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【切り抜き】10分でわかる月雪フロル【電脳ファンタジア】  作者: 杜若スイセン
再生リスト4:縦の絡みも増えてきて撮れ高がとどまるところを知らない
102/142

#102【#電ファンDe年越し2029】後半戦の四期生視点は紫鍋とともに【電脳ファンタジア】

「なんで……???」

「いやおかしいだろう。加入前から疑問だったが、何故この見た目で美味い」

「そうだよね……混乱するのが当たり前だよね……」

「ああ。俺たちは慣れてはいけないものに慣れてしまったんだ」


〈目を白黒させておる〉

〈そりゃそうだよ〉

〈ハウス組は慣れてしまうのか……〉

〈宇宙マギにゃ〉


 四期生、混乱。無理もない、目の前に、そして手元にある料理はどこからどう見ても毒々しい濃紺色をしているのだから。そしてそれが普通に、いやそれ以上に美味しいのだから。

 といっても反応の程度はまちまちだ。非ハウス組のちよりんとアンリさん、そしてまだ引越し準備中のマギにゃは完全に宇宙猫状態。三人は星夜先輩の手料理を食べるのが初めてだった。

 デビュー後たびたび味見をさせられたり振る舞われたりしているハウス組のゆーこさんと陽くん、二人より短いとはいえ経験はあるみゃーこは驚きこそしていないものの苦々しげ。こんな視覚と味覚の差に脳がバグる代物を、わかっていてもまだ受け入れ切れてはいないようだ。


「ま、それはそれで味だよ」

「フロルちゃん……今初めて、フロルちゃんが四期生で一番まともじゃないって思ったよ……」

「三年も続けば慣れるから」

「慣れるのが何より怖いのだけど」

「おかしいんです……二期生までの先輩、誰一人ツッコミすら入れてません……」


〈フロルがツッコミやめたら終わりなのよ〉

〈そりゃ慣れてるだろうけど〉

〈反応が一期生と同じだ……〉

〈向こうの一期生ゾーン誰も疑いすらしてないからな〉


 で、私は特に気にしてもいない。とっくに慣れているから。星夜先輩の料理はスタッフにも振る舞われているし、私は特殊な立場もあって頻繁に毒味……もとい味見に呼ばれていた。今思えば同じ秘蔵っ子組として、彼なりに私を気にかけてくれていたのだろう。


 まあ、慣れるのだ。見た目は凄いけど味はいいから、その見た目に諦めて慣れるようにさえなってくれば気にすることすらなくなる。じきにデビューから二年になる二期生までと、三期生のうち慣れ親しむ機会の多かったハウス組二人は平然としているし。

 ルフェ先輩とマリエル先輩に至っては、普通にこの料理に加担していたからね。加入時期が三期生より四期生のほうが近い心愛先輩と、ハウス住みではないせいでまだ慣れ切っていない残りの三期生はまだ反応の余地が残っているようだけど。


「大丈夫、体にもいいから。この色はブルーベリーと同じだから、疲れ目とかにもちょっとは効くよ」

「どうしちまったんだよフロル。こんなやべーもんを率先して庇うだなんて!」

「そうだよフーちゃん! 真っ先にツッコミにいくのがフーちゃんでしょ!?」

「正気に戻ってくれフロルくん。君はそんな人物ではないだろう」

「フロルさん……どうしてこんなことに……もう手遅れなのでしょうか……?」


〈散々な言われようで草〉

〈普段こいつらがフロルのことをどう思ってるのかよくわかる〉

〈「フロルが突っ込んでくれるからいいや」で三ヶ月やってきた奴らだ、面構えが違う〉

〈いやそれにしたって有り得ない色してんのよ〉

〈カメラが離れてる間に異常に濃くなってたからな〉


 問題はないよ、それは星夜先輩特製アントシアニン液をぶち込んだだけだから。植物由来だから害のある成分は入っていないし、仮に飲み干したとしても問題ない。

 ただ使われた紫キャベツと紫玉ねぎだけでは説明のつかない色になっているだけである。これはわざと見せずにやっているから、私からバラしたりはしないけど。反応も面白いし。

 本当に怖いのは、紫以外の色になったときなんだよ。怖いよ、イカスミ不使用で真っ黒なのに美味しい謎の料理。






 さて、ここまではいくつかのグループに分かれて同時多発コラボのようになっていたけど、食後からは何をやるでもなく集まる流れになった。洗い物は暇を持て余していたスタッフが持っていった。後片付けを怠ることはない星夜先輩は手を出そうとしていたけど、ガンを飛ばしてまで引き下がらせられていた。

 普通に二十人以上いるから、全員が同時に喋ったら何も聞こえなくなりかねない。とはいえそこは全員が登録者15万人以上の配信者、ひとつの話題でまとまりさえすればなんだかんだ聞こえるようになる。そういう癖が染み付いている。


「何する?」

「もず冷やかしに行かない?」

「ほう、大人数コラボに大人数で凸ですか。たいしたものですね」

「普通なら止めるとこだけど……まあもず先輩だしいっか」

「不如帰の慌てる顔が見たいかー!」

「おー!」


〈ああ……もずさん……〉

〈あいつにボケ20人の相手は無理だろ〉

〈フロルがツッコミ放棄したら終わりなんですが!?〉

〈ハヤテまで……〉

〈ツッコミが消滅した瞬間である〉


 このあたりで本当に全員ボケになったら面白いかなって。収拾つかなくなったら諦めるから安心して。

 というわけでとりあえず向こうの配信を開いてみることになった。様子はというと……。


『誰かアイツを止めろぉぉぉ!』

『隊長、無理です! 追いつけません!』

『おかしいだろここバリバリの打開コースだぞ!?』

『そっか……私は強さと引き換えに何か大切なものを……』

『なんか悲しき怪物みたいなこと言い出してる!』


 …………ごめんママ。それどう考えても私のせいだ。


「強すぎんだろ……」

「これが親子ですか」

「sperママ……そうだよね……私より強いもんね……」

「じゃあこっち連れてきても三位じゃねーか」

「世界をとるかフロルちゃんをとるかみたいになってる」


 絵師十二人集まって、メリカでお祭りしていたところだったんだけど……ちょっとママが強すぎる。かなり集中的に狙われているのに、ポイント的に毎回確実に上位を取り続けているようだ。

 結果として望まぬ力を手に入れてしまったサイボーグみたいなことを口走るママ。……違うの。私は教えてって言われたからレクチャーしただけなの。


『っと、ここで特別ゲストとの通話が繋がりました!』

「もずママー、調子はどうー?」

『エティア!?』

「今みんなで見てるよー」

『暇を持て余した電ファンの皆さんです!』

『なんで年越し配信中に暇を持て余すんだよ』

『なんか企画とかやらずに騒げってファンに言われたらしいよ』


 ちなみにもず先輩は普通に上位をうろついていた。彼はそこそこできる方だ。ママとはもう完全に覆しようのない差がついているけど。

 向こうのコラボにはライバーのママが何人もいるからそれぞれ挨拶して、明らかに私の番が最後に回された。


「ママ……だから力は隠せって言ったのに……」

『隠したよ。だけど、隠してもこれだったんだよ……』

「そっか。ごめんね、こんなにしちゃって……」

『瀕死の相手を改造人間にして救ったけど人間社会にいられなくなったみたいな会話してる』


 ママは絵画は超一流だけど、それ以外全般も手を出したものはその道の専門家には及ばない程度に一般を外れたスペックをしている。そんな中で唯一トッププロといえる、他より得意なものがイラストだっただけだ。

 だからこうして遊びの範囲内で他のものをやったりすると、見事に傑出する。それでいて本人に微妙に自覚がないあたりは、ちょっと見ていてハラハラするんだけど。


「フロルが言うことじゃなさすぎるな」

「これだから無自覚の怪物は……」

「フーちゃんもちゃんと自覚したほうがいいよ」

「あんたもだよ都」

『人のこと言われたくなさすぎるな、この二人に……』

『言われるような腕してるんだよなあ』


 私は配信者適性はもう自覚しているから。ただそれ以外のものは常に親友に負けているだけで。

 ……まあ、たぶんママことことりもそれなんだろうね。恐ろしいことに、クラスに多くの面で自分より優れた人物がいるのは彼女にとっても同じだから。


『ところで、いよいよ本格的に配信的に面白いか不安になってきたんだけど、フロル何か思いつかない?』

「別に面白いと思うけど……何かやるなら、バトルに切り替えてみるとか?」

『お、それいいですね。やってみましょ』

『ここまでの恨み、返してやるからなsperぅ!』

『ごめんなさいってもずさん、トゲ三回譲ったのは謝りますから』


 そういうことになったらしい。ちなみにこれは罰ゲームに体を張ることに同期の誰かが躊躇いを見せたら提案するつもりだったいつぞやの腹案だ。れっきとした一モードだから、わざわざ大仰にすることもないんだけど。

 それにしても、ママも界隈に受け入れてもらえているようでよかった。他の参加者の反応は明らかに、否応なく浮いてしまっていたママをどうにか自分たちの方へ引きずり込もうと頑張ってくれている優しい先輩たちのものだ。恨みとか言ってるけど。しかも自業自得だけど。

 活動そのものは以前からしていたけど、私がデビューするまではひたすら絵を描きまくるだけの謎めいた人だったから。そこの変化に私の影響があることは明らかな以上、彼女の活動が色づくのは嬉しいものなのだ。

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― 新着の感想 ―
まぁ炭パウダーとかもあるし、 鉄鍋でアクの強い食材調理したりしても黒くなるし……?(目を逸らす) やっぱりあっちから入ると「なんだかんだこいつらルヴィアとちゃんと友達付き合いできるだけのスペックして…
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