吸血鬼!異世界へGO!!
動物のぬいぐるみとリアル人形の部屋で2人の男が何かを言い合っている。先程まで話していた異世界転移の事だろうか?
自らを天使と名乗ったベアルがリアル人形メニーちゃんの真横にいる。そして霞阿流と何かを言い合っている。
『だからよ!メニーちゃんの方がエロくて可愛いしさ!デビルちゃんっていう二次元の中でしか存在できない事を色々出来るんだよ!?明らかにメニーちゃんの方が魅力的だろ?』
「いや、100%デビルちゃんの方が価値あるね!そんなエロい事しか考えていない脳に叩き込んでやるよ。二次元は無限大だという事を?」
『は?言葉のキャッチボールしろよ?メニーちゃんは二次元ではなく三次元に存在するんだぜ?このメニーちゃんが居なくなってもエロい事が出来るかも知れないんだぜ?』
「先程まで『ラブドール?』『エロって何ですか?』って言ってた奴とは思えねぇ発言だな?」
『『エロって何ですか?』って言ってないです!勝手に話を捏造しないで頂けませんか?』
異世界転移の話について語る筈が、ベアルが霞阿流の着ている服を馬鹿にした事で喧嘩に発展した。霞阿流の服のデザインとなっている『デビルちゃん』は日本では人気が高いアニメキャラだ。自分の推しを馬鹿にされ、『何が世界を救うだ?そんな可愛い子に世界は救えるか?戦うんだったらベッドの上で戦えよ!?」っと言われて、ガチギレモードである。
「そうですか?では、その人形はラブドールではないって事だよな?」
『ラブドールじゃないです。確かに人間界に行って、ラブドールを作っている会社にお願いしましたけど、ラブドールじゃないです。シリコンで作られた交尾ができるお人形です!!』
「知ってるじゃねぇか!!というか『異世界転移』の話はどうなった?」
『そうじゃん!というか何でこんな事話してるんだ?』
「テメェがみんなのデビルちゃんを馬鹿にしたからだ!!」
更に話はヒートアップしていくのであった。
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・・・そんな会話を10分程度した後、ようやく話が進む。
ベアルが指を『パチッ!』とメイド服を着た女性が目の前に出現した。ベアルに対して椅子や机、お菓子やジュースなどが用意されていた。
「最初っから机とか置いとけばいいじゃん。」
霞阿流は呆れたような顔で言う。そもそも、態度が神の使いではなく、ただのクズである。
『机と椅子を置くと部屋の雰囲気が悪くなるからね。』
ベアルがポテトチップスの袋を開けると、こちらをチラチラ見ながら食べ始める。
(あいつ・・俺が朝飯抜きを知りながらっ・・。まじであいつ神になるのか?地上お疲れ様じゃん?)
ベアルがポテトチップスとジュースを交互に食べながら、口元についたジュースをハンカチで拭き取る。
『あ〜おいし〜〜いぃ!!』
(マジで天使を地獄に送る方法とかないかな?あったら嬉しいな!)
食べている態度もそうだが、とにかく性格も全てがイライラする。
お菓子を食べ終わると、808番と書かれたタブレットをメイドから受け取る。
『あぁ。異世界転移の話ね。霞阿流くんには『808番』っていう世界に転移してもらう予定だよ。』
「808番?」
『そう『808番』。地球が存在する世界は209番目の世界かな?君のような特異体質がウジャウジャいる世界だよ。『魔法』と『能力』と呼ばれる力が存在する世界だから『第二の神界』と呼ばれているかな?』
魔法と呼ばれる物は『ラノベ』で知っている。ただ、『能力』という存在には聞き覚えがなかった。
「能力っていうのがイマイチ分からないな・・。」
ベアルは何処から出したのか、二枚の紙を霞阿流に見せる。そこには『魔力の種類』と書かれた円グラフと『能力のランク』と書かれたピラミッド型のグラフが記載されていた。
『順を追って説明するね。まず、『魔力の種類』からだ。』
そこには円の図形が7つの色で区切られていて『赤』・『青』・『緑』・『茶色』・『紫』・『黄色』・『白』の上に漢字で属性の種類が書かれている。
『808番では『火』・『水』・『草』・『土』・『闇』・『光』・『無』の七つの魔法が存在する。自分の身体に魔力が備わっていれば、好きな魔法を扱う事ができる。』
誰でも魔法を使う事が可能という事。つまり、生まれ持った力ではない為、貴族でも平民でも日常的に使うことができるという事だ。
『『能力』は、『魔法』とは違う特殊な体質だと思ってくれていいよ。例えば能力が『ドラゴン』であれば、筋力量と魔法への耐性が通常の何十倍の強さになる。遺伝子によって変わるから『貴族』に強い人種が生まれやすい傾向だね。』
『実力主義』と『身分制度』が混合した世界という事になる。貴族は強い能力を持った人同士を結婚させる事により強い『能力』を生まれやすくさせようとしている。平民から強い子が生まれるのはごく稀だ。
「なるほど?じゃあ、そのグラフは?」
ピラミッド型のグラフ・・・下から『G』→『F』→『E』→『D』→『C』→『B』→『A』と書かれていた。
『ごめん。これは能力の強さを表した書類だけど、200年前の書類だから情報が古いんだよね。』
「200年前?お前、何歳?」
『1089歳』
予想外の年齢で霞阿流は目を丸くする。ずっとクソガキだと話していた為、かなり驚愕した。
「お、おう・・。じゃあ、説明できないという事ですか?」
『いや、説明はできる。能力によってランクが存在するんだけど、高いほど『能力』も強いんだ。だけど、ランクが高くなるほど人も少なくなる。 『G』が総人口の45%で『A』が2%未満かな?』
つまり、半分近くの人間が『Gランク』という事になるだろう。
「ちなみにGランクとAランクはどれくらい違うんだ?」
『Gランクだと『視力2.0』のような『無属性』の魔法でも対応できる能力が多いかな?Aランクはさっき話していた『ドラゴン』だよ。』
確かに『視力2.0』とかだと、地球でも普通にいると思う。Aランクのようなドラゴンの能力では、無属性魔法であっても真似はできない。
「でも、情報が古いんだろ?どんな風に変わったんだ?」
『単純な話だよ・・。Aランクの更に上の存在・・『S』・『SS』・『SSS』が存在するようになったんだ。俺もどんな能力かは把握してないけど、『神』や『英雄』、『歴史上の人物』等をモデルとした能力だという事は聞いたな。』
「何だそれ?神みたいの力を使えるって事か?」
日本だとアマテラスのような神様が有名だ。能力が『神』だと間違いなく『個』として軍隊よりも遥かに強い存在となる。
『そうとは聞いたね。ただ、『能力』も魔法や身体能力と同じで努力しないと伸ばす事ができないから、神と同等の力を持つ人は存在しないかも知れないね。」
ベアルは紙をメイドに渡し、『よっこらせ。』とゆっくり立ち上がる。
メニーちゃん【等身大人形】の隣にある3m程度のクマのぬいぐるみのお腹に触れると、ぬいぐるみが人のように立ち上がり、トコトコと歩き、霞阿流の目の前で止まる。
クマのぬいぐるみはその場で寝転がると、口を開いて空気を吐き出している。
『ゼェゼェゼェゼェ・・・。』
どうやら、しばらく動いていなかった為、調子が悪いようだ。それだけ転移者も少ないという事だろう。
「えぇ〜と、どう言った状況?」
『このクマのぬいぐるみの名前は『能力グマ』。文字通り『能力』を付与する装置だ。魔力と能力を付与しないと異世界へは行けないからな。』
霞阿流は名前のセンスがない事や何故クマのぬいぐるみがモデルなのか、何故機械が息切れを起こすのか疑問に残ることが多かったが、話が終わらない可能性大の為、何も言い返さなった。
「そうか。じゃあ、その『能力』っていうのはランダムなのか?」
(ラノベ小説では与えられる加護がランダムという事が多いからな。)
『いや、このクマは与える対象の記憶を元に『能力』を授けるから、運ではないよ。ただ、200年以上前に製造されたから『A』以下のランクしか与えられないけどね。』
「なるほどな。OK。じゃあ、俺に『能力』を授けてくれ。」
霞阿流がそういうと能力グマの目が赤く光る。まるで、霞阿流の心の中を読んでるみたいだ。
そして、数分が経過すると、口の中からピンポン球程の大きさの球が排出される。
『おぉ?『B』ランクか・・。君の人生なら『A』はいくと思ったけど・・。』
その球は青く輝いており、ゆっくりと霞阿流の中に吸い込まれていく。
霞阿流は身体の温度が急に高くなるような感覚を覚える。
(まるで、身体の内側から温められているみたいだ。)
しばらくすると、身体の温度が下がり、お腹の傷の痛みが消えた。
「何だ?さっき撃たれた傷が治った。」
『おめでとう。これで能力の付与は終わりだね。君の能力は『極回復』っていう回復系か・・。』
能力の付与が完了したかと思うと、能力グマは2個目のピンポン球を排出した。本来、1つの筈だが、2個目の球は拳銃のような速さで黒い球が霞阿流の身体に吸収される。
霞阿流とベアルは何が起きたか分からなかった。
黒い球が身体に入って数秒経つと、霞阿流は激しい痛みに襲われ、床に右膝をつく。先程の穏やかな感覚ではなく、全身を焼かれているような感覚だった。
『2個目だって?普通は1個の筈・・・。』
ベアルの目が黄色く光を発する。
ベアルの目には相手の状態が分かる機能が備わっており、ラノベ風に言うなら『鑑定眼』と呼ばれるモノだ。
『何だコレは?』
ベアルは霞阿流が2つ能力を持った事によって内側から暴走しているのではないかと思った。だが、鑑定すると『能力』は1つだけだった。だが、Bランクではなく、『L』という単語に目を丸くする。
『【L】ランク・・・武者:効果は『魔法が使えなくなる。代わりに魔法や物理攻撃のダメージを半減させる。』・・・身体強化魔法で何とかできる能力だな。では、最初の能力は何処に・・・。』
ベアルが頭を悩ましていると、霞阿流の身体が黄金に輝いている事に気が付く。まるで黄金の炎に包まれている様に部屋中が黄金色に染まっていく。
『何だ?・・まさか、伝説のスーパーサ○イヤ人だというのか?』
「・・違うだろ。俺に尻尾はねぇよ。それより、身体中が痛い・・。」
まるで、自分の身体が無くなっていく感覚だ。手や内臓といった全ての部分に激痛が走り、意識をと持つことがギリギリのレベルだ。今までの人生で一番だと断言できる激痛に耐えながら、少しずつ口を開いていく。
「こ、これはスキルを授かる時に起こる現象か?」
すると霞阿流の身体から大量の湯気が放出され、その周囲の温度が高くなる。
『いや、こんなの今まで無かった。あったとしても一瞬だったよ。』
「じゃあ、何が・・。」
霞阿流の体温は徐々に上昇していき、ついに口から血を吐き出す。体温は恐らく80°を超えており、細胞が破壊される温度を超えていた。
そして、ベアルの予期してない事が起きた。吐き出された血が床に付着した瞬間、空間が虹色に輝き始めたのだ。
『は!?一体何が?』
ベアルが霞阿流ではなく、口元に付着した血を鑑定すると、驚くべき事実が発覚する。
何と、最初に授かった能力『極回復』が特異体質の血と混じり合って、血液がエリクサーに変化してしまったのだ。
エリクサーとは『体力や魔力を全回復』と『体力や魔力の上昇』、『状態異常(怪我や病気等)の回復』の3つの効果がある。特に『体力と魔力の上昇』はドーピングの様な副作用がある薬でないと不可能。それが副作用なしで効果が発揮されるエリクサーは『幻の薬』といっても過言ではない。
この空間は『魔力』で動いている為、『魔力全回復』によって虹色に変化したのだ。
『馬鹿な・・。エリクサー?エリクサーだと!?だが、条件付きのエリクサーと言った所か・・。』
血がエリクサーに変化したとしても本物とは効果が少し違う。
まず、血液である為、他人への提供は難しい。直接飲むか特殊な方法での保存が条件だ。
次に自分自身には一部しか効果が適応されない。適応される能力は『魔力の全回復』と『状態異常回復』のみ。武者の効果に『魔法が使えない』がある為、実質、『状態異常回復』のみだ。また、自分での回復の場合は『体力』を消費して行う必要がある為、『制限』が存在する。
『魔法が使えず、能力が実質『ダメージ半減』と『状態異常回復』だけと言う事か・・。まぁ、ドンマイだな。』
霞阿流は先程よりも痛みが少なくなってきた事もあり、口角が少し上に上がる。
「まぁ、能力を貰っただけでもいい方だ。それより、身体が痛くて動けん。どうやって異世界へ転移するんだ?」
湯気が出ている身体をゆっくりと動かして、リュックを片手に持つ。異世界で必要になるモノは最低限入っているだろう。
『ん?そりゃ簡単さ。俺が『異能のモノよ。我がベアルの名の元に『808』への転移を認める。』と言えば、異世界へ転移するよ。』
その瞬間、霞阿流の足元に真っ赤な魔法陣が出現した。
(おいおい、身体中が悲鳴をあげてるんだぞ?まさか、もう転移するんじゃないだろうな?)
『あ、ごめん。転移始まった。頑張ってね。』
ベアルがニコニコ手を振る姿を見て、一発殴りてぇと思ったが、赤い魔法陣と共に神の世界から姿を消す。
そして、この空間には誰もいなくなった。
明日、投稿します。
4000文字程度で終わらせたらいいかなw