流れ星の落ちた所
有る夜、空を見上げる少年は……
ある冬の夜、少年は空を見上げていた。
「……どうしたらいいんだろ……」
ボソッと呟くと、流れ星が流れた。
「流れ星……」
少年はその昔、お爺ちゃんから聞いた話を思い出す。
[流れ星を手にした物は、願い事が1つ叶うらしい……残念ながら、儂は見付ける事が出来なかったがな]
(あの流れ星、きっと何処かに落ちてる筈だ)
少年は暖かい格好をして、外に出て行った。
少年は急いで流れ星を探しに出掛けた。
少年には流れ星を見付けたい理由が有った。生まれた時からずっと一緒に育って来た、幼馴染みの[なっちゃん]が重い病気で、毎日少しずつ弱っていくのである。少年は、それをどうにかしたかった。
少し歩くと、森が有った。少年は、流れ星が森に落ちてるかもしれないと、暗い森に入って行った。
森を歩いている少年、狸が近付いて来る。
「そんなに慌てて、どうしたんだい?」
「流れ星を探しに来たんだ」
「流れ星?…見付けてどうするんだい?」
「見付けて……なっちゃんの病気を治して貰うんだ!」
「そうかい……おいらも手伝うよ。おいらはあっちを探してみるね」
「ありがとう、狸さん」
狸も流れ星探しを手伝う事にした。
少年は森の奥に歩いて行く。
「そんなに慌ててどうしたの?」
小鳥が声を掛けて来た。
「やあ、小鳥さん……流れ星を探してるんだ?」
「どうして探してるんだい?」
「なっちゃんの病気を治したいんだ……流れ星を見付けたら、願い事が叶うんだ」
「僕も手伝うよ……森のみんなにも聞いてみるね!」
「ありがとう、小鳥さん」
小鳥は流れ星を探しながら、他の動物達にも聞いて回った。
少年は更に森の奥に行く。
「どうしたんだい、こんな夜中に?」
「やあ、狐さん……流れ星を探してるんだ」
「流れ星?……どうしてそんな物を?」
「なっちゃんの病気を治したいんだ……流れ星に願いを叶えて貰うんだ」
「そうかい……なら、私も手伝うよ……人間に化けて、町の人にも聞いてみるよ」
「ありがとう、狐さん」
狐は、流れ星の事を人間に化けて町の人に聞いて回った。
少年は更に森の奥に行く。
「何を探してるんだい?」
「やあ、熊さん……流れ星を探してるんだ」
「そんな物を探して、どうするんだい?」
「なっちゃんの病気を治したいんだ……流れ星に願いをしたいんだ」
「そうか……俺も手伝うよ……木の上から、落ちてないか探してみるよ」
「ありがとう、熊さん」
熊は、高い木の上に登った。
少年は、流れ星を一生懸命に探した。手も足も顔も身体も、全身真っ黒になりながら、それでも流れ星を探した。だけど、流れ星は何処にも見付からない。
狸は森の中をあちこち探した。色々な所にぶつかったりしながら、身体は擦り傷だらけになりながら、狸はぼろぼろになりながら一生懸命に流れ星を探した。だけど、流れ星は何処にも見付からない。
小鳥は、一生懸命に飛びながら色々と探した。動物達にも色々話を聞いた。力の限り空から探した。だけど、流れ星は何処にも見付からない。
狐は、人間に化けて町の人達に流れ星の事を聞いた。誰も知らないと言うのだが、狐は一生懸命に聞き回った。いつの間にか狐はしっぽが見えており、そのしっぽがぼろぼろになるまで一生懸命に話を聞いた。だけど、流れ星は何処にも見付からない。
熊は、木の上から辺りを見回した。気になる所があれば、すぐにそっちに行って確認する。見付からなければ、また木に登って辺りを見回す。熊の手足はいつの間にかぼろぼろである。それでも熊は、一生懸命に流れ星を探した。だけど、流れ星は何処にも見付からない。
小鳥に話を聞いた動物達も、流れ星を探してくれた。みんな一生懸命に探してくれた。だけど、流れ星は見付からない。
狐に話を聞いた人間達も流れ星を探したが、流れ星は見付からない。学校の先生も郵便の配達屋さんも病院の医者も、狼も猿も兎も必死に流れ星を探した。だって、町の人達も森の動物達も、素直なこの少年が大好きだから。そんな少年の大切ななっちゃんを、誰もが大切に思っているから。
一生懸命に流れ星を探した少年、いつの間にか日が登っている事に気が付いた。
「みんなありがとう……見付からなかったけど、それはしょうがないよね……」
探してくれたみんなに、少年は頭を下げて帰って行った。
町の人達も、森の動物達も、みんな酷くがっかりしていた。誰もが残念に思い、誰もが悔しく思った。
家に帰った少年、お風呂に入った後になっちゃんの所に行った。
なっちゃんの部屋に入ると、なっちゃんは笑顔で少年を向かえてくれた。
「あのね、なっちゃん……」
「聞いて!…私の病気、良くなるって!」
「本当に?」
「うん!…町に居る有名なお医者さんが、私を治してくれる事になったの!……また、一緒に遊ぼうね!」
なっちゃんの目は、きらきら輝いていた。
「なっちゃん、目がきらきらしてる!…流れ星、こんな所に有ったんだね!……良かったね、なっちゃん!」
なっちゃんの病気は、きっと良くなるだろう。そして、少年ときっと、楽しく遊ぶのだろう。
だって……なっちゃんの目には流れ星が有って、少年はその流れ星を見付けたんだから。
幸せな未来が、2人に待っています様に……