャゲ配信してこなかった理由というか……しかもいきなりスキン付きだ」


〈やってんねえ〉

〈こんな秒速で回収してくることある?〉

〈これがVtuberか〉

〈自分自身が触媒なの強すぎ〉

〈つまりマリエル本人がやったらこれ以上と?〉


 スキンが獲得できる確率はそこからさらに五分の二、つまり4%だ。我ながら薄々そうなる気がしていた通りのロケットスタートとなった。

 あれだね。けっこうヤバいことしてるんだけど、予想と覚悟が済んでいるからそんなに叫ぶようなテンションにならないね。……そうだと思ったから、ソシャゲはやらないできたという話だ。


「じゃあ次の弾いきましょう。思ってたより早くフラグ回収できたので、むしろここからは平和なは」


〈まあいうて30でスキン1か〉

〈知ってるか、100連で1%を引く確率は63%だぞ〉

〈あっ……〉

〈あのさあ〉

〈何が平和だって?〉

〈言い切る前にフラグ回収してる……〉


 ……おいしいよ、こんなに綺麗に展開が成立して。うん。

 つぎのふたつめの弾も、最初の10パックが閃光。私に染み付いた私のものではない運は、私をいっこうに休ませてくれない。


 知ってるよ、ガチャで引ける確率は直感より低い。しかも今回の場合は30連で0.4%だから、スキンを引ける確率は11%ほどだ。それをいきなり引いているのだから、ちゃんと運がいいことがわかるだろう。

 さすがに今度はスキンのないシークレットだったけど……それでも、30連二回でどちらもシークレットを引く確率は7%ほどである。

 そんな幸運の連続を、ただの担当のサブマネージャーに付与してしまうマリエル先輩の末恐ろしさたるや。もしかしたら私のことを「自分のもの」くらいの独占欲で見ていたりもしたのかもしれないけど、執着の有無にかかわらず他人に与えている時点でおかし


「んん!?」


〈ファッ!?〉

〈あーあ〉

〈フロル……〉

〈ごめん、マリエルのせいだとわかってても俺、キレちまったよ〉

〈魔王の力に染まった暴走アルラウネは討伐しなきゃ……〉

〈今そっちに勇者を送りました〉


 ……通算82パック目、三枚目のシークレット。しかも今度は低確率で発生する無演出排出で、ふたつめのスキンだった。

 でもやめて、私を討伐しようとしないで。魔王マリエルの影響さえ抜ければ、私はただの善良なアルラウネだから。ね?

 明らかな元ネタ。

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― 新着の感想 ―
誰とは言わないが、色は赤が好きだったりスケルトンが好きだったりしそう
そのうち引く回数分のあたり期待値を超えたら買い物し始めるな……おそらく元ネタの方はそんな当たらないといいながら肩を組もうと近づいてきてリスナーの肩を脱臼させてくるが、こちらははなっから当たると明言して…
はっきりとは言わないんですが、イメージは多分社長ですね。 リスナーさんも社長も優秀で、パック剥き配信をしっかりエンターテイメントとして昇華してコメントと社長のやり取りを聞いてるだけでも面白い感じしま…
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