死神
「私は、片手剣の怪物みたいに強くなって、死神を倒す」
また急に変なことを言い出したぞこいつは。
しかも死神って。無茶なことを言うな。
「今無理だろって思っただろ?」
心を見透かされている気分だ。
「まあなぁ~」
「……だよね」
悲しそうに俯くオーラ。胸を押さえ、必死に涙を堪えているようにも見える。
こいつは、自分の弱さをしっかり理解しているな。
「でもな、感心してる」
「感心?」
「うん。あの化け物に立ち向かおうとしているから」
「そ、そうか」
オーラは嬉しそうに髪を触る。
でも、それとは裏腹に気に入らないことがあった。
オーラも俺の違和感に気づいたようだ。
「どうした?」
俺の顔を覗き込むようにして訊いて来る。
「オーラは、神の命令に従う派か」
「そんなの当たり前だ」
それを当たり前だと思ってしまっているのが、一番腹立たしい。
そんなの当たり前でも何でもないはずなのに。いつの間にか当たり前になっていた。
「じゃあ、ゴウは違うのか?」
その問いの答えに迷うはずがなかった。
「違う」
たった一言のはずなのに、オーラは驚愕している。
オーラからしたら俺があり得ないだろう。
「神の命令に従わないなんておかしい!」
「従う方がおかしい」
「神の命令に背いたら、神に殺される!」
「じゃあこの国の民は、全員神の命令に従って、死神を倒そうとしてるのか?」
「死神を殺す度胸もない民は、全員怯えながら神のために働いている! だから殺されないんだ! でも、ゴウは命令に背いたうえに、働いてもない。いつか殺される!」
「でも現にこうやって生きてる。心配はない」
互いの意見が飛び交い、猛烈な口論が繰り広げられる。
オーラの言っていることもあながち間違えではない。
でも、俺が言っていることも間違えではない。
これは正義と正義のぶつかり合い。この場に悪は存在しない。
「死神を倒すつもりがないのなら、ゴウは怯えながら働くしかない!」
「じゃあ働く。神の命令には従いたくないから働く!」
まるで今の俺は、おもちゃを買ってもらえない幼児ではないか。
「けど、働くことも神に手を貸していることと一緒だ」
「あぁー! じゃあどうすればぁぁぁ!」
俺は頭を抱えて、歯を食いしばる。
「こんだけ強いんだから、ゴウも私と一緒に死神を倒せばいいのに」
ごもっともな意見。
でも、そうしたら神の命令に従うことになるんだよなぁ。
あーどうすれば——あ、そうだ。
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