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狂える継母に鮮血を  作者: 黒崎吏虎
第1章 闇に踏み入れる
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第4話 囮作戦開始

前書き連載①ケツァールの真相究明

第2話「8年前の事件」


 パンドラがオーヴァスト家へ向かった後、俺は8年前のとある事件が記された資料を見ることにした。


オーヴァスト家に嫁いだメシュラが殺害された事件だ。


犯人はその場から逃走、発見された時にはもう、息絶え絶えだった。


私もあまりこの件については詳しくは知らないが、何故かあまり語られないのだ、オーヴァスト家当主・ラギエスも知らないの一点張りで語ろうともしない。


未解決事件………ということらしいが調査すらされないのは何かしら訳があるはずだ。


俺は証拠の欄を捲って調べ上げてみることにした、先ずは。




 背中を刃物で数十箇所、鈍器で頭蓋骨と頸骨が砕かれていた………という事の模様で、なかなかに目を覆いたくなるような凄惨な現場だったようだ。


ただ、社交の場で注目の的だったメシュラを殺すような動機があるのだとしたら______最近嫌な噂を耳にするようになった。


俺個人としては即位という立場を継ぐわけではないので、本当の意味で噂程度でしかないから、政治に関わると云うのは殆どない。


しかしながらよく耳にしてしまうのだ、嫌でもだ。


大義名分は「女性の権利を守り押し上げる」をコンセプトに活動している団体、その名も「夜明けの(ノックスビーウメン)」。


大義名分は綺麗事で聞こえはいいが、王宮………というよりかは郊外の方では悪い噂しか耳にしないからだ、件の団体が。


中でも私が謎に思っているのが………「自らの意に反する女性を物理的、精神的に攻撃を仕掛ける」とのことで、娼館も何軒か焼き討ちにされるくらいには狙われたようだ。


まさかこの事件、その団体が一枚噛んでいるのか? ミシュエルの義母であるティアモがこの事件後のすぐにオーヴァスト家に嫁いだのも何処か引っ掛かる。


ミシュエルの件で禊をするためにも、私は違和感を覚えた「夜明けの女」を調べる事にした。


全てを洗いざらいにし、その悪評を決定付けるために。

「わ………私が囮………??」


ミシュエルは状況を全く飲み込めないのか、呆然とした顔を浮かべた。


バーチスにそう告げられたのは事実だが、ゴブリンはかなりの荒くれ者集団で、綺麗な女性は片っ端から捕らえては犯しに集団で掛かるのだから、野蛮な種族といってもよい。


それをまだ入ったばかりの、暗殺術も何も持ち合わせていない素人(ミシュエル)にその役を担う、担わせるとバーチスは言うのだ。


荷が重すぎる上、あっさりと死ぬ可能性の方が圧倒的に高かった。


「そうだ。野盗団は集団で動くからな、手当たり次第に襲っては金目の物や女を奪いに行く。だがルートは大体分かっている。」


バーチスはそう言ってマップをバサっと広げた。


ゴブリンの進行ルートを記したものである。


「ここから北東にある森をスーーー………と進むとな、王宮街の外、王宮からは少し離れちゃあいるが香水の製造業で栄えた町がこの先にある。森の出口あたりでアナトを待機させるから、ミシュエル、お前はヤツらに見つかったら、ただ逃げていればいい。アナトの下へ誘き寄せるために、な。」


「な、なるほど………」


だが現実問題は甘くはない。


ゴブリンは身体能力が人間よりやや高い水準なのだ、記憶を無くしているとはいえ、元々箱入りだったミシュエルの身体能力には期待できないのは事実として残っている。


しかしミシュエルは任を全うする事を、崖っぷちに立たされたような目でバーチスの方を見た。


「分かりました………私、やってみます!!」


「フン………いい目じゃねえか………アナト、お前………ミシュエルだけは絶対に殺させるなよ、いいか? もしテメエだけ帰ってきたら()()()()()………分かってるよな?」


バーチスはアナトに悪魔と対峙させているかのような圧を出してきた。


「う、うるせー! 分かってるっての!! キッチリやってくらあ!!」


そう言ってアナトはミシュエルと共に現場へと向かっていったのであった。




「なあ、ボス………大丈夫か? アナトは仕事はできるけどよ、案外ポカやらかすからな。俺はミシュエルちゃんを守れると思っちゃいねえ。」


ラスクは尤もな現実的意見を2人が任に向かった後にバーチスに話す。


「アナトはそんなヤワな男じゃないしなぁ………まあ、大丈夫じゃねえの? ちゃんと食い止めて帰ってくるだろうさ。なあ、ボス?」


マイアはアナトの力量を信じていたが、バーチスは浮かない顔で椅子に背もたれをもたらせる。


「………だといいがな。あの任務はミシュエルの『入団試験』でもあるんだ。アイツらがそれに気付けるかどうか………その次元の話になってくる。こういう任務で死ぬ奴らは何人も見てきたからな、もし死んだらそれまでの女だった、という事だろうよ。」


バーチスは薄暗い空を窓越しに見遣りながら2人の行方を見守るのであった。





 その頃、ゴブリン野盗団では。


「クビリャクさん、出陣の準備が整いました。」


「………では、行こうか。」


一際大きな緑肌のゴブリン・クビリャクと伝令役のゴブリンが同時に立ち上がりクビリャクはのしのしと、伝令役は素早く移動して仲間達に出立の報告をするようであった。


そして野盗団は香水の街・『シズニー』へと向かう事になった。


アナトとミシュエルが待ち伏せているとも知らずに、開戦の足音は徐々に近づきつつあった。

次回はミシュエルの逃亡劇を書きます。(任務から逃げているわけではない)

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