表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】  作者: 杜若スイセン
再生リスト5:はじまりの六人と勧誘大作戦
107/141

#107【Dartic Mail / 四期生コラボ】うち良心枠だから画伯が見たければ他へどうぞ【月雪フロル / 電脳ファンタジア】

 ことのあらましはこうだ。


『そういや四期生七人でのコラボやってなくね?』

『ボイチャで集まりすぎて忘れてた!』


 以上。


 我々四期生はそんな軽いノリで全員コラボをやることにした。七人もいる割にはスケジューリングも企画相談もとんとん拍子だった。

 まあ、今回は単純なものだからね。前回のメリカみたいに、追加で独自ルールを入れたり先輩やマネージャーの手を借りたりはしない。


『ルールせつめー!』

「そのイントネーションは結果発表のときに使うやつだよ陽くん」

『まあ知っている人も多いとは思うが、今回やっていく『Dartic Mail』は一言でいえばお絵描き伝言ゲームだ。一人目がお題を決める、二人目が制限時間内にそれを描く、三人目がそれを見て文字で伝える……と繋いでいく』

『今回は七人だから、絵が三回挟まれることになるね! お題決めのあと、お絵描きとお題当てを交互に三回繰り返すよ!』

『さいごの答えがお題とだいたい一致してたらクリアだよ! 協力制だからね! みんな、協力制だからねっ!』

『……なんで二回言ったのマギアちゃん』

『皆さん、これ台本ありませんからね』


〈OKわかった〉

〈息ぴったりすぎるだろ〉

〈四期生の絆たすかる〉

〈大事なことなので二回言いました〉

〈アドリブでこれ?〉

〈でもその絆もう揺らぎはじめてるよ〉


 まあだいたい言われた通りだね。平たくいえばお絵描き伝言ゲームだ。このくらいの人数のコラボにはぴったりのやつである。

 マギにゃがわざわざ念押ししたのはツッコミ待ちだけど、実際これは協力ゲーだ。だから画力や読み取る力はあるほどいいんだけど……まあ、往々にしてこういうゲームの撮れ高は上手い人以外のところに現れる。


 そして四期生の中だと、ゆーこさんの絵がちょっと独創的なのは割と有名な話だ。麻雀のときの罰ゲームでTsuittaアイコンを自作絵にしてもらったけど、私にはあの未来的な絵は上手く読み取れなかった。

 だけどゆーこさん、甘いよ。画伯担当が自分だけだと思わない方がいいよ。Vtuber七人、お絵描き、何も起きないはずもなく……。






 さっそくいってみよう。一回戦。


「まあ様子見ってことで、わかりやすいようにお題の範囲は狭めでいこっか」

『おてなみはいけん、だね!』

『最初くらいはばっちり決めようじゃないか』

『あの三人元気だな。期待していいのか……?』

『フーちゃんは絵師並みだから大丈夫だと思うよ。……はあ、比べられちゃうのかぁ』


〈既にテンションの差あって草〉

〈始まってすらないんだよなあ〉

〈まあフロルが上手いのは知ってる〉

〈スタンプ描くときママ寂しそうだったもんな〉

〈後輩のママにならされたら面白くね?〉


 ちなみに今回は不正が起こらないように配信そのものに遅延がかかっている。だから私たちに見えるコメントはゲーム一セット分遅れてくるわけで、今何を言われているのかはリアルタイムでわからない。というかそもそも終わってから読むつもりでいつものようにコメント欄を手元に置いていないから、何を言われていても把握しているのはマネージャーだけだけど。

 なお開始前のテンションは大きく三種類に分かれた。平気もしくは楽しげなのが私のほかにマギにゃとアンリさん、ちょっと自信なさげなのが陽くんとみゃーこ、もう口数が減っているのがゆーこさんとちよりんだ。

 ただしこれは往々にして実際の画力と比例しない。自信満々から画伯、なんてこともよくあるし、あれだけ不安げなみゃーこは別に普通にそこそこ描けることを私は知っている。あれはことりと私が比較対象になっているだけだ。


『じゃあお題は、四期生!』

「これまでにやったこととか?」

『やりそうなことでもいいよ! かかわってれば本人じゃなくてもだいじょぶ』


〈まあ妥当か〉

〈最大七択だから良心的〉

〈さすがにこれは割といい線いけるのでは?〉


 このゲームのお題は最初の入力前に薄文字でヒントがあるように、「〇〇する△△」のような二つの要素が推奨されている。そのうち△△、つまり実際に描くものの部分が四期生またはそれに関連するものに指定された形だ。

 このお題が出ることは予想していたから、ちょっと考えてきていた。最初だし、難しくないものでいいだろう。「犯人を突き止めたアンリ」でいこうかな。キービジュそのままでいいから他のポーズとも混同しづらいし、最悪彼のトレードマークであるベレー帽で判別がつくはずだ。


 手元のコメントウィンドウをブラインドにして、ゲームスタート。何が出るか……。


〈なるほど良心枠〉

〈誤認しづらそうでいいね〉

〈お手本が外にあるしいけるか〉


『あーなるほど』

『うん、大丈夫』

『ああ、そういうのもありなのですね』

『これならいけるか……』

「とりあえず一回目からヤバいお題出してる人はいなさそうでよかったね」


〈ははーん〉

〈時事ネタだ〉

〈これ上手いな〉

〈いいお題〉


 引いたのは「ミラーリングを踊るフーみゃ」。あれの振り付けは左右対称の二人ダンスとあってわかりやすいし、タイムリーだからさすがに電ファンライバーはみんな知っている。今回は四期生のお題だから、自然と組み合わせも確定する。

 さっそく描いていこう。軽く構図に当たりをつけてから片方を描いたら、ポーズは左右を反転させてもう一人の分も。先にみゃーこの猫耳と二尾、私の頭の花とツルをつけて判別をつけさせてから、時間の許す限り細部を入れていく。


〈うっま〉

〈上手くね?〉

〈ここまで上手いのか……〉

〈速度重視でもここまでいけるの?〉

〈この速度はsperママの娘〉

〈色置きの取捨選択までしてる〉


 色つけは最低限。髪色は入れて、薄緑肌のアルラウネである私のほうだけ黄緑を軽く入れておく。あまりごちゃごちゃして何かわからなくなってもよくないから、花や尻尾などはあえて色を置かない。

 お題に指定がない上に必要ないから背景も描かないでおく。……ちょっと時間が余ったけど、まあ超速筆ママから教わったことのある私が間に合わないようだとまずいか。


「さて次!」

『…………うん?』

『おお、上手いね……』

『まって、もうわかんない!』

『画風で誰のが来たのかなんとなくわかるね』

『え、上手くないですか?』

『おうちょっと待てや!』

「んー…………」


〈なん……え?〉

〈なんじゃこりゃ〉

〈ええ……?〉

〈これコントローラーか……?〉

〈ファミ○ンかな?〉


 聞こえてくる様子は予想通り、天国と地獄にくっきり分かれているけど……私のところは、やや地獄寄りかな。なんというか、幼稚園の壁に飾られていそうな絵だ。

 だが逆に考えよう、このゲームは上手い下手の問題ではない。大事なのは伝わるかどうかだ。そしてこの絵はというと、目につく要素は大きく二つ。


 ひとつは肌色の左右十本の不揃いなものに囲まれたゲームのコントローラーだ。スティックもなくボタン二つと十字キーだけという、45年ほど前の筐体のそれだけど、コントローラーだと伝わればそれでいい。

 もうひとつは、その上に流れる緑色の滝。……ここで思い出そう、お題は四期生だ。まあだからといってライバー当人がお題になっているとは限らないけど、ゲームコントローラーを持っているのだから人だろう。

 そして概ね緑色をした、いかにもゲームをしていそうな四期生は誰でしょう? ……そう、私です。

 というわけで「ゲームをしているフロル」で提出だ。




 というわけで次、二度目のお絵描きタイム。


『えっと???』

『あ、そういうのあるんだ』

『あ、おっけー!』

『うわ、描くのムズくね……?』

『どう描けば……』


〈これは……〉

〈運命力ですか?〉

〈三連続だ〉

〈そんなことあるんだ〉

〈どんなお題だよ〉


 えっとね。届いたのが、「黒子な雪」。え、また私? うちひとつは二人構図だったとはいえ、対象七人で七つあるお題なのに三連続で私だ。

 というか、雪……もとい人間擬態モードの私をわざわざ描かせにくることある? ……ないとは言いきれないけど。


 描いてみた。けど、そもそも黒子は個性を消して注目させないようにするための衣装だ。一応緑色の前髪ははみ出させたけど、それ以外はただの黒子になった。……まあいっか。


『は?』

『あー』

「イージーきた!」

『いやなんだこれ』

『っし、さすがにこれはわかる』

『え…………っと、あ、そういうこと……?』

『わかんない、ごめんなさーい!』


〈ギター!〉

〈単純明快!〉

〈めちゃくちゃギターだ〉

〈これに上手い人当たるの無駄遣いでは?〉

〈このゲームにもったいないの概念あるんだ〉


 これはわかりやすかった。描かれていたのはシンプル、ギターひとつだけ。そしてこの明るい黄色のフライングブイ、まさしく陽くんの愛機である。

 しかも絵が上手い。そうでなくとも間違えようはないけど。「陽のエレキギター」と書いておけばちゃんと伝わるだろう。


『?』

『おお、任せたまえ!』

『えー……?』

『む、難しいことやらせるね』

『あ、あきらめないでよっ』

「えっと……?」

『これなら、これくらいは描けないと顔ない……っ!』


 今回最後のお絵描き。お題は……「森を蠢く黒い影」……?

 いや、さすがにちょっとわからないかな。もはやライバー要素が消し飛んでしまっていて同定できない。……決め打ちするしかないか。


 推測だけど、森の中が舞台になる四期生は二択だ。私かマギにゃである。で……私が多すぎる、というメタな思考は置いておくとしても、この「黒い影」という数少ない情報を信じるしかない。

 ライバーにはある程度イメージカラーというものがある。陽くんは黄色、ゆーこさんは白、アンリさんは茶色といった調子だ。で、私は明るい緑、マギにゃは紺色。さっきそうだったように、私を描くなら緑を使うと信じて……マギにゃの紺色が黒に見えたのだと仮定する。


〈マジ?〉

〈なんで復元できるんだよ〉

〈マギにゃって確定できなくない……?〉

〈これ多窓する配信だったか〉

〈これが月雪フロルだ〉


 というわけで、私が描くべきは「森を歩くマギア」。もう蠢くとか黒い影なんて要素をわざわざ残しても迷わせるだけだから、ここは信じて描き切る。

 ちょっと悩んで時間がかかったから、絵は簡単に。箒と紺色の三角帽子さえあれば伝わるはずだ。




 そして最後。絵を見て答えを書けば終わり……なんだけど。


「…………なにこれ」


 え、えっと。これ本当に四期生がお題だった? あの名画にしか見えないんだけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
何が来たんだ…… 電プロ4期生の「叫び」でも来たのか………?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ