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作者: 狐燈酔雨


中三、高校受験生、塾の帰り。



俺は"見える"側に生まれたわけじゃない。






つまりは、そういうこと。



___



塾行ってたらふと思いついたので企画に便乗。





制作時間:三十分(しかも初投稿)





狐燈酔雨ともしすいう




中三の夏は講習ずくめだった。





思い出などない。




見知らぬ受講生と、永遠にスベり続ける塾講師。




彼らと紡ぐ記憶など、思い出にはなり得ないのだ。



というかあってたまるか。





しかし思い出がないというのも、当たり前だろう。




全ては半年後の日、詰まるところ未来のためである。




もっとも、俺は「進学校に行きたい」などと自ら言ったことはないのだが。




両親は、地元の公立高校に行った娘___つまり俺の姉___をいじめによる自殺で亡くしているのである。



当時七歳だった、よく姉に懐いていたという俺は、最初こそ泣いていた記憶があるが、今では顔を思い出すことも難しいほどである。 




しかし両親の気持ちがわからないわけでもない。





いじめの少ない(と言われる)私立に残った息子をやりたくもなるだろう。




仕方ないとは思いつつ、それにしたって八時間はやり過ぎやろ、と心の中でツッコむ俺。




塾は朝八時に始まり、昼休憩を挟んで五時に終わる。




朝は早いわずっと座ってるわで、割とストレスが溜まっていた。




そこに来て、の小学生ボイスである_______




というのも。






昼休憩というのは一時間。




中学生は友達と喋る奴がちらほらいるくらいだが、




中学受験を控えたとはいえ、小学生にとってみれば空いている時間は全て学校の業間休みと同じである。





大して広くもない教室内をグラウンドに見立て、鬼ごっこやけいどろをえんえんと一時間続ける・・・




という理解し難いことを容易にやってのけるのが小学生という生き物だ。





しかも彼らの喉から発せられる音というのは、子供特有の、声変わり前のとんでもない高音。









つまるところ、そう。










うるさいのだ。







これはノイズ以外の何ものでもない。





というわけで、音楽を聴くわけでもないのに、



某有名林檎社(米国出身)が販売中のイヤホンを耳に突っ込んで、



特有の圧力でノイズをかき消した。






完全に消えるわけではないものの、遠くで叫ばれているようなものだ。





耳障りにはならない。






安心したところで、マンガアプリを開いてぼーっと読み始める。






受験生とて人間だ。休憩くらいいいだろう。






_______________






ふと違和感に気づいたのは、マンガが二章目に差し掛かったあたり。





耳の圧力のなかで、椅子を叩いてくるような何かを感じた。





振り向いても、先生も同級生も_____誰もいない。





(は?)





振り向いているのに、椅子を確かに叩かれている。






思わずイヤホンを外すと、音がしなくなる。





(床からくる衝撃?)





同階で走り回られたら床が揺れる。振動が椅子に伝わる。



(絶対違う・・・・・)




どう考えても人の走るテンポではない。



単調だから大人数の足音でもない。






息を吸い、ゆっくり時間をかけて吐いた。





(・・・・知らぬが花・・・・)





これ以上考えて正解が出たとしても、間違いなく絶対に良いことじゃない。






 小学生に罪があると結論づけることにし、音楽をかけてからノイズキャンセリングを押す。






これ以上の追究はよくないとマンガを読み始めたが、話が全く入らないまま、気づけば二十ページが過ぎていた。






___________________







帰宅ラッシュの電車に途中乗車。





座れるわけもなく、吊り革に捕まって目の前の窓を見る。






夏だから外はまだ明るい。




夕焼けもまだ見えないので、真昼間なんじゃないかと錯覚を起こしそうになる。






やることがなくてスマホを開いた。





いつもなら音楽を聴いているけれど、イヤホンはやっぱり怖い。




突然音楽が止まって・・・とか考えただけで怖い。





昼から読んでいるマンガは、幽霊退治の話だった。





そこでふと思い至る。






(陰陽師ってこれ、確か年収地味にえぐかったような)







話数をもどして見てみると、年収二千万。





少年誌あるあるだが、高い割に年収には目が行きづらい。




登場人物が真っ直ぐすぎるからだろう。





(・・・幽霊見えたら年収二千万、だからコワクナイ、大丈夫だ俺、年収上がるだけだから)






何だか安心してきた。人間はどこまでも欲深い。







狭いパーソナルスペースのなかでポケットに手を突っ込み、イヤホンを取る。





耳に入れ、音がしたらノイズキャンセリングを押す。





音楽が流れ始めた。





立ちながらとはいえ、乗り物のなかでマンガを読んでいると流石にきそうだ。




酔い止め飲んどきゃよかったな、と思いながらあたりを見ると、


長いトンネルに入ったようで、窓はすべて暗闇に化していた。




自分たちの姿が反射する。






「・・・・・あ」





ふと声が出たが、車内が軋みでうるさかったからか、誰も反応しない。






誰もが自分で精一杯だ。






マンガ。あの幽霊退治の陰陽師のマンガ。





「ひぃっ」






"見える"人間に二つの可能性をつけていた。







「な、なんでっ、トンネルがッ」






一つ目は、生まれ持った者。






「いゃあああああああっ」

 





二つ目は、死期が近い者。





「嫌だ、死にたくない_____ぅ」





俺は生まれてから、幽霊なんて見たことがなかった。






見える人間でなければ、幽霊の影響を受けることはない。






「がちゃん」






さっき、この電車の中で、イヤホンをつけた時。





「どぉん」





どうして音楽が流れたのだろう。





「ぱりぃん」





俺はスマホを、






「がくっ」






あの時触っていただろうか。






「ききぃー」






そして、窓に映ってる、俺の後ろにいる______腰から下がない女の人を、



どうして俺が、見ることができるんだろう。






どこかで見たことある制服だなぁ。




顔、かーちゃんに似てるなぁ。




なんで嬉しそうなんだろう。





最後に思ったことは、そんな具合のものだった。






他の人は、きっともっとひどい最後。





助けてくれって叫びながら、網目蟻みたいに死んでいった。






何百という命は、




「俺がたまたま乗っていた」




その事実だけのせいで、




電車もろとも潰された。


いかがだったのでしたでしょうか(敬語使えない民)




初投稿なのでどうか、なろう小説読者様の優しさに触れたいなぁと思っています。


《訳:いいねと感想と・・・よくわかんないけど他も押して欲しいなーーー!!!》



それじゃあお元気で。またねー!




狐燈酔雨こともしすいう

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