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【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】  作者: 杜若スイセン
再生リスト5:はじまりの六人と勧誘大作戦
109/141

#109【電ファン切り抜き】神復元師と隙を生じぬ二段構え【四期生コラボ】

 当たり前だけど、やっている間より見ているときの方が楽しいねこのゲーム。次が四つめのお題……まだ半分あるのこれ?


『ミラーリングを踊るフーみゃ……知ってるやつだ!』

『これはいけたのでは!?』

『はい上手い。シンプルにクオリティたけぇわ』

『もう全部フロルくん一人でいいんじゃないかな』

『フーちゃん、かげぶんしんだってばよ!』

「木ノ葉隠れならできるよ」


 これは一枚目が私ので、そのままアンリさんが答えた。褒めてもらえるのは嬉しいけど、伝言ゲーム中になんてこと言うのアンリさん。あとみゃーこ、それ多重のほうじゃないと意味ないし私は体内に何も宿してないよ。

 続けて描いたのは陽くん。彼もそろそろこの場の全員から信用されてきている。上手いわけではないけど、要点を伝えるのが上手いから。


『伝わるのが凄いよね』

『俺は下手だと思うんだけどな』

「画力でも中央値だよ陽くん」

『ええ!?』

『ほんとにじかくなかったんだね、あんりさん……』

『まあ陽さんが中央値なのは私たちのせいですが……』


〈まあ上手くはないけど〉

〈造形が崩れてないからわかる〉

〈腕の長さとか可動域とかがちゃんとしてるから人に見えるよね〉

〈人に見えないものを描く人が三人いるから……〉

〈アンリ、俺恥ずかしいよ〉


『でも陽くん、なんでそんなに破綻しないの? 純粋に気になるし、理由があるなら参考にしたいんだけど……』

『そうだな……強いていうなら、棒人間にしても違和感ないようにはしてる』

『なるほど! 確かにそれで形はできますね……!』


 そして向こうの三人はとても生産的な話をしていた。確かに棒人間は悪くない手だ、関節の位置がわかりやすくなって曲げてはいけないところがわかるようになる。

 というか、実際に棒人間で提出した人がいないのが凄いと思う。真面目だ、四期生。


「ここでみゃーこなら勝ったね」

『本人たち両方に回ったのかこのお題』

『めちゃくちゃそう見えるじゃん』

『これはさすがに簡単でしたよ。このゲームはほぼ上手い三人の絵が回ってくるかどうかです』


〈圧倒的信頼〉

〈実際みゃーこなら伝えられる〉

〈こんなに見事に伝わるゲームだったっけこれ〉

〈何よりもお題の出し方が上手いんよ〉

〈ちよりん身も蓋もないこと言うじゃん〉


 ゆーこさんは陽くんの絵はしっかり読み取って、次がみゃーこだった。私たちはこの時点で勝ちを確信したけど、いざ見てみるとしっかり上手い。

 そもそも自分たちで踊ったからどう魅せればいいのかわかっているのも多少あったとはいえ、これは誰が見ても伝わるだろう。現にちよりんも正解できていた。

 

 ……本来こんなに伝わるゲームではないんだけど、今回はお題が狭い上に全員がよく知っている範囲内にあるからメタ読みが利くんだよね。同期の絆にはちょっと自信があるとはいえ、お題の指定を広げたらこうはいかないと思う。






 五つ目のお題。出題者は陽くんだ。


『森を歩くマギにゃちゃん、眼福だったよ』

『いきなり自分がでてきてびっくりしたけどね……』

『……そんなのありましたか?』

『……そうか。二人の誰かがやったか』


〈あっ〉

〈これは……〉

〈大☆正☆解〉

〈マジか……〉

〈ガッツポ出たわね〉

〈ガッツポしていいよこれは〉


 私は無音でガッツポーズしたけど、ちょっとだけ黙っておこう。残り二人も黙っているのは、どちらがやってどちらが空気を察知したのか。

 となると、私の手前がちよりんだね。マギにゃ本人の描いた絵をみゃーこはしっかり伝言に成功して、その次が……。


『……なんだこれ』

『ま、まっくろ……』

『こ゛め゛ん゛な゛さ゛い゛ぃ゛』

『ガチ謝罪だ……』

『い、いいからっ。わたし、服も髪も色はくらいしっ』


〈幽子、お前だったのか〉

〈ほぼ画角真っ黒じゃねえか〉

〈ここから森までは見出したのちよりん大手柄では?〉

〈マギにゃ聖女か?〉

〈自分がこんなローグライクに出てきそうな真っ黒な影にされて庇えるいい子〉


 端的にいえば、ゆーこさんが描いたのはほぼ塗りつぶされたような濃紺の影だった。色使いまでは正しかったけど、森を描こうとして引きの画角にしたらもうマギにゃを描きようがなかったのかな。

 で、これを見たちよりんが出したのが「森を蠢く黒い影」と。まあ確かに、ぱっと見はそうにしか見えない。けど……。


『……嘘だろ?』

『え? え!?』

『なんでここからわたしにもどってるの!?』

『不正! 不正はよくないよフーちゃん!』

『月雪フロルさん、現行犯です』

「違うよ! メタ読みしただけだから! 配信遅延あるんだからわかるでしょ!」

『だとしてもおかしくないかいこれは……』


〈?????〉

〈なんでだよ!!〉

〈いやおかしいわこれ〉

〈なんであそこから完全復活するん?〉

〈消えたマギにゃが戻ってきた〉

〈超能力か……?〉

〈フロルの過去一ヤバい所業がこんなところで更新されるとは〉


 そう、私の決め打ちが綺麗に当たったのだ。おかげで他の絵よりだいぶ簡素だけど、全員がマギにゃだとわかるものに戻っている。

 さすがに驚かれているけど、たぶん一番驚いていたのはアンリさんだろう。黙っていてくれてありがとうね。


「森なら私かマギにゃだって決め打ちして、黒い影ならマギにゃかなって。私なら緑で描くと思ったから。つまり色が残ってたのと森だけでも読み取ってくれたのグッジョブ」

『それだけでこれをここまで……?』

『頭の回転が早すぎませんか……? そんな時間はなかったような……』

「考えるのに半分以上時間使ったから他よりだいぶ雑だよ」

『雑でここまで明確に伝わるあたりもヤバいよな』


〈ほぼないような情報量からこれ?〉

〈探偵やったほうがいいよフロル〉

〈ゆーこさんもちよりんも釈然としてないぞ〉

〈そんだけでファインプレー扱いされても喜べんだろうよ〉


 というわけで無事にアンリさんにも伝わってクリアになった。みんなあんまり納得いってなさそうだけど。

 いい見せ場になったと思う。DarticMailをやるなら何かやりたいと思っていたけど、けっこう満足したよ。






 六つめ、ゆーこさんの回だ。お題は「ゲームをする月雪フロル」。


〈こっちも当たったのかよ〉

〈なんなんだこのアルラウネ〉

〈もうお前が探偵でいいよ〉

〈神絵師と一緒にいるとここまで感受性が高まるのか〉


『は、陽くん……』

『ここまでの陽の絵の中ではかなり……』

『フロルちゃんは溶けちゃってるねぇ』

『やってくうちに慣れてったんだよ! これは最初だったから……!』

『そっか……はるくんでつたわらなくなるパターンもあったんだ……』


 と思うじゃん?


『やっばりふろるちゃんおかしいよ!』

『何故だ! 何故復元できる!』

『今度こそ現行犯だよフーちゃん』

「いやほら、ゲームのコントローラーと緑色があったから」

『それだけでわかるのがおかしいっていってるんだよ!?』

『本当に緑なら自分って認識で通したんだねフーちゃん……』


〈本当にそう〉

〈これを読み取るのが当たり前だと思わんでもろて〉

〈結果的にどっちも当たってただけなんだよなあ〉

〈つまり画伯の絵は色で見るべきなのか〉

〈お題が絞られてるからこそではある〉


 これの読み取りも正解だった。まあ確かに他人事なら伝言ゲーム成立に多少驚く流れだけど、お題の狭さに助けられたね。

 ただ、そうか。陽くんが棒人間で破綻を回避していたなら、手は凄い形になっていたのも頷ける。たぶん本人も反省して、次から描ける構図を描くようにしたのかな。


 ただ問題があるとすれば、反応からして少なくともマギにゃ、もしかしたら他の面々にもこのお題は伝わっていない。その原因は次にあった。


『ああ……』

『フロルくんが溶けたね』

『うん、まあ、さっきから千依ちゃん黙ってるなーとは思ってたよ』

「DarticMailっぽくなってきたね」

『ぽくなくしてたのふろるちゃんだけだけどね?』

『なんか、フーちゃんが神復元した後と思うといたたまれなさが倍増するね』

『言わないでください……私はフロルちゃんのスーパープレーを台無しにしたんです……』

『大丈夫だ、この回に関しては俺ら同罪だ』


〈あー〉

〈実家のような安心感〉

〈そら陽に突っ込めないわな……〉

〈アーカイブでこのときのちよりんの表情見に行くか〉


 まあ……その、擁護するなら、コントローラーがそうとわかるかどうかという点にかけては、陽くんより上手かった。ちゃんと最近のモデルだったから。

 ただね。さっきのゆーこさんとも、今の陽くんとも違って、緑色自体がなかった。これは私に回ってきていてもたぶん無理だと思う。

 これを見たアンリさんは機転をきかせて「フロル愛用プロコン」にはしたけど、マギにゃがそれに忠実にコントローラーの絵として描いたこともあってみゃーこの最終回答も「月雪フロルのプロコン」でストップ。溶けた私は戻ってこなかった。




 そして最後。残っているのは、私に最後に回ってきたものかな。

 実のところ、私が絵を見てわからなかったのはこの回だけだ。だから私はこの時点で失敗を確信しているんだけど……ちよりんから出てきたお題は「ホラーゲームで絶叫する幽子」。……そういうことだったか。


『こわ……』

『ホラー画像ではあるな。いやそういうことではないんだが』

『この時点で幽子さんってわかるかどうか……』

「いや、まだゆーこさんだよ」

『それはふろるちゃんだから……っていうべきところだけど、うん。わかったよ』

「定型ネタ化しないでマギにゃ」


 そう、真っ先に筆が回ったのはゆーこさん。端的にいえば、この時点でほぼ解読不能だった。……いや、ゆーこさんであることまでは細部で読み取れるかな。

 ただ、既にホラーゲームは消えている。回答者マギにゃは頑張ったけど、「絶叫する四ツ谷幽子」。


『いえ、幽子さんがホラーゲームをよくやるのは周知の事実ですし、これならまだ機転次第で戻せるのでは……!』

「そのへんどうなのってことで、次……あ」

『あー……』

『なんだい、私はそんな反応をされるほどだったかい!?』

『残念ながらそうだと思うよ』


〈まあせやか……?〉

〈マジで頑張ればいけるか〉

〈ここフロルなら戻せそう〉

〈ゆーこさんが絶叫するならホラゲだしな〉

〈あっ〉

〈ここでアンリさん……〉

〈アア、オワッタ……!〉


 七人でこのゲームをやった場合、お題出し一回、お絵描き三回、回答三回の配分になる。だから最終グループであるこの回は誰がどっちかは数えればもうわかるんだけど、喋るほうに集中しているしリアクションはリアルタイムのほうがいいから数えていない。

 だから私たちが絶望に叩き落とされるのは同時だった。……もとい、これ以降の三人はわかっていたことではあるんだけど。


『しっかり幽子要素も消えたな』

『これはもうどうしようもないね……』

『開始前に画伯扱いだった幽子さん、もしかしたらブービー脱出……?』

「ゆーこさんだとは伝わったもんね。さっきも色は置いてたし」

『これは格付け完了か……?』


〈もう本当になんもなくて草〉

〈四択になっちゃった……〉

〈アンリ、俺恥ずかしいよ〉

〈ゆーこさんですらマシな方だったなんて〉

〈ガチ上手3画伯3の両極端DarticMailおもろすぎる〉


 全体的にはバランスが取れているのかもしれない。なんだかんだで三勝四敗、この手のゲームにしては成功率はかなり高い方だ。

 ただ、ここでゆーこさん要素も消えてしまったお題はみゃーこも「絶叫する女」までしか答えようがなくて、困り果てて要素を足せなかった陽くんを経て私は「『叫び』」と軽くボケるしかなかった。まあ、このくらい崩壊する方がこのゲームとしては正しいか。

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