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天使がぬいぐるみに・・・!?

「はぁはぁ、腹減った・・・。」

1人の少年が砂漠の真ん中で腹の音を鳴らしながら歩いている。辺りは砂・砂・砂・サボテン。


この少年の名前は芳谷 霞阿流である。この世界に来てからはある人物?と相談して『カオル』と名乗る事にした。理由は『ダサい』からだ。この世界では日本語や英語と言った様々な言語があり、日本語での住民登録が可能だ。

また、信用できる人物だけには『実名』を教える事によって、暗号の様な役割を発揮する事もできる。


「テメェが()()()()()()間違いなく食ってるよ。」

カオルは自分の右手に持つ茶色のフワフワに対して話しかける。

そのフワフワは茶色のクマのぬいぐるみに真っ赤なリボンをつけている40cm程度のクマのぬいぐるみだ。

よく見ると手足をバタバタさせている。


『許してくれよぉ〜。というより、俺は()()()ちゃんに嫌われた事にショックを受けているよ。』

クマのぬいぐるみの目からは涙がポツポツと流れている。クマのぬいぐるみがまるで生きているかの様に・・。


「それは自業自得じゃねぇか。というより、よくも砂漠の真ん中に転移してくれたな!3時間歩いても景色変わらないじゃないか()使()()よぉ!?」

カオルは思いっきりクマのぬいぐるみの頭を握り潰す。カオルの握力は200kgを超えている為、ぬいぐるみの頭が原型をとどめていない。


『ごめんなちゃい・・俺は天使じゃないんです。ただのぬいぐるみの『ベアル』でちゅ。』


このぬいぐるみの正体は何を隠そうカオルを転移させた張本人の天使ベアルである。


何故、彼がこの様な姿になったのか?


===============================================


数時間前、カオルは辺り一面の砂漠の上で座り込んでいた。ジャングルや街中に転移したであればよかったものの『砂漠』というどうしようもない場所に転移したからである。


「あの、くそ天使が・・。普通はジャングルの中とかだろ?砂しかない場所で何をすればいいんだ・・。」

どちらの方向へ行けば良いのか何も分からない為、少しでも体力を温存する必要がある。


砂漠の温度が暑い理由は水が降らない事に加え、特殊な砂が原因である。特殊な砂は太陽光により熱せられると、砂だけではなく周囲の温度も急激に上昇してしまう。その為、夜の気温は低いのである。

「とりあえず、このままだと日光で体力を奪われちまう・・。」


水も食料もない状態である。何もしないで動かないと、日光により体力が奪われていってしまう。動けるうちに動かないと行けない。

「せめて動物・・いや、最悪『虫』でもいれば・・。」

虫には牛肉の何倍もの栄養素があると言われ、特に環境が厳しい地域で育つ虫の栄養は非常に高い。


すると、カオルは目の前に茶色のフワフワの物体が動いている。

(何だ?この世界の生物か?)


『おぉ〜ぉん!!メニーちゃん、何で俺もこの世界に転生させたんだよ?せめて、あの美貌の姿にしてくれよ?この姿だと女も抱毛ねぇよ。』

それは日本で売ってそうなクマのぬいぐるみだった。

普通は「クマのぬいぐるみ」だと思う筈だが、『メニーちゃん』という単語を言う奴は1人しかいなかった。


「お、お前・・ベアルか?」


ベアルは首がないので、振り向いてこちらを見る。

『あぁん!?そうだよ!!メニーちゃん兼『女神』様に【嘘を1万回ついた事】,【転移の間を好き勝手使った事】,【メニーちゃんのパンツを盗んだ事】など100個の罪として現世に転生したんだよ。お前が死ぬまでこの姿のままだとよ!』

完璧、自業自得である。

メニーちゃんはベアルの上司にあたる最高神の1人『恋愛(Love)の神』だ。そんな最高神にあんな態度をとっていたベアルも流石だとある意味感心するカオルであった。


「そうか!!でも、俺はメニーちゃんに感謝しないといけないな・・。」


『何故だ?俺はお前が死ぬまで天使に戻る事はできねぇんだぞ?何でお前といないといけねぇんだ?』


「いや・・・嬉しいねぇ!テメェの顔面に拳を埋める事ができるからな!」

カオルの拳がベアルのフワフワの顔面を殴り、水切りの石の様にバウンドしながら遥か彼方へ飛ばされた。


「はぁはぁ・・。無駄な体力を使っちまった。本当は嫌だがベアル(変態)でもこの世界の事は分かるだろう・・・。」

意識がないベアルの頭を鷲掴みにして、飛んで行った方向へと歩いていく。まさか、数時間後に運命の出会いをするとは思っていなかった。


======================================


砂漠をひたすら歩いて5時間程度経過した。転移した時よりも気温は高く、カオルとベアルの体力を奪っていく。ぬいぐるみの体でも睡眠や食事も必要になるらしい。もちろん、体調不良も起こすようだ。

「はぁ〜、そういえば聞いてなかったが、お前天使の力使えるのか?」


『使えないよ・・。鑑定も使えなから自分の能力の詳細が分からないし、もし使えたら転移で天界に帰るわ。』


「へぇ〜・・。じゃあ水魔法は?」


『あぁ〜、カオルの世界にはないから分からねぇのか。』


「まぁな。どこかの誰かさんが説明もしないで()()()()()()に置き去りにしてくれたおかげでな!」

カオルは拳を『はぁ〜』と温めて、殴るポーズをとる。


『ぼ、暴力はよくない!わかった説明する・・・。』

ベアルは神界で説明する筈だった『魔法』について説明する。まず、無属性魔法以外の6つの属性魔法だ。この6つの属性魔法には大きく4つの『魔法』が存在する。


1つ目は自身の魔力を『消費』して行う魔法だ。ほとんどの魔法はこの方法を使用されている。 発動までのスピードや無言でも発動可能でも発動可能だ。ただ、自身の魔力が『原材料』となっている為、水魔法を使ったとしても飲む事はできない。放置すれば消えてしまう。

つまり、砂漠で水魔法を発動しても、偽物の水の為、飲む事はできない。


2つ目は存在するものに『詠唱』して行う魔法だ。水魔法であれば、空気中にある水分を魔力で操る事で魔法を発動できる。原材料は『水魔法であれば水分』、エネルギーは『魔力』のため、魔法の『方式』さえ知っていれば、誰でも扱える。この魔法であれば、水を作成可能だが、砂漠で『水分』という原材料を確保する事はできない。少なくとも空気や地面に水分がないと発動できないのだ。


3つ目は『魔法陣』を描いて行う魔法。この魔法陣の原材料は『魔力』の場合もあれば『水分』である事がある。ただ、自身の魔力ではなく、空気中の魔力を使用して発動するため、魔法陣さえあれば可能だ。ただ、魔法陣を書く為に時間を要する為、貴族の人はこれを身体に描いている人が多い。


4つ目は『精霊』などと契約して行う魔法。威力や発動スピードは他の魔法よりもあり、周囲の魔力を使用する為、最強クラスの魔法使いになると言ってもいい。それに加え、身体能力なども向上する。ただ、他の6属性の魔法や上記の魔法の方法ができなくなる為、リスクも大きい。


『それ以外でも存在するらしいが、これらが6属性の魔法の方法。ついでに無属性はその名の通り『無限』にありそうだから説明を省くよ。まぁ、基本的に身体強化がメインだね。』

無属性魔法は『身体能力』が基本となる為、身体を鍛えなきゃ使えない。


「話の内容をまとめると4つの魔法の使い方があると言う事か・・。」


『まぁ、カオルは魔法が使えず、俺も魔法を使えたとしても4つとも発動ができない・・・。終わったなぁ・・せめて、ダンジョンでもあれば・・。』


「ダンジョン?」


『あぁ・・。ダンジョンは『生物』には住みやすい環境や食べ物を与え、外から来た人などには『武器』などを与える。その代わり、ダンジョン内で命を落とせば、ダンジョンの養分となる。』

ダンジョンは植物や動物と違う『一つの生物』として生きているのだ。これが地球での認識との違いだろう。


「なるほどな・・・。ダンジョンと生物と冒険者・・・この関係性がダンジョンの維持を確保しているということか・・・。」


『そうだ。つまり、こんな田舎にダンジョンが出現しても『生物』と『人』がいないおかげでダンジョンが死んでしまうんだよ。例えば、あそこに大きな岩があるよね?あれは生まれる前のダンジョンのデキかけかな。』

ベアルがフワフワの指(腕)指す方向には大型バスを5台並べた様な大きさの岩があった。

現実世界では『砂漠』に大きな岩が一つという光景は珍しい為、神秘的な光景だと感じた。


岩をずっと見ていると、岩の一部が動いている様に見えた。

(ん?この暑さで目がおかしくなったのか・・。いや、『特異体質』の影響で状態異常は無効化される筈だ。)

カオルは『極回復』の能力と『超再生能力』の特異体質により、血液がエリクサーになってしまった。そのエリクサーの効果の一つが『状態異常回復』だ。


すると、岩の方から『モォ〜ォ』という牛の泣き声が聞こえる。

「牛か!?おい、ベアル!あれはダンジョンとして機能してないんだよな?」


『うん。まぁ、デキかけのダンジョンの多くは大きな岩に大穴があいている事が多いから、そこにゴブリンとかが集落を作る事が多いからね。でも、こんな地域でゴブリンなんて存在しないよ。』


「俺の見間違いじゃなければ、あそこに『牛』の様な生物がいた。確か牛って水を1日で70L、草を50kg近く食べてるって酪農をやってるおっちゃんから聞いた事がある。」

牛の種類が全く違う為、正確な数値は分からない。だが、『牛がいる』という事は十分な食料と水を確保する事ができるという事だ。


『本当?もしかしたら、人が住んでる可能性があるね。』


「そうだな・・。敵じゃなければいいけど・・。」

カオルとベアルは牛がいたと思われるダンジョンへと体の方向を変える。


まさか、この行動がカオル達の運命を大きく変えるとは思っていなかった。



=================================


『モォ〜〜〜』

ダンジョンの跡地に近づくと牛の鳴き声が聞こえてきた。

間違いなく何かいる。

カオルとイベルは足音を消しながら移動し、牛がいると思われるダンジョン跡地を静かに覗く。


「何だあれは?牛というより『羊』に近いな・・」

シルエットは羊で牛の様な角を所持している。そして美しすぎる真っ白な毛を持っており、大きさは30mは超えていた。


「何って大きさ何だ!?生まれて初めてデカい生物に出会ったわ。おい、ベアル!?こいつは何て名前の生物何だ?」


『・・・!??』

カオルの呼びかけに反応がない。

隣を振り向くと、ベアルの体がガタガタと震えていた。


「ベアル!!」

カオルがベアルの体を軽く揺すると、ようやく正気に戻った。


「そんなにヤバイ生物なのか?」


『いや・・。この生き物は非常に珍しい『ゴッドシープ』という羊だ。こいつ自体はやばくはない。問題は『この大陸が分かった事だ。』


「大陸?」


『地球には6個の大陸があったが、この世界では129個の大陸があるんだ。そのうち約半分は人間が住む事が困難な場所があるんだ。その中でも特に危険な場所の1つがこの場所なんだ。』


「つまり、人がいないという事か。」


『それもあるけど、違うんだ。ここは()()()()()()()()がいる場所なんだよ!』


「神でも勝てない生物」


震えるベアルと何も分かっていないカオル。

ゴットシープが『メェ〜』という声を出して、ダンジョンの中へと入っていく。まるで、何かの邪魔にならない様に・・。


『「?」』

2人は空気が変わった事に気付く。まるで、戦い前の静けさを感じる。


だんだんと空気が重くなっていく中、カオルが苦笑いしながら、口を開く。

「そいつの名前って何だ?」


『そ、その生物の・・・名前は・・・。』

ベアルの震えが止まった。ベアルが上を見ると、そこに()()()はいた。


『神殺しの幻獣・・『バハムート』』



真っ黒の巨体のドラゴン。



この出会いがカオルの人生を大きく左右する。













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