剣を探そう
走りながら訊く。
「剣ってどこにあんの?」
「多分ボスの部屋」
「さっきのデブがボスじゃないんだな」
「うん。流石にボスにしては弱すぎだと思う」
「確かに。それじゃ」
俺はオーラをお姫様抱っこする。
「何だいきなり! 辞めろ! 下ろせ下ろせ!」
幼児のように暴れるオーラ。
「あぁー! 暴れるな! 俺が能力使った方が早いんだよ!」
「能力ってさっきの《超速移動》?」
「そうだ。ぶっ飛ばすぜ!」
俺は猛スピードでボスの部屋に向かう。
お姫様抱っこをされているオーラは、「うわぁぁぁぁ」と叫び、何とか速すぎるスピードに耐えていた。
やがてあっという間にボス部屋に辿り着く。
「よーし。ここに剣があるんだな?」
「…………」
「あれ?」
オーラを見てみると、顔色を真っ青にして、胃から込み上げてくるものを必死に堪えているようだった。
「たったあれくらいのスピードで酔ったの?」
「た、たったあれくらいなんかじゃない。速すぎだ。ゲフッ」
「気持ち悪いなら、ここで待っててもいいぞ? 俺が取り返してきてやるからぁ~」
「いい。私も行く」
込み上げてくるものを必死に我慢し、立ち上がるオーラ。その際にも「おぇ。うおぇ」という声を口から漏らしていたので心配にはなったが。
「それじゃやりますか」
「うん」
俺は拳を握り、思い切り引く。
勢いをつけて攻撃力を高めるためだ。
「ふぅ」
徐々に俺の拳が赤色のオーラを纏い始める。
「これって、《攻撃アップ》能力か」
「そうだよぉ」
この能力を使えば攻撃力が一.五倍に上がる。
「よし。それじゃまずはこの扉ちゃんをぶっ壊しましょうか!」
攻撃力が上がった拳を、扉にぶつけた。
バンッ——。
一瞬にして扉が粉砕する。
「凄い破壊力だ」
「まあ、能力使わなくても扉くらいは壊せるんだけどね。あはは」
「だ、だろうな」
オーラが「ははっ」と笑う。
扉の向こう側には、大柄の男が座って、呑気に葉巻を吸っていた。
「今回はデブじゃなくて、ムキムキマンかぁ」
「てめえらどうやって牢屋から出た?」
大柄の男は葉巻を手で握りつぶし、こちらに歩み寄って来る。
「デブが開けてくれたぁ」
「フンッ。そうか」
大柄の男は、胸ポケットから拳銃を取り出した。
そしてそのまま、
「死ね」
俺に向けて引き金を引いた。
だが、こんなものが俺に当たるわけがない。
瞬時に避けて見せ、大柄の男の胸倉を掴む。
「やっほー! ムッキちゃんって銃使えねえの?」
「何だその速さ」
大柄の男は冷や汗を流し、俺の手から逃れようとするが、それが出来ないでいる。
「な、何て力だこいつ」
「はいはいはーい。それじゃムッキちゃんに質問です」
「あぁ?」
この状況でも睨みつけてくるこいつの度胸は認めてやるか。
「あの子の剣をどこに隠した?」
後ろのオーラを指さし訊いてみるが、一向に口を開けない。
ただ睨みつけて来るだけだ。
「早く言えよぉ」
「て、てめえには教えねえよ」
何子どもみたいなこと言っているんだこいつは。
全く俺以上に馬鹿だったか。
「じゃあ言わないと、どんどん顔がぐちゃぐちゃになっていくけど、いいのぉ?」
「へっ。上等じゃねえか」
「そっかぁ」
俺は、迷うことなく男の顔面に攻撃を叩き込む。
一発、二発、三発と攻撃は止まらない。
後ろのオーラは「ひぃ」と恐ろしい物を見るような声を漏らしている。
「おらおらぁ! ってあれ?」
いつの間にか気を失っている男。
これじゃ剣の居場所を訊けないではないか。
「ねえオーラ」
「な、何だ」
「こいつが気を失ったせいで、剣の場所訊けないんだけどどうする?」
「ゴウが殴りすぎたせいでしょ」
「何か言ったか?」
「い、言っていない! 自分で探すからいい」
終始俺と目を合わせなかったオーラは、自分の剣を探すために部屋中を模索している。
俺も男から手を放し、剣を探そうとするが、
「まだ片付けが残ってるな。ははっ」
俺の言葉が聞こえたのか、一人の小柄な男が机の下から姿を現した。
「ずっと机の下にいたのかよぉ」
「そ、そうだが」
「ビビりすぎじゃね?」
「う、うるせえ! てめえはゆる——ガッ」
最後まで聞くのもめんどくさかったので、言葉を言い終える前に、小柄の男の頬にパンチを喰らわせてやった。
一発でその場に倒れる。
「はぁ。全員弱いなぁ」
そんな愚痴をこぼし、オーラの剣を探す。
「ゴウが強すぎるだけ」
オーラの小さな呟きは、ちゃんと俺の耳に届いていた。
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