空が、澄んでいた。
その日見た空は、夢か、幻か。
おおよそ、一生に一度の体験。
それほどまでに……。
空が、澄んでいた。
日をまたいで降り続ける雨。
屋根越しに聞こえてくる雨音。
時おり弱く、時おり強く。
日をまたいで降り続けた雨。
ふと、目を覚まし、外へ出る。
秋の夜明け前、まだ真っ暗な時間。
視界に広がるのは、満天の星空。
キラキラと、煌めいていた。
秋の夜明け前、いつの間にか晴れた空。
南の空に浮かぶ、冬の大三角。
オリオン座のベテルギウス。
おおいぬ座のシリウス。
こいぬ座のプロキオン。
そして、うさぎ座。
冬の夜空でも、見つけにくい暗い星座。
場所なら、分かるさ。
オリオン座の下の方だから。
けれど、きっと初めて。
これほどまでに、はっきりと。
その星々を見たのは。
秋の夜明け前の空。
その日見た満天の星空は、
街灯の強い明かりにも負けず、
キラキラと、煌めいていた。
強く強く、輝いていた。
それは、きっと。
空が、澄んでいたから。
秋の夜明け前の空。
その日見た満天の星空は、
夢か、幻か。
まるで、現実のものとは思えないほどに、
空が、澄んでいた。