#112【ドラグメントエイジ】こんなかに全部EXTREMEで通すの日和ってる奴いる?いねぇよなぁ!?【月雪フロル / 電脳ファンタジア】
年明けからいくつかやることもあったけど、ようやく落ち着いてきた一月十日。いよいよ九津堂超高難度チャレンジの二番手こと『ドラグメントエイジ』に手を出すときがやってきた。
ちなみにクロリロのクリアテイクからずっと一人ゲームをやっていなかったから、なんと二十日ぶりだ。年末年始忙しすぎない?
そんな久しぶりのゲーム配信で、私は。
「どうした? そんなもんか!? チュートリアルとはいえEXTREMEでしょ、一発くらい当ててみなよ!」
〈この子誰……?〉
〈マジで知らん挙動で草〉
〈フロルちゃん壊れちゃった……〉
〈三ヶ月も配信やってまだこんなの隠してたのかよ〉
〈コレが二年半デビュー渋ってたの人類の損失では?〉
〈いいぞもっとやれ〉
テンションが上がりすぎておかしくなっていた。
「ほらこのままだと完封されちゃうよ! EXTREME初見にノーダメ最速撃破されるまでさーん、にー、いーち…………やっちゃった」
〈煽りガキで草〉
〈メスガキフロル助かる〉
〈マジでおもろい〉
〈なんなんだよこの配信適性の塊〉
〈ぜろって言え〉
〈ぜーろはないんですか?〉
〈正気に戻るの速すぎて草〉
〈やっちゃったってことは意図的に隠してたんですね!?〉
とりあえず、最初からクライマックス難易度なチュートリアル戦闘を完封したところだ。なんだけど……うん、まずは弁明しないといけないかな。
いやほら、予告なしで豹変しちゃったから。しかも意識でコントロールしないまま。
「えー、と……今のは、ですね。私の前からの悪い癖でして。ゲームで勢いのままに楽しくなっちゃうと、我ながらだいぶアレな状態になるというか」
〈前から!?〉
〈素なのかよこれ〉
〈配信意識すらせずにこんな面白くなるの?〉
〈どうしてこれまで隠してたんですか〉
〈面白いからもっと見せて〉
〈なんで謝罪弁明の雰囲気なんだよもっと誇れ〉
「いや誇れはおかしいでしょ」
ちなみに隠していたわけではない。隠す気はあったんだけど、今が隠さないといけなかった初めてのタイミングだった。そんなタイミングで三週間ぶりの個人ゲームで楽しくなってヒャッハーしてしまったのだ。
やたら歓迎されているけど、私的には恥である。コンプラ意識くらいは頭の中に残っているからまずいことは言わないけど、こう、かなりキャラが変わるから。オラオラ系のキャラは私も嫌いじゃないけど、自分がなると恥ずかしいというか。
「まあ電ファン内ではデビュー前に裏でやらかして知れ渡ってるので今更なんですけど、さすがに配信で見せちゃうのは恥ずかしい……」
〈やらかしてたかー〉
〈じゃあ時間の問題だったのでは?〉
〈ってことは別に隠し通すのは無理なことだったか〉
〈ガチ恥じらいかわいいからいいよ〉
「ま、感情までコンテンツ化されるのがVtuberだとはわかってるのでいいんですけど……。ちなみにこれまで出てなかったのは、出るようなゲームやってなかったからです」
隠したがっておいて出しているのだからわかりきっていると思うけど、これは今のところコントロールできていない。今コントロールを試みる理由すら失ったような気はするけど、できないということは発生していない理由は他にあったということだ。
思いっきり楽しくなってしまわない低難度のゲームやステージでは出てこないし、高難度でもクロリロのようなアクション性より戦略性重視のものは思考を回して理性的になる。あと、夢エティアのときはバレないために静かにやる意識が先行したから出なかったし、対人ゲーではさすがにこんなの出さない。
〈つまり野生が出たってことか〉
〈あれだけ都会かぶれしといて野生隠せてないじゃん〉
〈あれ、プロフィールには都会っ子アルラウネって……〉
〈じゃあ二回目の配信でRTAしてたときは?〉
「あのときはめちゃくちゃ緊張してたので……」
〈あれで?〉
言いたいことはわかる。だけど、事実そうなのだ。私はがちがちに緊張したまま喋るとハイにならない代わりにああなると、私もあのとき初めて知った。
……ああ、公式サイトにあったねそんな記述。『妙に現代っ子なアルラウネの女の子。獲物不足で街に降りたはいいが、都会暮らしが楽しすぎて居着いた挙句そこらの人間より俗な言動をするようになった』だったっけ。……都会かぶれって表現いいね、自称しようかな。
〈急にスイッチ入って暴れ出すの、なんか食虫植物みたいだな〉
「ハエトリグサ? あながち間違ってないかもですね、アルラウネってもともとそんな感じですし」
〈開き直ってる〉
〈もう悪びれるのやめたんですか?〉
〈種族特性だったのか……〉
さて、改めて。
『ドラグメントエイジ』は九津堂からリリースされた弾幕系シューティングゲームだ。クロリロとは違って自社IPで、九津堂四天王なんて呼ばれることもある有名タイトルである。
「あらすじをざっくりまとめると、『竜人たちが原因不明の何かによって竜に変身したまま戻れなくなって暴れ出したから、竜を癒す力に目覚めた主人公レオンハルトが各地で竜を鎮めて脅威を取り除く』ですね。要は竜を見かけたら片っ端から殴って正気に戻していけばOKです」
〈おっと脳筋〉
〈間違ってないけど言い方草〉
〈もしかしてまだハエトリグサモード残ってます?〉
「ハエトリグサモードってなんかアレですね。いいモード名とか募集しようかな」
〈開き直りすぎだろ〉
〈モード名ってなんだよ〉
〈コンテストですか!?〉
さきほどプロローグで、レオンハルトは行き倒れていた竜人の少女レインに触れることで覚醒、そのまま彼女を癒したんだけど……なんとレインは記憶喪失。名前も所持品からわかっただけで、本人は覚えてもいないありさまだった。
そんな中でありながら、直後のチュートリアルで暴走した竜と対峙することになったレオンハルトに協力。自発的に竜形態へと変身したレインに乗って、魔術やブレスによる弾幕戦で勝ったところだ。暴走が収まったその竜もレオンハルトに協力の意思を見せた。
「こんな感じで、ハルトは仲間にした竜とタッグを組んで戦っていくことになりますが……竜キャラ縛りはそもそも不可能なのでやりません。強制出撃とか、属性無効とかありますからね」
〈だから代わりに再戦ノアEXTREMEやろうとは普通ならんのだけどね〉
〈だいたいわかった〉
〈解説たすかる〉
〈キャラ収集ゲーか〉
そう、キャラ収集要素のある弾幕RPGだ。一部は条件をクリアする必要があるけど、倒したキャラが仲間として加入して使えるようになる。
属性相性と弾幕や移動能力などのタイプが存在する上、キャラごとに必殺技もあるから多数あるキャラクターの個性はある程度しっかり出る作風になっている。各キャラの育成要素はあまりない分、どのキャラにも適正ステージが用意されている充実ぶりだ。
それに応じたハウジング・交流要素も人気の一部なんだけど、今回はそちらはほどほどに。
「それから、最初に迷わず難易度EXTREMEを選びましたが……難易度選択があるということは、道中のストーリー攻略もクロリロとは比較になりません。ちゃんと難しいです」
〈難しそうじゃなかったです〉
〈チュートリアルもちゃんと激ムズなはずなんだぞ月雪ィ!!〉
〈フロルは煽りながら完封したけどね!?〉
〈これEXTREMEだよね?〉
弾幕系シューティングということで、本作には難易度設定が存在する。EASY、NORMAL、HARD、MASTER、EXTREMEの五段階があって、戦闘ごとに突入時に切り替えられるんだけど、このうち最後のEXTREMEは基本的に選択を推奨されないほどの超高難度だ。ゲームとして楽しませることを一度忘れて、高難度チャレンジの歯応えを用意したと開発インタビューにあった。
中には高難度クリアを加入条件にするキャラもいるけど、その条件は基本的に「HARD以上」または「MASTER以上」であって、EXTREMEは要求してこない。……たった一人を除いて。
「これは軽いネタバレになってしまうので、今から言うのは少しはばかられるのですが……ラスボスの『ノア=リントヴルム』のみ、加入にEXTREMEクリアを要求します。それも、さらに難易度が上がった再戦時に」
〈そうなんだよなぁ〉
〈ノア様……どうして……〉
〈人外にしかノア様を使わせないようにしたドラエイ開発チームを許すな〉
〈既プレイ勢の怨念が〉
〈そらヤバいわ〉
一応、ノアに限っては性能面ではどの難易度でも同じ報酬になっていて、あくまで報酬になるのはスキン的な要素という救済はあるんだけど……ノアはラスボスでありつつとても人気のあるキャラだから入手方法をとんでもないものにした開発チームへの怨念は絶えない。
今回私がやっていく挑戦は、そんな再戦ノアEXTREMEクリア。つまりこの上級者に“優しい”ドラグメントエイジというゲームの中で、最も高難度なステージを攻略することだった。
…………公式が想定してわざわざ作り上げたステージを攻略するだけで、ここまで騒がれるほどのチャレンジになってしまうのだ。やっぱりこのゲーム、おかしいと思うよ。
魔剣精霊をご覧の方にはお馴染み? あのモードの初披露。