強さ
突然耳に響いた声。
俺とオーラはピタリと固まる。
ゆっくりと牢屋の外に視線を向けると、そこには大柄の男が突っ立っていた。
「商品が喋ってんじゃねえ!」
俺は再びオーラに視線を戻し、
「誰このデブ?」
「ひぃ⁉ そ、そんなこと言うなバカ!」
デブという単語はどうやらNGだったらしい。
「てめえ。誰に向かって——」
大柄の男は牢屋のカギを開け、中に入って来る。
見る感じかなりお怒りのようだ。
「ねえねえ。何かあのデブ怒ってるけどさ、ラッキーじゃない?」
「だからデブって言うなバカ! で、何がラッキーなんだ?」
「何がって、牢屋開けてくれたじゃん!」
「はぁ? 何を言ってるのだゴウは。牢屋が開いてもあの男がいるし、何しろこの鎖が邪魔だし」
オーラは慌てふためくように早口で言う。
でも俺には、今言ったことの意味がよく分からなかった。
「何こそこそ話してやがる」
大柄の男が俺の下までやって来た。
「はいはい。いったんデブは黙っててくんね? でさでさ、この男がいるのと、鎖が邪魔ってどういうこと?」
「何だとてめえ!」
デブはいったん無視して、さっきの話の続きだ。
「だ、だからゴウは何言っているの? この男がいたら逃げられないし、何しろこの鎖に縛られている限り自由には動けないだろ」
「え? じゃあさ」
バキッ——。
「えぇ?」
オーラはただ目を見開いて、唖然としているだけ。
大柄の男も全く同じだ。
「鎖壊しちゃえば良くね?」
「うそぉ」
すぐに消え去りそうな声がオーラの口から漏れ出る。
「何だてめえは。どうやって鎖を壊した!」
大柄の男は警戒したのか、数歩後ずさる。
右手にはナイフを持ち、それを俺に突きつけている。これ以上近づくなと言わんばかりに。
「それで、このデブがいたら逃げられないっていうのは——」
俺は一瞬にして男の目の前まで移動し、腹に一発パンチをぶち込んだ。
「ガハッ」
男はたった一発のパンチで気絶し、その場に泡を吹いて倒れる。
「このデブを倒せば解決ってわけ!」
グッドポーズをオーラに見せつける。
「何その強さ……」
「そんなに驚くことか?」
「驚くに決まっている。それにあの速さ《超速移動》の持ち主なのか?」
「まあねぇ」
一通り片付いたことで、オーラの鎖も壊してあげた。
「あ、ありがとう。一週間ぶりの自由だ」
「いいえ~。それじゃ、脱出しますか!」
俺が突っ走って牢屋から出ようとした時、突然後ろから「待って」と呼び止められた。
「どうした?」
「私の剣を取り返さないと」
「剣って、オーラ剣士だったの⁉」
「そうだけど」
「剣士がそこら辺の人さらいに捕まっちゃったわけ?」
馬鹿にしたように言うと、オーラは顔を真っ赤にさせて言い返してくる。
「剣士だからといって、強いとは限らない! 弱い剣士だっているんだ! 私とか……」
今度は怒りを含んだ表情ではなく、悲しさを含んだ顔を向けてきた。
触れたらいけない部分に触れちゃった気がする。
「あーごめん。ちょっと言い過ぎたかも」
「別にいい。私が弱いのが悪いから」
そんなことを言われたら何も言えねえって。
はぁ。仕方ないな。
「剣取り返してやるから元気出してくれよぉ」
「う、うん」
横目でオーラの潤んだ瞳を見た後、俺たちは牢屋から出て、剣がある場所に向かった。
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